自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

対人格差

 自閉症は人間に関心がなさそうで、人間関係を作りにくいように思われがちですが、

どっこい、人を見る目は長けているのです。

 

相手の能力とか長所とかではなく、相手の本質を見るのです。

 

自閉症はその相手が自分にとってどういう存在か、直観的に判断します。

 

自分にとってメリットのある存在か。

自分の要求を無条件に受け入れてくれる存在か。

自分のわがままが通る、格下の存在か。

なめてかかっても怒らない優しいだけの存在か。

 

 彼らは自分の中で密かに、周りの人間を順序付けしていることがあります。

 

お父さん、お母さんではなく、お兄ちゃんが1番という家もありましたよ。

お母さんは愛してくれるけど、時々自分のエゴの方が強くでることもあるから。

 

 彼らは価値観を押し付けてくるだけの人は本能的に避けます。

 金持ちだとか、学歴がだとかは関係ありません。

 本当に自分に真剣に向かい合ってくれる人はちゃんと受け入れます。

 <本気さ>だけが彼らに通じるのです。

 

 そして、戦って負けたわけではないけれど、自分のボスだと認めた存在にはガラッと態度を変えます。

 なめてかかっている人には騒いで拒否していたのに、ボスが言っただけでコロッと従ってしまう場面はよくみられることです。

 

 自閉症は人をよく見ていて、人によって態度を使い分ける、という話は療育現場にいる人から良く耳にする話で、彼らの対人格差の能力はあまりよく言われません。

 

 しかし、人を見る目の無条件の例外もあります。

彼らは若い女の人が好き。

しかも美人であればまちがいなし。

髪が長ければなおよし。

 

 

 療育していた頃もありました。

 

 療育が終わって出口まで見送ろうかな、と私が手をつなごうと手を差し出すと、子どもは近くにいる若いスタッフの方に手を差し出すのです。

 

 正直と言えば正直ですが、憎らしいじゃありませんか!

 

 確かスタッフ仲間では私が一番の年配のおばさんではありましたが。

 

自閉症の対人格差は分かりやすいし、彼らの気持ちの表れでもありますね。

 

対人格差は場面格差と共通します。(空気を読まないどころではありません。)

 

療育中、あるお母さんが言っていました。

自分の自閉症息子は療育の成果で、場面に合わせてきちんとした態度、行動もとれるようになってきているし、自分のことは自分でやれる。

 

なのに、ある施設に預けると、まったく初期自閉症に戻ってしまう。

何なのこの違い、びっくりしてしまった、と。

 

 その施設では自閉症とはそういう行動、態度をとるものだからひたすら受容しよう、という方針だったんじゃないですか?

それで子どもも空気を読んで、自閉症らしく振舞おうとしたのでは?

 

自閉症は、自我・主体性が育ちにくい分、周りの人・環境にによって大きく左右され影響を受けて成長するということでもありますね。

 

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カレンダー少年

  自閉症が自分のメリットに合致した時だけ発揮する、尋常ではない 能力。

他にもありますね、数字にやたら強いとか。

 

 映画「レインマン」や小説「ミレニアム」にも出てくるので、自閉症は数字に強いというイメージを持たれるかもしれないが、それはごく一部。

 

とはいえ、自閉症の特質の一つには違いないですね。

こばとで500人以上療育しましたが、カレンダー少年・少女は何人もいました。

 

(しかし、数字に強いことは何のメリットに合致するんだろう? 記憶と結びつけ易いということかな?と勝手に解釈。)

 

 彼らが「先生の誕生日は何日?」などと聞いてきたら、まともに答えないようにしていました。

適当にごまかして。

 

 うっかり教えようものなら、ばっちりインプットされて後々、ことあるごとに開示されてしまうからです。

 

 数字に強い自閉症男子。

 彼は幼児からこばとの療育に通い、中学の特学(現在の支援級)と養護学校高等部(現在の支援高校)の時は社会トレーニングに参加しました。

 イントネーションはちょっと変でしたが言葉はあり。

 

 しかし自閉症状が強く、次から次とこだわりが出て、お母さんはいつも悩みを抱え、トラブル発生するたび、電話をかけてきました。

 

 その一つ。

 ひとりで通学できるようになったは良かったのだが、数字の強さがあだになった。

 

 彼は通学の登下校中、看板などに書いてある電話番号を覚え、家に帰ってからその電話番号に電話をかけるという。

 

かけて相手が出ると何も言わないでガチャンと切ってしまう。

 

彼は電話がつながったことを単純に喜んでいる。

 

お母さんは慌てて「間違いました!!.」と謝ったり、電話を掛けさせないようにするのに疲れてしまう、と嘆いていました。

 

そうこうしているうちに電話番号のブームは去りました。

 

今、30代の彼は数字の強さを生かした適職(テーマパークのコスチュームのサイズの仕分け)についています。

ベテランなので定年までいてくれと言われているとか。

 

趣味が同じ鉄ちゃん系のガールフレンドもいるそうな。

 

彼は今も自分の予定や気になる過去について確認したい時、メールをこばとのパソコンに送ってる。

 

それはいいのだが、平成元年に開始したこばとの療育の場所や、自分と同じ頃に通っていた子の名前を聞いてくる。

知っているくせに。

 

自分の就労年数祝や誕生日、両親の誕生祝の予定もメールしてくる。サンタさんは何歳まで来るのか気にしていた。30歳をすぎて踏ん切りがついたようだ。

 

私はいつもお仕事頑張ってね、と返信メールしている。

 

自閉症の世界 

天才ウェイター

 自閉症児は幼少期、不器用だとか動作がぎこちないだとか言われがちです。

 

確かに、園の発表会や運動会のお遊戯をみると肯定せざるを得ないかも。

 

模倣する気もなくただ突っ立っているだけ、その場にいるだけでも〇。

模倣しても、数テンポ遅れてあいまいな動き、やる気のなさそうな動き。

 

でも、これが彼らのすべて動きの本質、と思われるのはちょっと心外です。

 

 模倣できない、とか模倣する意思がないとか言われますが、彼らにとっては模倣するメリット、機敏にするメリットはない時はだらけた動きになりやすい。

 

 自分の要求やメリットとずれたことを指示されても、やる気は出ないのは彼らの正直な気持ちの表れ、と言えなくありません。

 

 しかし、自分のやりたいことをやる時はぎこちなさなど微塵も感じさせないバランスのとれた動き、素早い動作をみせてくれます。

 

自分でやりたい動作

 

新体操のようにひもをくるくるまわす。

目を回すことなく、くるくる自転する。物を回すのもうまい。

体勢を崩さすピョンピョンいくらでも跳ぶ。

体をくねらせても、エビぞりしても倒れない。

中には、自分の指先に垂らした唾を、カメレオンの舌なみに、目的物に向かって吹き飛ばす重度自閉症児もいて・・・。

 

 

驚嘆した思い出があります。

 

幼児のみの夏合宿をやった時のことです。

合宿の目的は集団の動きについてくる、そして待つ練習です。

 

 参加幼児のひとり、自閉症重めの4歳男子。

小太りながら動きは俊敏。多動。発語はないけど、こけし人形のような丸顔でカワイイ憎めない子。

昼間の活動はまずまず参加でき、初めての宿舎のお風呂にも入ることができた。

 食事は偏食、太っている割には食べなかった。

問題は就寝。

夜になっても家に帰れない、と分かった時から泣きだし、つきっきりであやしても泣き止まない。

おんぶするには重すぎる。

他の子も心細い思いでいるので、彼の泣きに感応してはまずい。

私はベット部屋から彼を連れ出し、階下のロビーに連れて行きました。

ソファで落ち着かせようとしましたが、泣き止む気配がみられない。

 

 ロビーには自販機があり、彼の好きなオロナミンCも売っていました。

私はオロナミンCを買い、キャップを開けて彼に持たせました。

 

 彼は遠慮なく受け取りましたが、手に持っているだけで飲もうとしません。

しかも、彼はオロナミンCを持ったままソファに寝転びました。

まずいな、

しかし、ソファは合成皮だし零したら拭けばよいと、そのままにさせていました。

彼はオロナミンCを手に持ったまま、寝ころんだり寝返りしたりしながら泣きぐずり、続けていました。

 

私は驚嘆しました。

寝転んでいるのにオロナミンCを1滴もこぼさないのです。

 

日付が変わろうとする頃、さすがに彼も観念してベット部屋に戻り、オロナミンCも飲んで、たちまち寝落ちしました。

 

天才ウェイターなんじゃないか!!

 

その時の彼の姿が驚嘆の思いと一緒にいまだ脳裏に焼き付いています。

(自分で言うのもなんですが、映像記憶はいい方なんです。)

 

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目的まで一直線

 大昔の人類には備わっていたであろう、

  通った、通るべき道の記憶、

  上空から見たわけでもないのに的確な空間認識を

自閉症の子ども達は脈々と受け継いでいるように思いますね。

 

 物質や技術に頼りすぎている現代人より、研ぎ澄まされた感覚を温存している感じ。

 

道の話はありすぎて・・・。

 

 小学2年の軽度ではあるが、グレーではない自閉症男子。

数字系に強く普通級に在籍していました。

遠方でしたが、こばとの療育にはお父さんが車で送迎。

帰りはこばとの教室から少し離れたところに車を止めて、お父さんが待っている、というパターンで進めてきていました。

 

 その日もいつも通り2時間の療育を終えて、約束の時間通りにスタッフは彼を送りだしました。

まだ携帯で連絡を取り合っていなかった時代です。

 お父さんはいつも教室の入り口からは見えない角に車を止めている。

その日も来ていると思って帰したのです。

しばらくしてお父さんが「息子がまだ来ないが・・・」と言ってきました。

スタッフ「えっ、もう出しましたよ。」

お父さん「ちょっと着くのが遅れたんです。」

それからお父さんは車で探してみると車に戻りました。

 

 私も他の子ども達の手前、表面上は冷静にしていましたが、人心地ゼロ。

療育は終わり、日も暮れ、子ども達と若いスタッフは帰りました。

 

 電話の傍を離れずお父さんと連絡を取り合いましたが、男子は見つからず、ついに県警に捜索を依頼しました。

 私服警官が数人来て事情を聴いて行きました。

お父さんは取りあえず家に向かいました。

 

家までは15km程。車以外で療育に来たことはない。

 

夜、9時過ぎ頃お父さんが家に着くと息子は帰っていた!!!。

「ただいまぁ~」と何事もなかったように帰って来たそうだ。

アイスクリームを食べていた。

 

 3時過ぎにこばとの教室を出た彼は、車もお父さんもいなかったので、待つこともせず、困ったとも思わず、車で来た道をそのまま辿って、家路に向かったのだろう。

 

お父さんがいなくて、どうしよう、と思わなかったところが自閉症らしいけど。

 

それにしても疲れた様子も見えなかったとは。

太古、人類はそのように大陸を移動していたんだろうなぁ。

 

自閉症の世界



ただ一度の道

 自閉症は幼児期の頃、<はるかな記憶>を色濃く残しているせいか、一度通った道の記憶は抜群です。

 

 いつも通っている道を、今日はちょっと用事がある交差点を右じゃなっくて、左にしよう、とするとはげ激しい抵抗にあう。

 

 今日は用事があるから・・、この道を通っても帰れるんだから・・、と言いきかせても大声で泣き叫ぶ。

 「なんで、そこまでぇ~。」げっそりしてため息しか出なくなります。

 

 車で通っていても、いつもと違う方向にハンドルを切ったりすると、突然後ろの座席から、「ぎゃぁ~。」と叫び声が響きます。

車で通っている道だから覚えていないだろう、と思うのは甘いです。

 

 彼らは何かしらのマークや目印をきっちりインプットしていて、しっかり確認しながら乗っているのです。自分の記憶しか信用しないその態度・・・。

 

 彼らのチェック能力は驚くべきものがあります。よくそんなマークに気づいたねェ~と感心するばかりです。

  

 療育中、お母さんからため息と不安まじりに聞かされた話があります。

 

 小学校低学年の息子は自閉症状重めの小太り男子。

とてもおとなしい子で多動もありません。発語は簡単な単語が少々。

  

 その彼がある朝いなくなった、というのです。

部屋に見に行た時はもぬけの殻だった。

 

 誰も出て行くところを見ていない

神隠しにあったようで、どこを探したらいいのか見当もつかない。

お母さん、お父さん、お兄ちゃんはとりあえず近所中を探して歩いた。

 

 近所を探して小一時間立つ頃に、学校友達の家から電話があった。

[Kちゃんがきているよ。パジャマ姿で。」と。

 

 家族はほっとすると同時に驚愕した。

その友達の家というのは、けっこうの距離で信号をいくつも越えていく。

車でしか行ったことがない。

 

 以前一度だけ、その家に車で行っておじゃまして遊ばせてもらった。

その時、おやつをいただいたことがあった。

 

 Kちゃんは、朝起きると、その友達の家でおやつを食べたことがぱっと頭に浮かんだのかもしれない。夢で見たのかもしれない。そして行きたくなったのだ。

 

一人で外を歩いたことなどないのに、よくぞ信号を無事に渡って行ったものだ。

まだ、信号を見る練習はしておらず。赤は止まれ、青は進めもわかっていなかった。

 

 お母さんは、喜びと、驚きをまじえて話してくれ「運が良かった、守られていた。」と<奇跡的な一人歩き>をそう締めくくりました

 

 私も無事を喜びましたが、有り得ることだとも思いました。

道の記憶、空間認識は並ではない。

それに、自閉症の子は見ていないようで、目の端で見ているので、車をうまく避けていたんだろうな。

 

 道にまつわる話は一回で収まらないので、次回続きを。

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はるかな記憶

  水遊びは好きなのに、顔に水がかかるのを極端に嫌う自閉症児もいます。

けっこう多いです。

 

自分の両手を御椀にして、水をため、顔につけるなどとてもとても。

顔を洗わせるは毎回バトル。なので、きつく絞ったタオルで手早く拭くだけでもOKという家も多い。

 療育中、教室の流し場で顔を洗う練習もしました。

 

 シャンプー後、シャワーで髪の泡を流すのはとんでもなく大仕事。

絶叫が風呂場に響きわたることは想像に難くないのです。

 

床屋もそうですが、シャンプー克服も療育の主要な目的。 

 療育中、幼児も保護者の付添なしで、一泊二日の夏合宿に連れて行きました。

理由の一つは、お風呂の自立。

思春期にさしかかる10歳までには、一人で風呂に入り体を洗い、髪の毛をシャンプーしシャワーで流して出てくる、ということを目標にしていたので。

 

 ここで疑問。人間という種族はいつからお風呂に入るようになったんだろう?

とても文明的な風習・・・。

 

ところで、

 顔に水がかかるのはあれほど嫌がるのに高い所は平気、という自閉症児もいます。

けっこう多いです。

 

 冷蔵庫の上に登りたがったり、タンスの上の隙間に入りたがったり。

こばとの療育を始める前に勤務した特殊学級(今の支援学級)にもいました。

 

 太目で、自閉の症状は重度の男児

動きが鈍重そうに見えるのですが、ジャングルジムをスルスルのぼり、てっぺんで両手をはなして仁王立ちしたりしていました。

 こういう時は「危ない!!」などと、大きな声は掛けない方がいいのです。

何気ない声で、「教室に戻ろう。」とか言うのがベストアンサー。

 

 公的通園施設で、慌てて大声で注意して事故になったケースがありました。

 こばとの療育に通い始めたばかりの、自閉症状重めの男児(これがまた超美形)

 

 通っていた通園施設で、彼は天窓のある高い所に登っていたそうだが、担当者が驚いて大きな声で呼んだので、彼は天窓から外に逃げ出して転落。2階だった。

 頭に大怪我をして大騒ぎになり、こばとの療育を休むと連絡がありました。

1か月後,彼は後遺症もなく、再びこばとの療育に通い出した。運の強い子!!

 

 海外から帰国した言葉のない重度自閉症男児は、お父さんの勤務地のシンガポールでの出来事。

マンションの7階だかのベランダの手すりを立って歩いたとかで、即刻帰国になったそうな。

 

 高い所は平気、むしろ好き、は自閉男子に限りません。

 

幼稚園に通っていた、言葉のない多動系重度の美少女はブランコが大好き。

 自由遊びの時間はいつもブランコに乗り、最大限まで、地面と平行になるほど自分でこぎあげていました。(私は幼稚園に見学に行ってそれを確かめています。)

 

それが、ある日、最大高にこぎあげた高さから手を滑らせて落ちてしまった。

もちろん、大騒ぎになったがけがはなかった。こちらも運の強い子!!

その後も何事もなかったように平気でブランコに乗っていた。

恐怖体験では全然なかった。

 

 彼女は今でも美少女だが、高い所は平気で、ジェットコースターも大好き。

 

 自閉症児の脳には、樹上のような高い所は平気、でも水は怖い、という古い古い記憶が沈殿しているのだろうか・・・とたまに思う。

 

 確かに野生の生活であれば、手づかみで食べようが、裸足であるこうがそんなことは障がいではなくなってしまう。敏感な耳、臭いをかぎ分ける鼻、動くものを見分ける目があればなんとかなる。

 

 なんか、生まれた時代をまちがえたかなぁ~、なんて思わぬでもない。

 

 

自閉症の世界

 

エネルギーの通り道

自閉症の特徴的行動

 手のひらを目の前にかざしてひらひらやる。

 自分でくるくる回り、目は斜め上を見る。

 手走り(手を叩きながらつんのめるように1mぐらい走る)

などは見ている方もそのあまりの規則性に、その動きをとめるより、思わずにやけてしまうほどです。

 

しかし、心を痛めてしまうのは彼らの自傷行為、自己刺激です。

止めれば意地になってやることもあるので,無視しようと思う時もありますが、心が痛み、無視できるものではありません。

 

 頭突き、あご叩き、頭頂部の抜毛。手首噛み。(同じところばかり噛むので毛が生えてくるほど。手首というより歯に刺激を与えている感じ。)

 

前歯を固い物でカチカチ叩く。胸をバシバシ、ゴリラのドラミングのように叩く。

胸をつねる。服をめくって見ると、点々と小豆粒のような跡がついている。目の涙腺のあたりに指を突っ込む。

 

パニック、泣き喚き、奇声のように、外に向かって発散できない負の感情は自分に向かって攻撃、という形をとるのかもしれない。

自傷の場所は負の感情の出口なのかも。

 

 これらの自傷の場所は体の正中線にそっていることが多いような。チャクラのあるところに一致するような気がする。

 

 療育を始めたばかりの頃、ある有名な療育機関が我が市の体育施設を借りて、ダイナミックリズムという集団療育を実施しました。

 大勢の障がい児、団体が参加。体育館はほぼ一杯。

 

 そこにかって勤務した特殊学校(現在の支援学級)の教え子も参加するというので、私も見に行きました。

 

私は開始前、彼の近くに行き、「今日はピョンピョン跳んだり、走ったりしないできちんと参加してね。」と言いました。

 

 彼は指導者の指示に従った行動をとり、集団や列を逸脱することもなく、最後まできちんとできました。

 元の席に戻り、終わりのあいさつ聞いて終了。

 

 私は彼の傍に近寄り、「終わったからもう好きに動いてもいいよ。」と言いました。とたんに彼は椅子から飛び上がり、走ってピョンピョン跳び。

 

しばらくして,彼は私の居る場所に戻り、こう言いました、

「あぁ、すっきりした!!」と。

そうなんだ。

 

 負のエネルギーはピョンピョン跳んで放出するんだ。

それにしても普段はたどたどしい簡単な発語しかないのに、すごくまともなしゃべり方だった。

 本気の時はするっと言葉がでるんだね。

 

追記

 療育中のこと。

 小学高学年自閉症状重め男子、身長は私より高く、がっちりしたガタイ。発語は簡単な受け答え&オウム返し。

 療育を終えて見送りしようとしていた時、彼が私に抱きつこうとしたので、さっと身をかわしました。

 その時、彼は「うまくいかねぇな。」とすらっと言ったのです。すごくまともに。

  

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LGBT

 自閉症は宇宙人みたいな言われ方をした時期もありまね。

 

 呼んでも振り向かない。人と関わろうとしない。

 ぶつぶつと独り言をいう。特定のものにこだわる。

 手をひらひらさせたり、くるくる回ったり、ピョンピョン跳ぶ。

 空を斜め見してまるで宇宙と交信してしている雰囲気!

 

 取りつく島も見つけられない、原因や対応が二転三転したことも。

 

 でも、彼らは自閉症である以外の個性の部分を色々もっているんです。

 

 緑や紫が好きな子、棒や丸い形状が好きな子、きらきら物が好きな子。

ビーズ通しをさせると、男子であっても暖色系の色、ピンク系の色を好む子もいます。

 

 16,7年くらい前の話になりますが 、4歳の男児とその両親が我がこばとにやって来ました。療育を希望して。

 

 聞けば発達の遅れが気になって、公的機関で診断をしてもらったところ、自閉傾向があるのと、知的障害があるので普通級は絶対無理だと言われた。それではどうすればいいのか、を聞きたかったのだがそれはなかった、そうだ。

 

 男の子は服を違えれば女の子に見えるだろう、と思うカワイイ顔をしていました。弟がいましたが、弟はどこから見ても男顔でした。

 

 療育を開始すると、自閉性はほとんどなく、むしろシャイでした。素直な子でしたが、知的にはつまずくものが多く特に数字系が伸び悩みました。

 

 しかし、性格はまじめで頑張り屋だったので普通級に進みました。療育でも早め早めに学校の学習の予習をしてあげたので、成績はまずまず。一方、学力テストのような初物、前もって覚えていないものはガクンと点数が落ちました。

 

 5年生になった時、ご両親は中学を受験させたくて療育をやめ、塾に移りました。

受験には失敗しましたが、その後地域の中学、高校と普通クラスで進みました。

 

 彼が高校3年の時です。ご両親から相談したい旨連絡がありました。

会う約束をし,やってきたご両親は、幼児の時に知的障害を宣告された時以上にショックを受けたような顔をしていました。

 

 相談というのは、息子が学校が終わると女装してい遊んでいる。彼の部屋からも女装グッツを見つけた、と言う内容。

 

 両親は愕然、唖然のあまり、彼を叱責する前に私にまず相談しようと思って連絡した、と言うのです。

 

 私はご両親の話をじっくり聞いた後、言いました。

「彼にそのような嗜好があるなら、無理やりやめさせようとしても、逆効果になるだろうから事実を認めた方が・・・・」、ご両親「認めた方がいいですか・・・・」

 

私は彼にも会いたいと言いました。

彼が会いに来ました。

 

 私は彼に言いました。

「高校時代にあまり問題になっても、自分に不利益になるから少し控えた方が。大学に行けばもっと自由度もあがるから・・・。」

 彼も「分かった。」と言って帰って行きました。

 

 彼は大学に入って、しばらくしてから私に報告がてら会いに来ました。

 

 ピンク系のシャツがかなり似合うイケメン男子になっていた。

何か吹っ切れたようなすっきりした雰囲気を醸し出していたので、私は頑張って乗り越えたことを褒めました。

 

 それからまた1年ぐらいして、美しい夜景のはがきが彼から来ました。

一人で香港に旅行をして、自分で撮った写真で作ったはがきだと書いてありました。

 

写真はなかなかの腕前。

彼はきっと素敵な大人になるだろうな。

 

写真はがきを見ながら誰かに自慢したくなったのを覚えています。

 

自閉症の世界

 

身の危険

 前回は自閉症は自分にメリットがある時は空気を読むし、意識も高い、などとちょっと意地悪な見方を書いてしまいました。

 

 いつもいつもそうではない、ということを彼らの名誉のために弁護しておかなければ ・・・。

 

 メリットがなくとも意識が高くなり、真剣・本気度が上がり、周りの空気もしっかり読むふ・つ・うの彼らもいるのです。

 

 13名のスタッフで、小学4年から6年の重度から軽度の自閉症状の男女児童30数名を2泊3日の夏季合宿に連れて行った時のことです。

 

 合宿の準備は半年以上も前に計画し、下見をして安全を確認、1か月前には活動のスケジュールを書いた<合宿のしおり>を参加児童に配布。

活動毎の必要物資も準備、配送業者に手配。

前日はスタッフ全員で細部の打ち合わせ。

 

 療育の総決算のつもりで、私とスタッフは気合を入れ、子ども達と保護者は期待を込めて合宿出発当日を迎えます。

 

 あの年は出発前日から台風接近が報道されていました。

集合場所の駅に大きなリュックを背負った子ども達と見送りの家族が大集合。

並んで出発の挨拶をした時は、目指す目的地あたりが台風の直撃を受ける恐れがありそうな気象予報になっていました。

 

しかし、我々一行は予約の特急電車に乗り、目的の駅で電車を降りて、マザー牧場行の貸切バスに乗り換えました。

 バスはくねくねとした山道をのぼり、山頂にあるマザー牧場に到着した時は、霧で視界は真っ白。雨も横殴りに降っていました。

 

 私はバスの中で、「災害時の避難訓練だと思って気合を入れて!」とスタッフに檄を飛ばし、子ども達には持参の雨合羽を着るように言いまいた。

 そして、歩くときは決して列から離れないように、前の人の後ろに続いて歩くように念をおしました。たぶん、必死の顔だったかも。

 

 牧場スタッフが待っていた受付ゲート通り、そこで傘も借りて、スケジュール通りの活動に移りました。

雨と霧で視界の1メートル先は真っ白。

 しかし、かっぱとかさの集団は一丸となって、一糸乱れぬ列となって山道を移動しました。騒いだり、泣いたりする子はなし。

 

 山頂のレストランで予約していたカレーを食べ、施設内でスタッフ誘導のもとトイレも完了。

 次はお目当てのアグロドームに移動。悪天候でお客はぱらぱら。我々合宿集団は中央席に陣取り、最後の羊の毛刈りまで間近で見物。お客が少なかったので,羊の刈り上げた毛までプレゼントされました。

 

 ドームを出た後は数名ずつまとまって屋外トイレ。

その後トロッコ列車で山頂を一周し、牧場の入り口近くに戻り、カフェで予約の名物ブルーベリーのアイスを食べました。

 

 この30数人の小学生の一団は障がい児の集団で、その中には重度の自閉症児が何人もいたなんて誰が気付いただろう。(お客は少なかったが・・・)

 

 帰る頃には台風も通り過ぎたようで、雨も小降りになり、傘も返しました。

 

 子ども達は笑顔で、スタッフはほっとして貸し切りバスに乗り込み、宿泊所の少年自然の家に向かいました。

 

子ども達はみんな本気、真剣、気合の空気を読んでいた。普通に出来た。

 

 いい災害時訓練になった。

 これは私が個人的に運営していた療育施設だからできたこと。公的施設だったらきっとストップがかかったろうな。

 

 

自閉症の世界

 

KY

    ひと頃,KYという<はやり言葉>よく聞きましたね。

「あいつ、KYだから。」なんて・・・。

 

  最近はとんと聞かないですね。KYだらけになって、気にならなくなったのかなぁ。スマホいじってるからKYなんてどうでもいいや!ってとこかな。

 

 KYという言葉が流行中の頃、私は世の中自閉症化(そういえば一億総白痴化なんて言葉もありましたね。)してきているんじゃないかと本気で危惧して、それはいまだくすぶり続けています。

 

 ところで空気を読まない筆頭、と言ったらすぐに自閉症を思い浮かべる人もいるのでは・・?。ちょっと待って!!。

 

 確かに彼らは<場の空気>を読むのは苦手、他人の気持ちは忖度しない。

しかし、自分のメリットに関わることに対しては、空気を読みすぎる、察知が早すぎる、動物的感知、センサーを持っているのです。

 

 そんな場面をたびたび目撃しました。

 

 目撃の一つ、これも補助教員・講師として「言葉の教室」に1年間勤務していた時のことです。

「言葉の教室」の隣には支援学級(昔は特殊学級)のクラスがあり、10数人の障がい児が在籍していて、2人の先生が担任していました。

 

 私も言語訓練の入っていない時間は支援学級に顔を出し、子ども達の補助。

その中に5年生の自閉症状重めの、発語もほとんどない男子がいました。

 

 食べる割に体も痩せていて、体の動きもスローで、カクカクした感じでした。

彼は体育そのものより体育館のマットに寝転んで天井を見上げているのが好きでした。

 

 でも、休み時間など黙って勝手に体育館に行ってしまうので、二人の担任の先生は困っていました。他の子も見なければいけないし。

 

 休み時間に子ども達が教室や廊下で自由に遊んでいる時は、二人の先生と私は入れ替わり立ち代わり、教室と廊下を見ていました。彼を見張っているという様子は気付かれないように。

 彼も廊下の窓際をぶらぶらと行ったり来たりして、体育館に行きたい素振りはちらりとも見せません。

 

 ところが、3人の大人の目が同時に彼から離れた時がありました。

「あっ。」と思って廊下を見た時はもう彼の姿はなし。そのことを2人の先生に知らせて、私は大股で体育館に向かいました。(廊下は走ってはいけないので)

 

いました。彼はすでにマットの上に寝そべっていました。

 

 私は気が付いて、すぐに大股で体育館に来たのだから・・・

そんなに時間はたっていないはず。

 

 彼は3人の大人の目が同時に離れたその一瞬を見逃さず、素早く行動。もしかしたら小走りで体育館に来たのかもしれない。

 スローな動き方をする男子なのに、同一人物とは思えない素早い行動。

 

 自閉症は、空気読まないどころか、自分にメリットのある時は空気読みすぎ、素早く察知・・・です。

 

 確かに、自分にメリットがない時に空気読んだって、何ぼにもならないしなぁ・・。

自分に正直と言えば正直、分かりやすいな。

  

自閉症の世界

 

赤面

 自閉症は他人にどう見られているか、

気がつかない、気にならない、気にしない症状、特性を持つので、

 

平気で人前で鼻くそをほじくったり、それを口に入れる。

傷口に出来た瘡蓋をはがし、食べようとすることもやってしまいます。

 

 きれいと汚いの区別も定かでないので、汚れた指をしゃぶったり、食べものではない物、輪ゴムや紙や紐をくちゃくちゃ口の中で噛んでいる子にもしばしば出会います。

 

しかし、心の汚れにも鈍感かなというと、そうではない感じもします。

 

 私が個人で療育センターを立ち上げる前、補助教員・講師として支援学級(昔は特殊学級)の担任をやったことがありました。

 

 引き継いだ児童数は7人。

その中に重度の自閉症男子(ともに2年生)がいました。

1名は裸足でどこへでも行ってしまい目の離せない、目元パッチリも美形男子。

もう一名はその場にしゃがんであまり動かない色白の面長男子。

 

 学習を授業にきっちり取り入れて、休み時間も児童からは目を離さず進めていくうち美形男子の多動はは収まり、着席は続くようになりました。

しかし、認知の伸びは遅々たるもので知的障害は大。

 

 一方、色白男子の方はカレンダー少年ということが判明。

学習の吸収スピードも速く、行動面でも活発になっていきました。

 

 学級もだいぶ落ち着き、少し離れて見守っていても大丈夫になった頃の業間休み。

2人の姿が見えなくなったので、大急ぎで校庭の周辺を走って探し回りました。

  

教職員用の駐車場にふたりはいました。

 

美形男子が1台の車のボンネットに乗っていました。

「何やってるの!」私は声を荒げて駆け寄りました。

 

 おかしい。美形男子が自分からボンネットにのぼるはずがない。

そこで、傍にいた色白男子に向かって、

「君が登れと言ったんでしょう!!」と問い詰めました。

彼は違うと言いながら、顔は見る見るうちに真っ赤になりました。

色白なのでなおさら・・・

 

悪事がばれた!という表情そのものでした。

 

 学級での勉強が進むにつれて、色白男児は美形男児より自分の方ができる、優位だとわかってきた。

美形男児は自分より下。自分で判断できず、言われたことに黙って従うことに気が付いてしまった。面白い。優越感を感じる。

 

誰もいない所で悪さをやってみようとした、それがばれた。

 

私は赤面したことに驚きました。

 

色白男児も人前で平気で鼻くそほじる自閉症児でしたが、

人にばれたことで赤面するのとは別物なんだなぁ。

 

自分一人だけのことは平気だけど、他人が絡むときは結構動揺するんだ。

 

自閉症の世界

 

たすけて!

 自閉症

自己中、要求は半端ない、空気を読まず場に合わないことでも平気でする。

相手、他人の気持ちを読まない・・・・

などマイナスイメージ、ネガティブイメージを持たれがちですが、彼らの内面は繊細、敏感という側面もあるのです。

 

 私も心底驚き、言葉を失った出来事がありました。

 

 療育を初めて5,6年もたたない頃、公的機関で知的障害、自閉傾向などと診断された多くの幼児が、我がこばとの療育を希望してくるようになりました。その当時は公的機関では育て方まで細かくフォローしていなかったので。

 

 若いお母さん方も多くいました。

 

 金髪に近いほど髪を染めた若いお母さんが、自閉傾向と診断された長男を連れてこばとに来ました。

 保育園の年長さん。言葉はありませんでしたが、対人関係や指示の理解は良好で、下に弟がいましたが、その接し方も悪くありませんでした。

 

 お母さんは子供の障がいも気にはなるが、夫婦仲も悪くケンカが絶えなくて、子供に十分気を使ってやれない、とも言っていました。

 

 長男の自閉の症状はあまり強くなく、面接の翌週から療育を始めました。

 

 3回目の療育の時だったか、お母さんは連絡帳にではなく、私と会うなり深刻な顔で話しかけてきました。

 

 夜、夫婦喧嘩が始まり、エスカレートして大ゲンカになってしまった。

 気が付くと長男がいなくなっていた。あちこち探しまわったが見つからない。

駅の近くに住んでいたので、すがる思いで駅近の交番に行った。

 

 子どもは交番にいた。

おまわりさんの言うことには、子供がひとりで交番に来た、という話だった。

 

 お母さんはほっとして子供を引き取ったが、喜びより"一人で来た”という話につなぐ言葉が出なかったそうだ。

 

 私もその話を聞いて、唖然としてしばらく言葉が出ませんでした。

 

 子どもは交番がある場所を知っていて、そこが何をする所(人を助けてくれる所)かも知っていた。

 両親の大ゲンカを止めてくれるよう助けを求めにいった、のではなかろうか?

 

 話を聞いた私は、「まさか、というより有り得るね。」という感想をお母さんと共有しました。

 

 若い夫婦はその後離婚し、療育にも来なくなりました。

  

 彼はどうなったかなぁ、もう30代のはず、障害があってもきっと母親の支えなっているだろう、と想像している。

 

 

自閉症の世界



 

ハグ療法


  前回,ファーストハグについて書きましたが、ハグという行為にはなんか、<言葉>ではできない効能がありますね。

 世界中の人がハグを言葉の代わりに親愛・信頼の証として表現しているし。

 

療育中、自閉症児の困った他害行動の改善にハグが効を奏したケースがありました。

 

若いお母さんが連れて来たのは 幼稚園の年中組に通っている自閉症男児

 発語はわずかでしたが、体格良く大きい子。

 目線もよく合うし、人との関わりを嫌がる様子はなし。むしろ、人懐っこいタイプ。

 

彼には二つ違いの弟がいて、初回の面談時にはバギーに乗せられて一緒に来ました。

 

お母さんが一番困っていて、何とかしてほしいと訴えてきたのは自閉症の長男の他害行為でした。

 

 始めはお母さんに対して叩くだけだったのが、今では誰彼なく叩く。それが結構の強さで痛い。

 

買い物でスーパーに行っても、すれ違ったお客さんを叩いてしまう。息子を叱りながらお客さんにも平謝り。どんなに怒ってもやめないし、買い物にも行かないわけにはいかない。ほとほと困り果てている。

 

療育を開始しました。

やっぱり彼はスタッフをも叩いてきました。

 

スタッフは療育の前に、叩いて来ても抱きしめることにしよう、と申し合わせていました。

 

彼の<叩く>という他害行為は、たぶん自分を見て欲しいのサインだろうから。弟も生まれていることだし・・・

そして、彼は怒り顔の反応を期待しているだろうから、逆にそこはスルーしよう。

叩いてきたら、君のことも見ているよ、というように笑顔で抱きしめよう。

 

叩いてくるたび抱きしめて、違うことに気を向けさせました。

そうこうして1か月たったころには彼の叩きは消えていました。

 

ハグは効果大ですね。

 

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ファーストハグ


 つい先ごろ、発達障がいはトラウマを解消すれば精神年齢があがる、という一文を目にしました。

 

30年近い療育実践の中で、

 自閉症児はオキシトシン不足で不安感が強いから、ちょっとしかことがトラウマになっているんだろうなぁ、と考えさせられたことがしばしばありました。

 

 そして、自閉症のトラウマの場合、胎児期、出生前後、乳児期に起因することもあるんじゃないか・・・・と。

 

 今はもう立派な理数系社会人ですが、彼は幼稚園の年長になった時、療育を受けたいとやって来ました。一年後は小学生になるのでお母さんは焦っていました。

 

 自閉症状があるものの軽度で、イケメン候補のような美男子。

多動はなく、言葉も簡単な会話、目の前に見える物の質問なら可能。

目の前にない物、過去については答えられない。

しかし文字や数字は読める。

 

お母さんとしてはなんとか普通学級に入れたい。

しかし問題はえんぴつなど筆記用具は頑として持たない、持たせようとすると寝転んで騒ぐ、という話でした。

 

 面談の翌週から早速療育を開始しました。

自閉傾向はあるものの多動はなく、視覚認知も高く、着席も続きました。

 

 男子は母親には激しく抵抗したそうだが、療育スタッフにはなぜか素直。

指示に従って、渡されたえんぴつを持ちました。人を見るんですね。

 

 彼はえんぴつで書きはしました。が鉛筆の先端を指で隠すようにして、少し顔を背けながら書き練習をしました。

 

3回目も同様の態度だったので療育が終わった後、お母さんに

「何か、先端恐怖になるような経験がありましたか?」と聞きました。

 

 特に思い当たる節はないけど、出産直後に医療措置が必要で、抱く間もなく処置室に連れて行かれて、注射されたことがあった、と思うと言いました。

 

 ファーストハグをすることもなく、母親と分離させられたことは、彼の意識の中に不安、恐怖を感じさせたろうし、さらに尖った物がその意識を増幅させてトラウマになったのかも。

 

 彼はおとなしい方の男子ではあったけど、何か嫌なことや拒否したいことがあると、床に仰向けに寝転んで両手両足をばたつかせる。そして涙を出さずに、大きく口を開けて泣くという行動パターンでした。

 

 これって乳児の泣き方そっくりですよね。

 

          自閉症の世界 

言霊

 自閉症は表情の意味するところが理解できない、誤解、誤認する。

なので平気で相手の嫌がることをやったり、傷つけることを言ったりする。

嫌がる様子を面白がってやることさえあります。

 

 しかし、彼らは自分が傷つくことには敏感です。

言葉を十分に理解していないのに、悪口を言われたりすると反応にでます。

 

 あるお母さんが言っていました。

 彼女の親しい友達と電話している時に、気安さから日頃手のかかる息子の悪口を言って鬱憤を晴らしていた。隣の部屋から泣き声がするので覗いたら息子が泣いていて、見抜かれたようでバツが悪かったとか。

 

 保育園児のお母さんは息子の言葉の繰り返しに悩まされていました。

それは意味も分かっていないであろう「ばぁ~か」という単語でした。

 たぶん・・・保育園で言われたか聞いたか、した言葉あろうけど、家の中でも家族にむかって頻繁に使うので困る。

 しかもその言い方、イントネーション、タイミングが実にはまっていて、家族といえども心穏やかでいられない。

 何度もその言葉を言ってはいけないと言ったが、逆に強化したようだという。

 

 「それなら、その言葉に反応せず、聞かなかったことにして他のことに気をそらせて、その単語を忘れさせるようにしたらどうですか?」と私は言いました。

「ばぁ~か」の言葉の意味は分からなくとも、雰囲気はしっかり掴んでいるのです。

 

 こんな自閉症児もいました。

 自閉症状は重め、言葉は無く、多動ぎみ、あの悲しいたずらもよくするタイプ。

その支援学級2年生の男子が療育指導中の教室でいたずらする時、「ばちがい、ばちがい」と言うのです。

 

 言葉はほとんどない男子だったので、はじめは何を言ってるのかわかりませんでした。少しして、その教室で指導していたスタッフ3名が顔を見合わせて言いました。

 

「学校で言われているんじゃないの。」

 

 支援学級では一番重い方だったので、支援学級にいることが場違いなのか、いたずらが場違いなのか、たぶん級友は言わないだろうから,先生から言われたのかも。

 

 その男子は言葉の意味はわからなくても、仲間外れにされていうニュアンスは感じとれているようでした。

 

 言葉って、正確な意味以前に言葉の中に言霊のようなものがありますよね。自閉症の子ども達は、言葉の意味は分からなくとも言霊を感じ取れているのは確か。

 

 

歯磨きの意味は分からないけど歯磨き