自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

好きにしていいよ。

自閉症児者にとって

好きにしていい!

と言われることは一番困惑することだ。

自由にして、というのと同じくらい

 

「まっ、いいか!」

「なんとかなるさ!」

「適当に!」

 

も不安をもたらす難しい課題だ。

 

 

御自身が自閉症の東田直樹さんの著作、「絆創膏日記」の中に

「自由という不自由」という見出しがあるが、

好きにしていいよ、と言われることへの困惑が書いてある。

 

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自由という不自由

 

 ちょっと、一文を抜粋してみると

 

 僕が小学生の頃、時間の過ごし方でいちばん困っていたのが休み時間である。

「「好きなことをすればいいんだよ、自由にしていい時間なんだから」

 そういわれたが、いまやれる僕の好きなことはなんだろう・・・・・と

 考えている内に休み時間は終了した。

 

 中略

 

 みんなの所に行っても、僕は自分が何をすればいいのか、

 わからなかった。

 僕の目に映るみんなは、楽しそうだった。 

 きらきらと輝いて見えた。

 「何がやりたいの?」と聞かれれば、僕の答えは「ブランコ」。

 頭には、この単語しか思い浮かばなかったのだ。

 休み時間に何をするか、当時の僕には、かなり難しい課題だった。

 

 

 自閉症の子育てに置いて養育、療育する人間が最も心を砕くことは

いかに見通しを持たせて、彼らの気持ちを安定させること。

 

こばとではそのために学習、識字教育を最初から重視してきた。

文字を読めれば、何をやるかや、行動の順番を

視覚的に教えることが出来るからだ。

 

彼らにとって、

何をやるのかが分からない!

やる順番がごちゃごちゃになる!

ことは気持ちを混乱させる。パニックになることもある。

 

だから見通しを持たせ、納得して物事が進むことで気持ちを落ち着かせ、

不安・不安定にならずに済む。

 

 

 

過去記事でも取り上げたことがある。

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

自由にしていい、自分の好きにしていい、

ただし、stay  home。

彼らにとって難しい課題だ。

精神不安定になってはいないだろうか。

 

学校が休校になっているのもどう過ごしているだろうと、気にかかるが

社会人になっている自閉症者も心配だ。

 

頑張って就職し、仕事に誇りを持って喜んで働いていただろうに

彼らの仕事はリモートワークなどしにくい職種がほとんどだ。

自宅待機になっている自閉症者もきっと多いことだろう。

 

見通しを示してやろうにも

コロナがいつ収束するのか、だれも見通しがつかないのだ。

 

過去記事

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

アトリエカフェは社会人&絵描きの息子君の週末のアトリエでもある。

 

お母さんの話

 

職場が東京の息子君も自宅待機になった。

土・日は絵を描いていたり、映画に行ったり、ジムで水泳して

余暇を満喫していたが、今は平日も自宅にいることになった。

映画も水泳もボウリングにも行けない。

ゲームはやる習慣がない。

 

学校時代もそうだったが、彼はストレスが溜まってくると独り言が多くなる。

声も大きくなる。

パニックもどきの怪しい雰囲気になる。

 

毎日何をしてよいか、時間を持て余し不安定感が出てきている。

そこでカフェオーナー、つまりお母さんは色々やるべきことを考えてやっている。

しかし、当日、急に言うのは息子に対してNGである。

 

前もって予定を立てて、前日に家事手伝いの流れを示してやる必要がある。

 

疲れる!とマスク越しの目が疲弊していた。

 

お休みの日はお出かけパターンだった自閉症児者は、

このコロナ自粛ムードのなか、どこにも行けないでどうすごしているだろう。

 

何もすることがない、何をしてよいのか分からない、

ということが彼らにとっては苦痛で、混乱と緊張を強いられることなのだ。

 

 

幼児期に海外から帰国して、

すぐにこばとの療育に連れてこられた彼は

言葉のない重度の自閉症だった。

はじめは分からない、出来ない事があると、

突然、立ち上がってドアに向かって走り、バァーンと体当たりなどした。

他害とも自傷ともいえる行動をとる男児だった。

しかし、療育をやっていくうち、文字、数字の読み書きは出来、

囁くような声ながらも発語もでてきた。

性格はひどく几帳面で、丁寧、きれいずき、

文字はマスの中に、きっちり納まるように丁寧に書き、

消しカスなどがわずかでもプリント上にあると、

フッと口で吹き飛ばし、それからまたやり始めるタイプだった。

 

学校時代は良かった。

先の見通しが立つので、何事もきっちり、丁寧にこなした。

手先も器用で、刺繍など黙々ときれいに仕上げた。

クッキーの生地をめん棒で伸ばさせると、

それこそ紙のように薄く伸ばすほどだった。

 

問題がおきたのは支援高校卒業後、就職してからだった。

農業が嫌いでなかった彼は、とある会社の農業ハウスで働くことになった。

 

当時、障害者雇用が義務付けられるようになり、

自社内で障害者に仕事を割り当てられない会社は

ビニールハウスを借り受けて、そこで障害者に農業をさせることで、

障害者の雇用率の数合わせをするというやり方がは広まっていた。

障害者へ対応などあまり知らない人がリーダー、

直属の主任という例も少なくなかった。

 

彼の就職先の職場環境も同様だった。

職場の主任から家にどうやって対応したらよいのか、と問い合わせがあったという。

 

障害者というのは知っているが、

言葉でのコミュニケーションがままならない自閉症について、

理解しているとは言い難い問い合わせだったという。

 

スケ―ジュールが決まっていない日課

時間が空いた時、何をやっていいのかわからない。

指示がはっきりしない、不安だらけ、見通しの立たない仕事で

彼はみるみる痩せていった。

 

3か月で10キロ近く痩せたのを見たご両親は、彼の退職を決心。

しかし、その時彼は精神も病んでしまっていた。

 

幼児期のような暴力的な行動も出てきた。

東田直樹さんが「絆創膏日記の中」で書いていた

イライラの怪物が頻繁に彼をおそった。

 

彼にとっても家族にとっても長い長いトンネルだった。

病院にも行き、一進一退しながらも

今、快方に向かいつつあるという。

 

コロナのことは耳に入れていないけど、

楽しみにしていたミュージカルがキャンセルになったことを

すんなり受け入れたというから、

きっとコロナ自粛のことはわかっていたのだろう。

 

とお母さんはメールをよこした。

 

誰でもそうだが、特に自閉症の子どもや人達は見通しが持てないことに、

極度に不安定になる

 

 

コロナ自粛で自宅待機になった自閉症児者は多い。

何もすることが決まっていない、見通しのない

日常でありながら非日常・・・・

 

ストレスで情緒不安になっていないだろうか。

 

早く、コロナ収束の宣言を聞きたいものだ。 

 

 

 

 

 

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               にゃんにゃん追跡中

 

 

 

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アトリエカフェで売っていた手作りマスク