自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

偏食

お願い、食べて!!!

 

子どもの睡眠障害は親子共々をイライラに巻き込み、

双方の精神安定に甚だよろしくないが、

子どもの極端な偏食も親にとって、小さくない悩みである。

 

2才前後まではよく食べてくれたのに・・・と言う親もいる。

其の頃は指差しもしたのに・・・と言う折れ線タイプの子どもの場合である。

 

中には偏食とは逆に、何でも食べてくれるという子もいる。

噛まずに飲み込む。

食べるのが速い。バキューム食べ。

食べさせすぎないよう制限が必要と言う子どももいる。

 

しかし、偏食の悩みを訴える親の方が圧倒的に多い。

子どもは偏食だからと言って、飢餓の地域の子どものように

がりがりに痩せているわけではない。むしろぷっくりしている。

偏食の割に標準体型か、大きいぐらいの子もいる。

家で、好きなものだけを多く食べているからか?

食べたものは漏らさず体の栄養にしているかからか?、と思ってしまう。

 

 

偏食児の多くに見られるのが 

肉は食べるが野菜は小さいものでも避けてたべる。

フライドポテトは食べる。

アイスなら食べる。

熱々のご飯は食べるが、冷めると食べない

作ったおにぎりは食べないが、コンビニのおにぎりはたべる。

コカコーラは飲む。水は飲まない。

病気の時、消化の良い物を工夫しても食べないが、カップラーメンなら食べる。

焼きそばの麺は食べるが、麺についたもやしやキャベツはひとつひとつとる。

なぜか、唐揚げは食べる子が多い。

肉ののせいか、味付けのせいか、油のせいか、好む子どもは多い。

 ・・・etc.

 

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夏合宿ではから揚げだけ取りすぎないように

 

 

中には肉より、ネギが大好きで、

給食の汁物の中に入っているネギだけ拾って食べる自閉症男児がいた。

彼とは先日、例のアトリエカフェでお母さんと一緒に会った。

偏食児だったとはは思えないほど、偉丈夫の立派な体格だった。

私が「ネギが好きだったね。」といったら、

お母さんが「今でもネギが好きだけど、先生、よく覚えていますね。」と言った。

 

 

料理されたものはなかなか口に入れないのに、

食べ物ではない物を口にいれる偏食児はよくいる、

 

石ころ、紙切れ、輪ゴム、消しゴムのかす、

袖や襟まわりをずっと、にちゃにちゃ噛んでいる。

紐の端や鉛筆の頭をボロボロにかむ。

鉛筆の芯を食べて口の中を真っ黒にする子もいる。

 

そんなものを口に入れるくらいなら、

どうしておかずを口に入れてくれないのか、ため息がでる。

 

 

こばとの療育の一つ、幼児教室では手作りの給食を提供していた。

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

 

完食など期待できない。

偏食の改善の前に、

「いただきます」から「ごちそうさま」まで座っていられること、

スプーン、フォークを使うこと、

何かしら口に入れられることが主目的。

 

 

偏食、食べられないという理由だけでない自閉症男児もいた。

 

出された給食には何一つ手を付けない。

男児の一番好きなものは何か?とお母さんに聞いたら、

唐揚げだ、というので、

次の幼児教室の給食の時に、唐揚げを含むメニューにした。

 

 

給食には何一つ手を付けない、件の自閉症男児

唐揚げが出て来た時は、目が釘付けになった。

 

そしてうっかり手を出して取ろうとする様子さえ見せた。

よだれも垂れそうになっていた。

 

しかし、いけない、いけないと気を取り直したように、手を引っ込めた。

子どもなのにこんなにも意地が強いものかとスタッフ皆驚いた。

 

彼の中では、土曜日のお昼は

お家で食べると決めていたようだった。こだわり。

幼児教室では一切食べずに終了した。

 

偏食が度が過ぎると重篤な結果になることもある。

 

だいぶ昔の話だが、幼児教室に通って来ていた自閉男児

超偏食だが、焼きそばなら食べる、とお母さんが言うので、

キャベツやもやし、肉もいれて焼きそばをだした時があった。

 

しかし、まったく食べない。

お母さんに、「食べませんでしたよ。」と言うと

焼きそばでも「ぺヤング焼きそば」しか食べない。という。

 

えーっ!!!

 

その男児が療育に通っている途中で何かの病気になったことがあった。

治療の途中で、詳しいことは記憶から抜けてしまったが、

免疫力がないために視神経がやられて視力が衰えてしまった。

その後入院した。

 

手術で視力回復は可能だが、

手術して、その男児が目を触る可能性があるので、

手術を理解して、術後、目に触らないでいられるまで手術は

延期された。

その自閉症男児は、小学校は盲学校にはいった。

手術はしたろうか?もう成人になってるはずだ。

 

偏食の矯正は本当に難しい。

 

 

必死に、真剣な顔で「食べて!食べて!」と言うほど逆に食べない。

無理強いすれば、すぐ席を立ったり、口に入れても飲み込まない。

口の中を唾でいっぱいにしたりする。

 

お父さんには受け入れられていなかった幼児教室の自閉症男児

家で食事の時、手づかみしないよう片手をハンカチで縛られていたそうだ。

お母さんは反対だった。

こばとの幼児教室ではそんなことしないので、落ち着いて食べればいいのに、

男児は手を縛られる前に食べようと思うのか、

給食がだされたとたん猛烈な勢いで食べた。

制止されることで逆に食い意地が強まったようだった。

両親は離婚し、男児は療育に来なくなった。

 

食物アレルギーがあるため食事制限されていた重度自閉症男子も食い意地が強かった。

キャベツだけは安心してOKだったので、夏合宿ではキャベツの千切りは好きなだけ

食べさせた。

 

しかしある年の夏合宿では、キャベツアレルギーがでた、というのでキャベツも

制限されることになった。

食べ過ぎてもアレルギーになるんだな、とわかった。

 

大好きでたくさん食べていた物も何の理由かぱったり食べなくなることもある。

何か、食感でも悪いものが入っていたか?

頑として食べなかったものも、何かのきっかけで、急に食べるようになったりする。

CMを見たか、人が食べているのを見たか、たまたまか・・・

 

食べることが苦行になってはかわいそうだ。

食事は楽しく食べさせたい。

出来れば自分から食べてみようかな、と言う勇気をもたせたい。

 

引き換えで食べられるものが増えていくのが

親にも子どもにもほどほどの負担でちょうどいい。

好きな食べものがなかった重度自閉症男子はDVDと引きかえで偏食改善に成功した。

 

あんなに偏食に悩まされた洗濯奉行のお母さん、

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 何でも食べるようになった今、

食べ過ぎないように、

怒らせないよう注意するのが悩みになった、と笑っている。

 

 

 

 

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