前記事の支援高等学園の高校生は3人兄弟。
次男は健常児だが、
末っ子はADHDの症状にあてはまるタイプ。
長男の報告にご両親が同行したのは末っ子の相談もしたかったようだ。
末っ子にとってもこばとはなじみのなつかしい場所。
彼は保育園の年少児の時、言葉はまだ出ておらず、
集団には入れない、指示が通らない、と言うより指示を聞いていない。
拒否行動が多すぎる。
両親は長男の経験があるので、症状の判断にためらいはなかった。
お母さんは3男もどうしてもこばとに通わせたいと電話してきた。
他に通う気はない!と言った。2013年のことだった。
高齢者の仲間入りに差し掛かった私は教室を縮小して、
漸次療育する子どもを減らしている最中だった。
お母さんはこばとは規模を縮小しているのを知っていた。
新しい子どもの療育は受け入れていないということも知っていた。
それでも通わせたい、と言ってきた。
私も、グレーソーン兄の弟と聞いては断れない。
2013年から就学までと言う条件で療育開始した。
2016年には2教室を1教室まで減らす予定だったから。
当時、他に未就学児がまだ少人数いたが末っ子君はその中にも入れなかった。
1回目、教室の入口に座り込んで顔を隠して泣き続けて終わった。
その間、私は抱っこ状態。
2回目、相変わらずうずくまって泣き続けたが声は下火になってきた。
入口で座り込んだまま、彼の好きそうなブロックで一緒に遊んだ。
3回目から彼を徐々に机に誘導して、着席させた。
ブロックやお絵かきは好きなので、誘いに乗ってきた。時間の大半を使った。
その次からブロックやお絵かきの合間に課題をやらせた。
絵とことばのカードを使うと間もなく言葉が出始め、
お絵描きが好きな事から、書字の取り組みもよかった。
入学前までには舌足らずで、滑舌は悪かったが、会話も可能になった。
ひらがなの読み書き、簡単な足し算引き算なども出来るところまでいった。
彼には造形力、イメージ力が豊かだった。
工作や絵を描かせても、「なぁ~るほど!!」と思わせるようなものを仕上げた。
好きでないことに対しては集中力が弱かった。
すぐハイテンションになりやすい。
園での友達との関わり方がエスカレートしがちだった。
就学も近いということもあり、小児神経科を受診しステラテラを処方してもらったが、
効果がいまいち見られない。
お母さんは再度受診して薬を変えてもらった。
薬を変えた、言って連れて来た日、
書字をする彼の指先が震えているのに気が付き、
直ぐにやめてもらうよう、お母さんに伝えた。ざわっと不安が私の胸に広がった。
この種の薬は、まだ試してみないと薬効が分からないということも多い。
彼は小学校は普通級に入った。
学校の理解もあって継続したが、トラブルは多々あった。
自他の持ち物を区別しなかったり、勝手に人のものを使ったり・・・。
そのことで、両親は何回か相談に来た。
4年生になった今、行動面では落ち着いてきた。
しかし、習い事は何をやっても続かない。
学習塾、水泳、空手…何をやらせてもすぐやめる。
今回長男に同行したわけは、
「このまま何もやらせないでいいんでしょうか?」
ということを相談したかったようだ。
両親と話をしている間、ついたての向こうのパソコンのある部屋で、相棒スタッフが
彼の相手をしていた。
彼は「パソコンに興味がある。ペイントをやりたい。どうやるの?」と言っていた。
お父さんは彼は任天堂スィッチでマインクラフトをするのが好きで、飽きずにずっとやっている、と言った。
「好きでないものをやらせても集中しないし、長続きしないんじゃない?
パソコンで造形のようなことをやらせてくれる教室に通わせてみてはどうかな?」
とお父さんに言った。
お父さんは納得したようだった。
「それがいいかもしれない。長男がMOS検受けたところで、子供向けにやっているようだったから聞いてみる。」
明るい、弾んだ声で言った。
ADHD系は自分の好きなものに出会った時、集中力を能力をはっきする。
そうよ。彼にない物ねだりして、みんなと同じにさせようとしなくても、
彼が持っているものを磨いてやればいいのよ。