自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

言霊

 自閉症は表情の意味するところが理解できない、誤解、誤認する。

なので平気で相手の嫌がることをやったり、傷つけることを言ったりする。

嫌がる様子を面白がってやることさえあります。

 

 しかし、彼らは自分が傷つくことには敏感です。

言葉を十分に理解していないのに、悪口を言われたりすると反応にでます。

 

 あるお母さんが言っていました。

 彼女の親しい友達と電話している時に、気安さから日頃手のかかる息子の悪口を言って鬱憤を晴らしていた。隣の部屋から泣き声がするので覗いたら息子が泣いていて、見抜かれたようでバツが悪かったとか。

 

 保育園児のお母さんは息子の言葉の繰り返しに悩まされていました。

それは意味も分かっていないであろう「ばぁ~か」という単語でした。

 たぶん・・・保育園で言われたか聞いたか、した言葉あろうけど、家の中でも家族にむかって頻繁に使うので困る。

 しかもその言い方、イントネーション、タイミングが実にはまっていて、家族といえども心穏やかでいられない。

 何度もその言葉を言ってはいけないと言ったが、逆に強化したようだという。

 

 「それなら、その言葉に反応せず、聞かなかったことにして他のことに気をそらせて、その単語を忘れさせるようにしたらどうですか?」と私は言いました。

「ばぁ~か」の言葉の意味は分からなくとも、雰囲気はしっかり掴んでいるのです。

 

 こんな自閉症児もいました。

 自閉症状は重め、言葉は無く、多動ぎみ、あの悲しいたずらもよくするタイプ。

その支援学級2年生の男子が療育指導中の教室でいたずらする時、「ばちがい、ばちがい」と言うのです。

 

 言葉はほとんどない男子だったので、はじめは何を言ってるのかわかりませんでした。少しして、その教室で指導していたスタッフ3名が顔を見合わせて言いました。

 

「学校で言われているんじゃないの。」

 

 支援学級では一番重い方だったので、支援学級にいることが場違いなのか、いたずらが場違いなのか、たぶん級友は言わないだろうから,先生から言われたのかも。

 

 その男子は言葉の意味はわからなくても、仲間外れにされていうニュアンスは感じとれているようでした。

 

 言葉って、正確な意味以前に言葉の中に言霊のようなものがありますよね。自閉症の子ども達は、言葉の意味は分からなくとも言霊を感じ取れているのは確か。

 

 

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