自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

昇格

 いよいよ新年度のスタートですね。まだ令和ではありませんが。

 

 卒園式そして入学式をこなすということは、自閉症児とって、特に重度の子にとって、うれしいどころか試練の二文字につきますね。

 イレギュラー続きの日課、先を見通せない毎日を不安を抱えてがんばって・・・辛いだけ。

 

 消えたと思っていたこだわりが復活したり、ずっと小さい頃の持ち物に執着したり。睡眠のリズムも崩れたり、おもらしや頻尿になったりしたかも。

 

 子供以上に親も不安です。

 

こばとの療育をやっていた時はいつもお母さんに言っていたものです。

「小学校に上がった方が子どもは安定しますよ。時間割があるから。」

  

 自閉症の子どもの中には卒園・入学というこの環境の変化を拒否したい、と抵抗を試みる子もいますね。

 

年中の時から療育に通って来ていた発語のない重度の自閉症の男の子。

まじめな性格で年長さんの時は言葉もわずかながら出るようになり、学習にも取り組み良好。

 

 小学校入学を期待した両親は早々とランドセルを買い与えました。

しかし、入学1か月前になっても頑としてランドセルを背負おうとしない。「どうしたらいいんでしょう。」と困り切ってお母さんが相談してきました。

 

「練習しますから療育に来る時、持ってきてください。」と私。

次の療育の時、早速、お母さんはランドセルを隠し持ってきました。

 

 私はお母さんにお迎えの時は、出口から50mぐらい離れた所で待っているように念を押して、2時間の療育コースを終了。

 

子どもにはランドセルを背負わせて帰しました。お母さんはびっくりした表情で息子が近づいて来るのを見つめていました。私は得意顔で手を振りました。

 

先生の指示は聞く、というパターンが功を奏しました。

 

現在の彼は、パラリンピックトライアスロンを目指す偉丈夫な支援学校の高校生です。

 

 

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