自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

目的まで一直線

 大昔の人類には備わっていたであろう、

  通った、通るべき道の記憶、

  上空から見たわけでもないのに的確な空間認識を

自閉症の子ども達は脈々と受け継いでいるように思いますね。

 

 物質や技術に頼りすぎている現代人より、研ぎ澄まされた感覚を温存している感じ。

 

道の話はありすぎて・・・。

 

 小学2年の軽度ではあるが、グレーではない自閉症男子。

数字系に強く普通級に在籍していました。

遠方でしたが、こばとの療育にはお父さんが車で送迎。

帰りはこばとの教室から少し離れたところに車を止めて、お父さんが待っている、というパターンで進めてきていました。

 

 その日もいつも通り2時間の療育を終えて、約束の時間通りにスタッフは彼を送りだしました。

まだ携帯で連絡を取り合っていなかった時代です。

 お父さんはいつも教室の入り口からは見えない角に車を止めている。

その日も来ていると思って帰したのです。

しばらくしてお父さんが「息子がまだ来ないが・・・」と言ってきました。

スタッフ「えっ、もう出しましたよ。」

お父さん「ちょっと着くのが遅れたんです。」

それからお父さんは車で探してみると車に戻りました。

 

 私も他の子ども達の手前、表面上は冷静にしていましたが、人心地ゼロ。

療育は終わり、日も暮れ、子ども達と若いスタッフは帰りました。

 

 電話の傍を離れずお父さんと連絡を取り合いましたが、男子は見つからず、ついに県警に捜索を依頼しました。

 私服警官が数人来て事情を聴いて行きました。

お父さんは取りあえず家に向かいました。

 

家までは15km程。車以外で療育に来たことはない。

 

夜、9時過ぎ頃お父さんが家に着くと息子は帰っていた!!!。

「ただいまぁ~」と何事もなかったように帰って来たそうだ。

アイスクリームを食べていた。

 

 3時過ぎにこばとの教室を出た彼は、車もお父さんもいなかったので、待つこともせず、困ったとも思わず、車で来た道をそのまま辿って、家路に向かったのだろう。

 

お父さんがいなくて、どうしよう、と思わなかったところが自閉症らしいけど。

 

それにしても疲れた様子も見えなかったとは。

太古、人類はそのように大陸を移動していたんだろうなぁ。

 

自閉症の世界