自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

幼児教室

 昔、と言っても平成が始まったばかりの頃

自閉症スペクトラム>とか<発達障がい>とかのネーミングもなく,

自閉症という言葉さえ一般的に正しく理解されていたとは言い難かった。

 

  ある大手の新聞が、大人になってから人と関わらなくなって、家に閉じこもる

ようになった人のことを「自閉症になった」という記事にして書いていたので、

自閉症を誤解している、とクレームを書いて送ったことがあった。

 

 あれは今でいう引きこもりだったのだろう。

引きこもりもその当時から増えつつあったのかもしれない。

そんな時代だった。

 

 

その頃は障がい児教育と言っても、

精神発達遅滞児に対する、身辺自立、生活単元的アプローチが主流だった。

自閉症の特性合う療育は試行錯誤中で、いろんな療法があった。

 

公的機関に相談しても、もうしばらく様子をみましょう、とか

自閉傾向があります。」などと言われることが多く、

「だからどうすればいいんだ?」ということに対しては

明快な回答がないことが多かった。

 

 中には言葉が出ないことを相談に行ったのに、

担当医師からは「言葉が出ていませんね」と言われ、

「そんなこと言われなくともわかってる!!だからどうすればいいのか、

を聞きに行ったのにそれに対しては何もなかった。」と

憤慨やるかたない!!怒りを私にぶつけるお母さんがいた。

 

自閉傾向のある子ども達は手をこまねいて様子を見ているうちに、

自分ペースが増強されたり、

対人関係を誤学習したり、

叱責や否定的な言葉によって二次障がいを起こしかねない。

 

人に対する信頼の気持ちを持てなくなったり、

自分は必要とされていないのか、と自尊感情を失いかねない。

 

私はそうなる前に、真っ新なうちに療育をスタートしたいと思った。

 

これまでのブログ記事で2,3歳から幼児教室で療育をスタートした、とか

幼児教室で療育を開始した時はどうだったとか、書いてきたが、

幼児教室でどんな療育をやっていたか、もう少し分かってもらえる記事を

書いてみようかな、と思いついた。

 

幼児教室は4人が定員。母子分離

3人のスタッフが担当(私を含む)

1対1の個別指導にしなかった。

訳は集団を意識させたかったから。

自分だけやらされているのではなく、皆もやってる。

真似したい気持ちを起こさせるためでもあった。

 

スタッフは幼児教室では叱らない、困った行動は無言で気を逸らさせる。

常に笑顔、大声で指示しない。

強い力で子どもを制止したり、体を掴まない。

手つなぎする時は手首を掴まない、必ず手のひらと手のひらを合わせる。

 

2時間の療育プログラムは

入室後、紙おむつを布パンツに履き替えさせて、トイレトレーニングから始める。

 

第1セッション 制作

幼児机を一か所にまとめ4人の子どもを向かい合って座らせる。

その周りを3人のスタッフが取り囲み、背後から介助しながら制作活動をする。

 クレヨンも えんぴつも はさみも のりも何もかも「持っていられるか」が課題。

制作はあらかじめ下準備しておいたもの。すべて介助しながらやる。

席立ちしそうな時はさりげなく席に戻す。

拘束している印象を子どもに与えないようにする。

出来上がりの作品を派手に子どもの目も前にちらつかせて、作った物を意識させる。

約25分

 

第2セッション 体育

机を片づけて教室を広くする。

マット、跳び箱、室内鉄棒など運動用具を子どもの前に運び出す。

二人のスタッフが運動の動き、目的的な体の動かし方を介助で教える。

一人のスタッフは座って順番を待つ子どもの背後で席立ちしないように見ている。

待つ練習でもある。

約30分。

 

トイレトレーニング。

 

第3セッション 給食

次はまた机を並べ4人向かい合っての給食。

給食はすべて私の手作り。事務室の給湯室で作っておく。

食べれるものが少ないことも多いが、食事の間一緒に座っていることも目的の一つ。

手づかみではなくスプーンまたはフォークを使う練習。介助。

約20分。

 

トイレトレーニン

帰りのために、布パンツから紙おむつに取り替える。

 

第4セッション 集会

4人の子どもを横に並べた椅子に座らせる。

子どもの背後を二人のスタッフが席立ちしないようさりげなく抑えながら見守る。

一人のスタッフが子どもの目の前で、

手遊び、紙芝居、楽器などさまざまなことをやり、子ども達の注目をひく。

注目・注視の練習。

さよならの歌とあいさつ。

約20分

 

迎えに来たお母さんに引き渡す。

感激の対面になるよう子どもに介助で演技させる。親を意識させるために。

 

そこで立ち話で子どもの様子を簡単に報告する。

 

幼児教室の療育期間は決まっていない。

子ども状態が良くなれば3,4歳でも幼児学習教室に移行させ学習にはいる。

幼児教室は空席が出ると順番待ちをしてた子が入ってくる。

 

幼児学習教室の子どもは夏合宿にも連れて行く。

大きい集団で「失われたローレンツの刷り込み」を回復するためである。

リーダーについて歩かなければ生命の危険がある、という自然界の法則。

 

幼児20人前後の夏合宿はふたりに一人のスタッフが付き添い、手つなぎで移動。

公共の交通機関電車と駅から宿泊所までは貸し切りバスを利用。

わざと待たせることもある。

集団から離れないで待てるようにする。待つことも合宿の目的。

 

1日目のアスレチックへの移動は手つなぎで。

2日目の探検と称する散歩は、

手をつながなくても集団についてこれるようにする。

できたらローレンツの刷り込み、回復だ。

 

夏合宿の目的は、お風呂、食事、睡眠の状態を観察して、

合宿の記録を書き、2,3日以内に親に郵送。

次の努力目標にしてもらうためだ。

 

帰りはまた、バス・電車に乗り解散駅に向かう。

駅には迎えに来た親・家族(子供の人数の2,3、倍)がいるが、

並んで、「ただいま」の挨拶をさせてから解散する。

 

合宿後の変化を連絡帳にいろいろ書いてくるのを読むのが楽しみだった。

愛着行動がふえた、お風呂場での様子が変わった、etc.・・・

 

合宿をやって良かった、やっぱり合宿は必要だね、大変だけど。

スタッフ同士再確認。

 

早期療育は人間を信頼させ、

人間について行こうという気持ちを育むためにも必要だ。

自閉症状の改善の前に、信頼回復、愛着回復があると思う。

 

 

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幼児が作ったペロペロキャンディー