自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

今の世界に生きるためには

 自閉症児を産み育てたお母さんの中からこんな言葉を聞いた。

 

 望んで授かった子供なのに、出産が始まる前、と何故かとても悲しくて、涙が止まらなくなり、苦労する予感に襲われた。

 ドイツで2人目を正常に出産したのだが、長男の時となんか違う感じがした。はっきりと言葉で表現できないのだけと。

次男は重度の自閉症だった。

 

そんな話を聞くと、自閉症児者この世に生まれる時、何か抵抗サインを出すのかな。

 

 だって、本心は羊水の中に留まっていたいのに。

 自閉症は生まれる時から現代社会、文明生活との悪戦苦闘が始まると予感しているのかもしれない。

 

人間は生理的早産をする生き物と言われているので、赤ん坊は歩きだす頃までは症状があまり目立たない。

中には抱っこの時、体を反らしたり、アイコンタクトがない、泣き止まない、睡眠のリズムがつかないなど、あれッと思うことがあっても気に留めるほどでない。

 

 現代文明拒否がはっきりしてくるのは、自我が出てくる2歳前後の頃。

 

 靴下をはかない、帽子をかぶらない。服をぬいでしまう。新しい服、靴に代えられない。名札を付けられない。手さげを持ち続けられない。

爪を切らせない、シャンプーを嫌がる、塗り薬をつけられない、絆創膏を貼るをすぐ剥がす。歯を磨かせない。耳掃除は無理。髪を切るのは寝ている時。

スプーンを使えない。偏食。食べ物をいちいち臭いをかいでから食べる。

トイレで排泄する習慣がつかない。椅子に座っていられない。

高い所に登る、または狭い所に潜る。同じ道を通りたがる。

出ていた言葉が消える、出来ていた指差しが消える子もいる。

模倣をしない。手つなぎを嫌がる。親の後追いをしない。勝手にいなくなる。言葉を話さない。集団を嫌がる。・・・etc.

 

上記内容は文明社会で生きていくために最低必要なこと。

 

何より困るのは医療処置です。

 

内科に連れて行くだけでもかなりの覚悟。

歯医者はずるずると後回ししたくなるほどハードルが高い。

耳鼻科など行かずにすむものなら一生縁がなければよい。

やむを得ない予防注射もこなすだけで親は一日分のエネルギーを消費してしまう。

(外科に連れて行きたくとも、親では無理というので代わりに付き添ったことがあります。)

 

しかし これらの医療処置は避けて通れません。(必要な点滴を引っこ抜いて、治療が出来なかった話も聞きました。)

先延ばしにするほど困難になるので、早いうちから、痛くなる前からそれらの医療機関に足を運ぶように、とお母さん方に口を酸っぱくして言いました。

小さいうちなら騒いでもまだ、制御できる。

 

文明慣らしを一つ一つ実践したお母さんがいます。

 

そのおかげで、重度自閉症が大手術を無事に乗り越えれたのです。

 

 私が喋らないでも良い仕事だからモデルにすればと言っていた重度自閉症の美少女。中学生になるとぐんぐん背が伸び、側彎症になってしまった。

 

 特注コルセットをきちんと2年間装着していたにもかかわらず、コルセットの下で脊柱は曲がり続け、このままでは将来内臓に影響するということで手術が決定。

 

 大手術になることは想像に難くありませんでした。

術前の検査。2回にわたって400ccずつの蓄血保存。

 

万全の健康状態にして入院一週間目に手術、

1か月の入院生活。お母さんは8泊9日付添。入院生活対策は万全。

 

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レントゲン

  彼女は点滴も酸素マスクも尿バルーンカテーテルも受け入れ、なんと2日目にはおにぎりを食べた。

そして、大がしたくてリハビリの先生の付添で立ち上がり、トイレに行った。

 

3日目から歩行。なんとすごいこと。

若いから治りが早いとはいえ、医療行為すべてを耐えて受け入れた彼女の精神力。

 

病院では医師や看護師に模範患者と褒められ可愛がられているそうだ。

退院は間もなくだ。

 

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切ったのは背中