自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

歌は別腹

歌脳・言葉脳

 

発語・言葉が出ていない自閉症児を育てている

お母さん方から、度々、似たような話を聞かされた。

 

言葉はないけど、歌は歌えるんです!!!・・・?????

 

なんか鼻歌らしい声が出ているので、

よくよく耳をそばだてて聞いてみると、

歌なんです、結構あってるんですよ!

 

彼らの鼻歌は、歌わせようと教えた幼児の歌ではない。

テレビでよく見ている番組のエンディングのメロディーだったり、

ドライブ中、良くかけているカーステレオの親好みの曲だったり、

 

それは決して、子供っぽい曲ではないのに、

鼻歌のリズム・メロディはあってる。

子供向けではない曲でも、何か彼らの琴線に触れるものがあるのか?

 

曲の波長が子どもに合っているためか

同じパターンで繰り返されるためか

彼らは好きな歌を直接的に受信し、脳にインプットするらしい。。

 

そして、それが正確に鼻歌になってアウトプット。

歌ってみて、と言った時に鼻歌は出ないが

気分・機嫌がいいとひとりでに鼻歌が出る。これって、普通!!!

 

 

歌は覚えるのに、何で言葉が出ないの!!!

と言いたくなるお母さんに気持ちがよくわかる。

 

リズム感がキーポイントなんだ。

 

単調な日本語より、リズム感のある英語の方に反応が良いこともしばしばある。

ひらがなの歌はないが、アルファベットの歌はあるし。

い~ち ⤵、に~ぃ⤵、さ~ん⤵  より、

ワン⤴、トゥ⤴、スリィ⤴のほうが彼らの目がキラッとするのだ。

 

歌と言葉は別々の脳に入るんだぁ、と実感する。

 

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音楽と言葉はインプット場所が違う

 

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右脳優位だが言語化につながらない

 

 幼児から高校生まで療育していた頃は、

中学生以上を対象に<社会トレーニング>という活動もやっていた。

社会人になってからの余暇活動の一つになるようにと・・・。

毎月、活動内容は変わるのだが、

その活動の一つとしてカラオケ店にもよく連れて行った。

 

 

カラオケの活動の時は参加希望を募ると同時に、

言葉でうまく言えない子も多いので

どんな歌好きか?を親御さんに前もってリサーチしておく。

 

みんな、カラオケは大好きだ。

はじめ耳ふさぎしていた子も次第に虜になる。

こばと前に集合、出発はウキウキ、ワクワクが伝わってくる。

電車に乗り、毎回同じカラオケ店につれていく。

そこはドリンクバー付きで一時間1人280円だった。

 

レベル的に同じぐらいかなと思われるメンバー4人ぐらいずつを

グループにわけして4ルームから5ルームを借りた。

 

選曲、リモコン操作も自力で可、のグループは時々覗くだけにし、

(マイクを持ったら離さない人もいるので、順番にやっているかどうか見張る。)

付き添いの3人のスタッフは、言葉のコミュニケーションが

ままならないグループのルームに付きっきり。

リサーチしておいた曲を勧めてみる。同意を確認しと予約曲に入れ、

順番に歌わせるのだが、驚かされることがしばしばあった。

 

会話、受け答えもままならないのに、歌を歌いだすと変身!

画面に流れる字幕を見ながら言葉に詰まることなく、歌いあげるのだ。

 

 

平井堅 瞳をとじて

歌詞と同じように、どうしてしゃべってくれないのかなぁ~とじれったくなる。

 

小田和正「言葉にできない」

えっ、何でよりによってそんな曲、気に入っているの?

確かには流行っていたけど。意味わかってんのかなぁ。

 

今井美紀「プライド」

確かに、プライドの高い女の子だった。お母さんも好きな曲だと言っていた。

 

中島みゆき「時代」を歌った子もいた。暗めの男子だった。

杉良太郎水戸黄門、地味で大人しい男子が歌っていた。

ダウン症の女子は石川さゆり天城越えを振りまで入れて、

歌手になり切って歌っていた。聞いている方は口をあんぐり。

 

アニメソングを歌った中度自閉症の男子は、

カラオケでも大学ノートに細かく書いた、列車の時刻表を持ち込んでいた。

自分が歌わない時はノートを開いていた。

2語文の返事がやっと。あっ、あっと言う声だしのチックもあった。

 

しかし、歌ったテンポの速いアニメソングは完コピ。

歌の半ばに台詞がはいるのだが、そのセリフの声まで1オクターブあげて

まるで別人。リズム感抜群。

 

カラオケに連れていく事は私も楽しかった。

選曲は彼らの性格を反映しているように思えたし、

歌に思いを託しているようにも思えた。

 

歌の時は本当にすらすら言葉が出て来るのに、

言葉で言わせようとすると、とたんに、

たどたどしくなるのがじれったいという思いもあったが。

 

話は違うが,ADHDタイプの子には吃音を持つ子も多い。

しかし、歌と言葉は別物を彼らでも実感する。

歌を歌わせると見事にどもらない、歌はうまいくらいだ。

声もいい。

対面して話す時は、どうしても出始めの音がつまづいたり

ある音になると喉がつまったように、どもってしまうのに。

 

小学一年の時、こばとに来た彼も、どもるADHDだった。

始めは自閉性もあり言葉もあまり出なかったが

どもりつつも、会話がなりたつほどになった。

シングルファザーの会社社長の息子だった彼は

ブランド服を愛好する青年に成長した。

ササンオールスターズのファンだった。

桑田佳祐の歌を歌わせるとそれはみごとで、振りまで入れて浪々と歌い上げる。

 

 

メロディー・リズム・直観で歌う時の右脳と

言葉を聞く・話す・書く左脳

 

自閉症の子ども達は左脳が活性化しにくいんだろうなぁ。

その代わり、右脳に働きかける刺激に対してはすごく集中する。

 

 カラオケで画面の字幕を読みながら歌っている彼らの姿は集中そのもの。

まるでその曲の世界に吸い込まれたように、じ~ッと見つめながら歌っている。

リズム、メロディ・歌詞は韻をふむので、

パターン認識脳力がフル回転てして記憶に結ぶ付くのだろう。

 

 

話は飛ぶが、

昔、自閉症児のお母さんが、

自閉症の我が子はテレビの画面はしっかり見るし、

コマーシャルも覚えてつぶやいたりする。

それなのに母である自分とは視線を合わせたり、

顔をしっかり見ようともしない。自分がテレビから顔をでしたいくらいだ、

と情けなそうに話していたことを思いだす。

 

しかし、コロナのお蔭でその願望は可能になるかもしれない。

オンライン対面である。

画面の母親の顔は目をあわせてしっかり見るに違いない。

そこで、歌を歌えば、母に合わせて歌を歌うようになるかもしれない。

多少、パターン化して繰り返しが必要かもしれないが。

 

 

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コロナ後の変化に期待