自閉症児は幼少期、不器用だとか動作がぎこちないだとか言われがちです。
確かに、園の発表会や運動会のお遊戯をみると肯定せざるを得ないかも。
模倣する気もなくただ突っ立っているだけ、その場にいるだけでも〇。
模倣しても、数テンポ遅れてあいまいな動き、やる気のなさそうな動き。
でも、これが彼らのすべて動きの本質、と思われるのはちょっと心外です。
模倣できない、とか模倣する意思がないとか言われますが、彼らにとっては模倣するメリット、機敏にするメリットはない時はだらけた動きになりやすい。
自分の要求やメリットとずれたことを指示されても、やる気は出ないのは彼らの正直な気持ちの表れ、と言えなくありません。
しかし、自分のやりたいことをやる時はぎこちなさなど微塵も感じさせないバランスのとれた動き、素早い動作をみせてくれます。
自分でやりたい動作
新体操のようにひもをくるくるまわす。
目を回すことなく、くるくる自転する。物を回すのもうまい。
体勢を崩さすピョンピョンいくらでも跳ぶ。
体をくねらせても、エビぞりしても倒れない。
中には、自分の指先に垂らした唾を、カメレオンの舌なみに、目的物に向かって吹き飛ばす重度自閉症児もいて・・・。
驚嘆した思い出があります。
幼児のみの夏合宿をやった時のことです。
合宿の目的は集団の動きについてくる、そして待つ練習です。
参加幼児のひとり、自閉症重めの4歳男子。
小太りながら動きは俊敏。多動。発語はないけど、こけし人形のような丸顔でカワイイ憎めない子。
昼間の活動はまずまず参加でき、初めての宿舎のお風呂にも入ることができた。
食事は偏食、太っている割には食べなかった。
問題は就寝。
夜になっても家に帰れない、と分かった時から泣きだし、つきっきりであやしても泣き止まない。
おんぶするには重すぎる。
他の子も心細い思いでいるので、彼の泣きに感応してはまずい。
私はベット部屋から彼を連れ出し、階下のロビーに連れて行きました。
ソファで落ち着かせようとしましたが、泣き止む気配がみられない。
ロビーには自販機があり、彼の好きなオロナミンCも売っていました。
私はオロナミンCを買い、キャップを開けて彼に持たせました。
彼は遠慮なく受け取りましたが、手に持っているだけで飲もうとしません。
しかも、彼はオロナミンCを持ったままソファに寝転びました。
まずいな、
しかし、ソファは合成皮だし零したら拭けばよいと、そのままにさせていました。
彼はオロナミンCを手に持ったまま、寝ころんだり寝返りしたりしながら泣きぐずり、続けていました。
私は驚嘆しました。
寝転んでいるのにオロナミンCを1滴もこぼさないのです。
日付が変わろうとする頃、さすがに彼も観念してベット部屋に戻り、オロナミンCも飲んで、たちまち寝落ちしました。
天才ウェイターなんじゃないか!!
その時の彼の姿が驚嘆の思いと一緒にいまだ脳裏に焼き付いています。
(自分で言うのもなんですが、映像記憶はいい方なんです。)