自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

見捨てられ不安

 

見捨てられ不安の逆利用

 

幼児期の自閉症育ては確かに、定型の子育てにはない大変がある!!!

呼んでも振り向かない!

音は聞こえているが、名前と自分が一致しない。

 

 ローレンツのいわゆる刷り込みは欠落しているので、親の後追いしない。

外では手を離せない。

うっかり手を放せばどこへ行ってしまうかわからない。

愛着も未発達なので、親を探そうともしない。

そとで手を放して遊ばせる時も、

子どもの後を追いかけてまわらざるを得ない。

 

自閉症の幼児期は気に入らない、自分の要求が通らない

自分の思っていることと違ったりすると、

所構わず、大泣きしたり、寝転んだり、聞く耳をもたない。

なだめようがない。

ついつい、子どもの言いなりになってしまうことも多くなる。

 

しかし、神経をすり減らす子育てに奮闘するうち

自閉症児のほうにも、自分の要求を満たしてくれる必要な人として

親や周りの大人を意識するようになる。

愛着心も芽生えてくる。

 

 

 子どもの方にもかまってもらいたい気持ちが芽生えてくる。

決して、孤独に自分の世界に閉じこもっていたい訳ではない。

しかし、関わる言葉、思いを伝える手段を持たない時はどうするか。

おとなしく良い子にしていたら、

静かにしてくれて助かる、とばかり放っておかれる。

 

自分に気づいてもらう手段、それはいたずら。

いたずら、それももやって欲しくないいたずらをすれば、

思う相手は振り向いてくれる。

 「あッ! こらァーー。だめェーーー。」

 

盛大に振り向いてくれることがうれしい。

大声にはびっくりするが、楽しそうに逃げたりする。

追いかけてくれることを期待もする。

いたずらをすれば、相手は怒り顔(笑い顔と誤認?)でかまってくれる。

 

怒られたから、やってはいけないという理解にははつながらいい。

いたずらを繰り返す。

無視するといたずらがエスカレートすることもあるので

いたずらするものを子どもの見えるところから消去する。

 

 

こどもには決して見捨てられることはない、という自信がある。

 

 

 新型 コロナ感染が小康状態になりつつあった時、

あるお母さんから療育相談の予約を受けた。

午前中の予約だったのでお母さんは出かける段取りに

気持ちが行っていたことだろう。

 

息子の方は小学生になっていたが、

お母さんが自分の方に気持ちはなく

そわそわ急いでいることに感づいて、

気を引くために絨毯の上にジュースをわざとこぼした。

 

お母さんは怒り心頭に来たが、出かける時間が迫っていたこともあり

家族に後を頼んで療育相談に来た。

相談内容はまさにそのジュースわざとこぼしの件になった。

 

その話を聞いた私は、

 

自閉症児は、

何をやっても最後は許される、

見捨てられることはないと思っている。

事実、家庭内では王様になっていることもあるでしょう。

 

しかし、実は見捨てられ不安を抱えているんです。

 

課題など、やらない!と拒否しているくせに、

「じゃぁ、もうやらなくてもいい!!!」とひっこめると

「やるっ!やるっ!」と急にやりだしたりするでしょ。

 

今回のジュースこぼし事件は「やらなくてもいっ!!」と

怒りを見せるパターンではないので

今回は見捨てられ不安を逆利用して

絶対無視でいきましょうか、と提案した。

 

お母さんは帰宅後、家族全員に話し絶対無視を敢行。

息子はジュースこぼし事件はなかったかのように

家族の誰彼に寄って行って話しかけてみたが、ことごとく無視され

次第に不安な表情になり、ソファにうずくまったりしたそうだ。

 

ここでお母さんからラインが入った。

「この無視いつまで続ければいいのですか?」と

 

私は

頃合いを見て、謝るきっかけをつくってやり、

「なんか言うことあるんじゃない?」と聞いてみたら?

子どもから言葉が出ない時はヒントを与え

「ごめんなさい!」と、謝る言葉を引き出すように誘導するけど、

謝ったからといって、「ちゃんと謝れたね。」などと褒めたりしないで

「みんなに嫌な思いをさせることはもうやらないでね。」というだけにしては?

と返信した。

 

 

結果報告のラインによれば

 

息子が何か言いたそうに、お母さんの周りをウロウロし始めた時

謝るきっけを作ってやり、「ごめんなさい。」を引き出したそうだ。

涙目で謝り、泣きながらお風呂に向かったそうだ。

 

翌日、息子は晴れ晴れした顔で家族に寄って行き、

笑顔を返されてれてうれしそうにし、テキパキ行動したとか。

 

 

見捨てられ不安逆利用は何度も使える手ではない。

何度も使うと逆効果になり、

本当見捨てられたと絶望感を植え付けてしまいかねないから。

 だから、ここぞと言いう時に効果的に使うことが肝要だ。

 

 

 

 

見捨てられ不安を逆利用することは

 

何をやっても最後は許される。

見捨てられない。

自分は特別な存在だ。

自分が一番、自己中心の精神年齢から

自分は特別な存在ではなく、

集団の一員、社会の一員であるということを

分からせていく劇薬でもある。

 

 

劇薬なので何度も使えないが、使う時は確実な効果を狙いたい。

 

 

見捨てられ不安の逆利用

ADHD傾向の子どもには逆効果のこともある。

 

素直に「ごめんなさい!」の一言がなかなか言えない。

無視されたと感じるとかえってふてくされて

依怙地になったり、無視を悪意に受け止めたりするからだ。

 

注意や指示に素直に従いたくない

ADHD男児には別の対応が必要だ。

 

 

 

 次回に・・・

 

 

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シェリーですが、なにか?