自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

何もしない時間

 【感覚遊び】以外にのんびり、リラックスできる時間を過ごせるようになればどんなに楽だろう、本人も周りの人間にとっても。

 

<のんびり>これがむずかしいんですよねぇ。

 

 パターンが変わるとパニックを起こす。

 脅迫神経症のように儀式行動をしないと気が済まない。

 先が見通せないと不安定になる。こだわりやしつこさが復活する。

 スケジュール通りサクサク進行が必須、イレギュラーは禁。

 

 周りの者もパニックされるのが嫌でパターンを変えない。

 きっちり予定を入れて、視覚化し本人に納得させる。

 構造化した生活の中ですごさせる方が安心だ。

 

 しかしこれでは平和かもしれないが、<自閉症>という枠をはめて症状を強化しているようなものだ、と思ってしまう。

 

 何もしないでのんびりする方が楽!と思いがちだが、パターンにはまらない<のんびり>を楽しむのは自閉症の彼らのとっての決められた作業をするより苦痛だ。

 

 療育を始めた頃、のんびりする事も大事だよ、と教えたくて試したことがありました。10数人の自閉症の中学生をでつれて海の近くにある国民宿舎で夏合宿をした時のことです。

 

 合宿のプログラムにあえて何もしないで、”部屋でのんびりする、海を眺めたり、自分の好きなことをする”、という時間を設定しました。

 

 案の定、自分のすきなことをして良い、のんびり海を眺めても良い、特にすることがない、ということに不安を感じた男子がいました。

 不安になった彼は部屋を行ったり来たりした挙句、部屋の中に備え付けてあった飲み物用の小さな冷蔵庫を持ち上げて、筋トレを始めたのです。

 

 その後の小学生・中学生の夏合宿から、自由時間を感覚遊びではない、自分のすきな事をして過ごせるよう趣味の物をリュックに入れて持ってこさせるようにしました。

好きな本(料理本オレンジページを持ってきた子もいました。) 、トランプ、電車の本、時刻表を書き込んだノート・・・・etc.

 

 夏合宿は人との関わり合い・自由時間の過ごし方を教えるチャンスでもありました。

 

 

自閉症の世界