自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

痛覚鈍麻


痛くないの?!!

 

自閉症児の自傷行為は見ている方も辛い。

 

「ど~うして!!!そんなことするの?痛いでしょ!!!」

と思わず言ったり、自傷をその場で止めたくなる。

 

あご叩き。

赤く腫れて見るからに痛そうなのにそこをめがけてこぶしで叩く。

しかも直近から叩くのではなく、腕を伸ばして勢いつけて。

割れて裂け目から血がでることも・・・

 

頭突き。

額を壁や固い所に打ち付ける。

床に額を打ち付ける子もいる。

打ち付けた場所が柔らかったりすると、わざわざ固い所を探しに行ってまでやり直す。

こばとに療育に来ていたた小学校高学年の自閉症男子、

第三の目の上に大きなタンコブを作ってきたことがあった。

既に赤黒くなっているのでびっくりして、

「どうしたの!!そのこぶ!!」、と聞くと彼は

ニヤッとして「パニック」と言った。

知ってて自傷をやる。

 

手首を噛む子もいる。

いつもいつも同じ個所を。

いつも噛んでいる箇所は皮膚が固くなり、

その箇所には毛も濃く生えていた。

指の関節あたりを噛む子もいる。

皮膚は固くなってタコのようになっている。

唇をかむ子もいる。その部分だけ唇が分厚くなってしまう。

 

自分の太ももを抓る子もいる。

ズボンの上からは見えないが、脱ぐと点々と血豆のようなあざがついている。

痛そうな顔で抓っているわけではない。

自傷は自己免疫性髄膜炎のように自分を他害する。

 

痛いはずなのにどうしてこうも自傷してしまうのか??

 

自閉症は痛覚が弱い、鈍いとはよく言われることだ。

 

普通なら、のた打ち回るほどの痛みであろう膿まででる歯茎の腫れ

腫れに気付いて、親がびっくりして口中を確認するまで訴えてこない。

口内炎や傷口を平気で触る、ほじくる。

 

見ている方が痛みを想像して身震いするほどなのに、痛いと大騒ぎしない。

彼らは自傷の時は痛みを和らげる、脳内鎮痛物質、

エンドルフィンでも出るのだろうか、とおもってしまう。

脳のネットワークの問題らしいが。

 

ちょっと待て、今日は自傷の話ではない。

 

彼らの痛覚の弱さ、鈍さを周囲の者が気にしてやらねばということを、

今年の元旦以降、感じることが二件もあったからだ。

 

 

1月、アトリエカフェがオープンしたことで長年どうしているかな、

と思っていた昔の子(30代)に会うことが出来た。

 

ピエールロバン症候群の彼は幼児期、療育に来た時から痩せていた。

東京の某有名病院で手術をしてもらったが、

知的障害があったためか言語訓練は受けていなかった。

幼児期こばとに来た時は発語もなかった。

 

多動というより固まりぎみの真面目な彼はこばと

キュード法も取り入れた発語の練習をし、喋れるようになっていった。

声は低く、太く、くぐもってしまうのは致し方なかった。

 

その彼がアトリエカフェに行った帰りに、

ご両親と一緒にこばとの事務室に顔を出してくれた。

相変わらず痩せていたいたが背はお父さんより高くなっていた。

もう30代なので彼の健康状態を聞いた。

 

お母さんの話

彼ががいやに痩せて来たので、病院で診察を受けさせた。

肝臓関係の病気では名の知れた有名なお医者さんだったそうだ。

肝脂肪だか、肝肥大だか言われて、栄養指導を受けることになった。

つまり、野菜中心の・・・。

 

数か月たって、ますます痩せて来たので別の病院に連れて行った。

そこでの診断は潰瘍性大腸炎

それまでの野菜多めの食事指導とは真逆の食事が必要だった。

肝臓に問題が出たのもそのせいでだろうと言われた。

 

きっとひどい腹痛血便もあったに違いない。

周りの大人は痩せてきたことで異変に気付いたが

彼自身からは血便が出た、とか腹痛は訴えてこず、普通に作業所に仕事に行っていた。

痩せている彼がさらに痩せたので周囲の大人は異変に気付けたが。

 

過去記事で取り上げたこともある子(30代)が

 
kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

 

 昨年、重篤な病気になった。

 

お母さんが年賀状の余白いっぱいに詳しくその時の様子を書いてきた。

 

彼は、体調不良で仕事を休んでいたが、

虫垂炎と診断されて入院するまで1週間もかかった。

入院した時には腹膜に膿が溜まりすぐにすぐに手術が出来なかった。

手術したのは入院してから28日後。

それから10日後に退医院できたそうだ。

 

体調が悪くなった時も、虫垂炎と診断されるまでも

通常なら相当の痛みがあっただろうに

我慢したか、

痛みをあまり感じなかったか・・・

 

退院後は職場復帰もはたし、また特例子会社で働いている。

良かった、良かった。

 

 

 

自閉症も成人になり中年に差し掛かると

成人病のリスクも高まってくる

血液検査尚は受けられるように、採血に慣れさせておくことも必要だ。

 

血液検査した結果、尿酸値が高かったり、脂肪肝が高いと出た子(30代)もいた。

ともに、お肉大好き!!!

 

 

 

自閉症には感覚過敏があるのは良く知られていて、

対策はいろいろ研究・工夫されグッツも考案されている。

過敏は子どもが騒ぐので分かりやすい。

 

しかし感覚鈍麻の方の対策は過敏対策ほど進んでいない傾向にあるように思う。

 

周りをよく見ないので物にぶつかって、

青あざを体のあちこちに作っても痛いというという訴えがないので、

周囲の大人はいつ、どこでぶつけたのかわからない。

 

怪我でようやく治りかけた瘡蓋を爪で剥がして、

さらに掻き崩すのでなおりにくい。

 

中には肋骨の骨折が自然治癒した跡を、別件でレントゲンを撮った時分かった。

お母さんは一年前、元気なく胸を触っている時ががあったような気がする、

と言って、学校に問い合わせていた。

 

自閉症者も成人後は成人病のリスクもあり、

痛みを訴えないからと放置していると

 重篤な結果になりかねない疾患もある。

 

暑さ、寒さが分かりにくく自分で衣服調節ができない傾向もある。

汗びっしょりになっても、厚着したままだったり。

 

自立させるため、

自分でやりなさい、自分で考えなさい、というのも必要かもしれないが、

感覚鈍麻という特性もあるということを考えると、

周囲の見守り、配慮は欠かせない。

 

 

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大親友の男の子を待ち続けて