自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

お仕事中

 30年以上も自閉症児に付き合って、困った行動対策もずいぶんやりました。

 そのなかで派手な行動ではないがお母さん方が”悩みの種”と、多く相談してきたのが、子どもの同じ言葉の繰り返し。

 

CMのセリフだったり、ワンパターンの自閉語だったり。

 

 始めは子どもの期待する言葉を返してやるが,同じことを何度も言ってくるので、最後はいらいらして、「しつこい」とか「うるさい」とかつい言ってしまう。

 お母さんも、悪いこと言ったと、落ち込んでしまう。

ノイローゼになりそう、というお母さんさえいました。

 

自閉っ子はテレビのコマーシャルなどはよく覚えます。

 テレビのCMはよく覚えるのに覚えさせようとする言葉はちっとも覚えてくれない。

あるお母さんは自分がテレビから顔を出して話しかけたいくらいだ、と笑うに笑えないことを真剣に言っていました。

 

 確かにCMは決まった映像と決まったセリフ、視覚と聴覚に同じパターンで繰り返しでるので自閉症には覚えやすいのかもしれません。

 でも日常場面ではそうもいきません。刻々と変化しますから。

 

 なにしろ、彼らはボキャブラリーが少ない、聞いて、オウム返しして覚える。自分で考えて言葉を作り出すのがむずかしい。

 

 療育の学習指導中もありましたねぇ。

教室で私が連絡帳を読んだリ、その返事を書いたりしていと、席を立って私の側に来て、「お仕事中」という自閉症男子がいました。

 

きっと学校でも先生に言われているんだろうな、と思いました。

 

彼はきっと話しかけたくて仕方がなかったんだろう。「先生、何書いてるの?」とか「誰の連絡帳書いてるの?」とか。 

 

でも、話しかけたくても他のセリフが思い付かなかった。

 

「同じこと何回も言わないで!」とか「あっち行って!」とかわ言わずに、彼らの話かけたい気持ちを大事にしたい。

 

 返事がなくとも、【ワンパターン話しかけ】と世間話をしたいものです。

 

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