自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

薬物療法

時には薬も必要!

 

目に見える障がい、外見的にも分かる障がい

診察で特定できるような病気であればで

薬を使うことに、それほどの躊躇はないだろう。

 

しかし、外見的には五体満足で、

見た目にどこがどうなのかわかりにくい自閉症の場合、

薬物療法はなかなか受け入れがたい。

 

癲癇発作を起こした場合は、薬物用法は確立した治療法なので

即、薬物療法を受け入れるだろう。

 

前記事の小児神経科の先生は、

発達障がいに対する薬物療法はあくまで補助的な選択であり、

主要な方法は行動療法や認知行動療法に基づく日常の療育と、

教育にあることは異論の余地がない、と断言している。

 

しかし、

自閉症状に伴う異常行動や激しいかんしゃく

パニック、泣き騒ぎ、奇声、他害、自傷、強迫的なこだわりは、

本人んの辛さもさることながら、

家族にも耐えられない事があり、精神的に参って鬱になりかねない。

そういう時は薬に頼ることも必要になるだろう、と話している。

 

脳科学の発達とともに副作用の少ない、

非定型向精神薬と呼ばれるものが続々と開発されてきている。

子どもにも微量のSSRI(セロトニン再取り込阻害剤)も使われるようになった。

 

こばとの療育期間中も、子どもの激しい情動にお母さんがまいって

薬を飲ませている家も少なくなかった。

 

パキシルデプロメール

セレネースリスパダールが試されていた。

自傷の激しい子はリスパダールの頓服を持っていた。

激しいかんしゃくに癲癇薬のテグレトールも出されていた。

 

自閉症に対する薬物療法の定まったガイドラインはなく

試してみないとどんな薬効があるのか定かでない所があった。

療育現場でもはっきりした効能は感じられなかった。

 

 

しかし、はっきりわかるものもあった。

注意欠陥多動性症候に対して中枢神経刺激剤のリタリンが注目されていて、

子どもにも同系列のコンサータが開発され処方されるようになっていた時期。

 

小学低学年のADHD男子もコンサータを服用していた。

副作用として食欲減退があって痩せるので,休薬しながら飲んでいた。

学校に行く日は飲み、こばとに来る日は飲んでこなかった。

 

学校ではテンションの上がり下がりがあって、

興奮を抑えられないこともあるし、授業に集中できないこともあるので

朝飲ませてから行かせるようにしている、とお母さんは話していた。

こばとは素のままでも安心して任せられるからと。

 

ADHD男子は切り替えの悪さやぐずり拒否があって、

会話は普通に出来たが、軽度のグループでは対応にコツのいるタイプだった。

 

夏合宿の時、お母さんが念のためと言ってコンサータを持たせてよこした。

 

コンサータを飲んだ彼はまるで別人のようだった。

合宿中、逸脱行動は全くなく、落ち着いていてよい子で

スムーズにスケジュールをこなし、終了した。

 

前スタッフは、あんなにも違うんだね、と合宿の記録を書きながら

驚きの感想を話したものだった。

 

高学年でコンサータを飲んだADHD男子は

頭の中がすっきり整理された感じがすると言っていた。

 

 

 

9歳~10歳頃は少年から青年への変わり目の年頃とあって

情緒が不安定になり、攻撃的にもなる。

定形発達でも反抗期と言われる時期だ。

言葉のあまりない重度の自閉症などの場合は

行動面が荒く、激しくなってくると家族もほとほと困り果てて

薬の処方を希望することが多い。

 

幼児期からこばとに通って来ていた重度自閉症男児のお母さんから、

年ごろ長男の激しい行動の悩みを聞いた。

 

 

過去記事で書いたバリ島旅行に家族旅行をした重度自閉症男児である。

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

 

あまりにも荒れるので、かかりつけの医師に相談して

薬を出してもらったがあまり効果がない、どうしたものだろうという。

 

其の頃、ドーパミンの量を調節してくれるという

エビリファイ(第二世代の非定型型向精神薬)が自閉症にも効果がある

と言う話を小耳にはさんでいた。

 

私はお母さんに、「エビリファイは効果が出るそうですよ。お医者さんと相談して処方してもらったらどうですか?」とすすめた。

 

お母さんはすぐに、薬名を出して医者と相談し

エビリファイを処方してもらったそうだ。

飲ませた後、自閉症息子はこんこんと眠り続けたそうで、

丸一日ほど寝続けた後目を覚まし、

それからはびっくりするほど意識が上がり、落ち着いてきた。

指示が良く通り学校の先生にもびっくりされた、とお母さんは喜んでいた。

 

また別の自閉症男児、4年生だが言葉はオウム返し程度。

健常のお兄さんと二人兄弟。目がパッチリした美男系で目もよく合う。

 

しかし、場面場面でテンションが高く、

大声を出したり、多動気味の行動をとるのが悩みの種。

お母さんも息子の年齢を考えると、その騒ぎ振りに困ることも多いので

かかりつけの病院でエビリファイを処方してもらたった。

 

服薬すると、とても静かになりお母さん的には

いつもの騒ぐ息子でないことが逆に心配になってやめてしまった。

我慢することにしたそうだ。

 

自閉症男児の2つ違いの兄が中学受験をして、寄宿舎にはいった。

すると自閉症次男は家では騒ぐこともなくなり

落ち着いて過ごすようになったそうだ。

ただ休みの時兄が返ってくると、以前のように騒ぐとお母さんが言っていた。

 

喋る兄に対する嫉妬もあったのかもしれない。

彼だって優れたところは結構あった。

自転車にも乗れたし、縄跳びも出来た。

知的な遅れは大きく文字は読めなかったが、文字や数字はきれいに書いた。

地図パズルやピクチャーパズル目を見張るほど速かった。

 

 

今でもくる年賀状には、いろいろな運動、スケート、登山を楽しんでいるようだ。

 

 

つい先ごろ、アトリエカフェ出会った30代の重度自閉青年は

オキシトシンスプレーのお蔭で落ち着いた生活をしていられる、

とお母さんが言っていた。

 

 

日進月歩の医学、

自閉症に対してもいろいろ薬が開発されているようだが、

自閉症スペクトラムの症状は千差万別。

 

薬物使用の適否、効果などでは定まったガイドラインはない。

療育、教育が最大の薬ではあると思うが、

年齢、身体的変化で本人や周囲の大人があまりに

ストレスを受ける時は薬物も必要になるだろう。

 

出来るだけなしで済ませたいものであるが・・・・

 

 

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散歩より自転車!