自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

身の危険

 前回は自閉症は自分にメリットがある時は空気を読むし、意識も高い、などとちょっと意地悪な見方を書いてしまいました。

 

 いつもいつもそうではない、ということを彼らの名誉のために弁護しておかなければ ・・・。

 

 メリットがなくとも意識が高くなり、真剣・本気度が上がり、周りの空気もしっかり読むふ・つ・うの彼らもいるのです。

 

 13名のスタッフで、小学4年から6年の重度から軽度の自閉症状の男女児童30数名を2泊3日の夏季合宿に連れて行った時のことです。

 

 合宿の準備は半年以上も前に計画し、下見をして安全を確認、1か月前には活動のスケジュールを書いた<合宿のしおり>を参加児童に配布。

活動毎の必要物資も準備、配送業者に手配。

前日はスタッフ全員で細部の打ち合わせ。

 

 療育の総決算のつもりで、私とスタッフは気合を入れ、子ども達と保護者は期待を込めて合宿出発当日を迎えます。

 

 あの年は出発前日から台風接近が報道されていました。

集合場所の駅に大きなリュックを背負った子ども達と見送りの家族が大集合。

並んで出発の挨拶をした時は、目指す目的地あたりが台風の直撃を受ける恐れがありそうな気象予報になっていました。

 

しかし、我々一行は予約の特急電車に乗り、目的の駅で電車を降りて、マザー牧場行の貸切バスに乗り換えました。

 バスはくねくねとした山道をのぼり、山頂にあるマザー牧場に到着した時は、霧で視界は真っ白。雨も横殴りに降っていました。

 

 私はバスの中で、「災害時の避難訓練だと思って気合を入れて!」とスタッフに檄を飛ばし、子ども達には持参の雨合羽を着るように言いまいた。

 そして、歩くときは決して列から離れないように、前の人の後ろに続いて歩くように念をおしました。たぶん、必死の顔だったかも。

 

 牧場スタッフが待っていた受付ゲート通り、そこで傘も借りて、スケジュール通りの活動に移りました。

雨と霧で視界の1メートル先は真っ白。

 しかし、かっぱとかさの集団は一丸となって、一糸乱れぬ列となって山道を移動しました。騒いだり、泣いたりする子はなし。

 

 山頂のレストランで予約していたカレーを食べ、施設内でスタッフ誘導のもとトイレも完了。

 次はお目当てのアグロドームに移動。悪天候でお客はぱらぱら。我々合宿集団は中央席に陣取り、最後の羊の毛刈りまで間近で見物。お客が少なかったので,羊の刈り上げた毛までプレゼントされました。

 

 ドームを出た後は数名ずつまとまって屋外トイレ。

その後トロッコ列車で山頂を一周し、牧場の入り口近くに戻り、カフェで予約の名物ブルーベリーのアイスを食べました。

 

 この30数人の小学生の一団は障がい児の集団で、その中には重度の自閉症児が何人もいたなんて誰が気付いただろう。(お客は少なかったが・・・)

 

 帰る頃には台風も通り過ぎたようで、雨も小降りになり、傘も返しました。

 

 子ども達は笑顔で、スタッフはほっとして貸し切りバスに乗り込み、宿泊所の少年自然の家に向かいました。

 

子ども達はみんな本気、真剣、気合の空気を読んでいた。普通に出来た。

 

 いい災害時訓練になった。

 これは私が個人的に運営していた療育施設だからできたこと。公的施設だったらきっとストップがかかったろうな。

 

 

自閉症の世界