自閉症にだっていろんな、複雑な気持ちがある。
でも、いかんせん、気持ちに合う言葉を自分で考えることが難しい。
さらにそれに見合う表情も作れないし、彼らの出すサインは解読しにくい。
しかし、幼児期に発語がなくとも、乏しい語彙であっても、周囲の大人のあきらめない努力と愛情、根気、忍耐の療育で予想せぬ感情表現手段を手に入れることがあります。
子どもの障がいの程度にもよりますが、認知発達学習も進み<文字の読み書き>できるようになると環境依存の感情表現がででくるのです。
言葉の新規作成は苦手なので、CMやアニメ、まんが本で聞いたり、読んだりして覚えたフレーズをそのまま使います。
療育中に子どもがこじゃれたフレーズを言うので、私は「すごーい!」と思っていると、若いスタッフはその時の流行ものをよく知っているので、「~の引用ですよ。」とあっさり切って捨てます。
・・・借り物にしても場に合ったフレーズだったよなァ。脳の言葉の引き出しにごちゃごちゃに入っている中から場面に合う近いセリフを探したんだ。・・・
こんなこともありました。
小学校6年生、自閉症中度の男子の学習指導をしていた時です。
彼は、就学前は言葉らしい言葉はありませんでした。
幸いなことに学習能力があり、6年生の時には簡単な会話ができ、アニメや漫画が大好きになって夢中でした。
その男子が何がきっかけだったか、「なんで勉強するの?」と聞いてきたのす。
私はここぞとばかり、社会人になって自立した生活をするためには勉強は必要なこと、と普通の言葉で、普通の6年生に話すように説教しました。
彼は神妙な顔で「バカなことをいっぱいしてきちゃったからなぁ。」と言いました。
私は絶句、あまりにもどんぴしゃの言い方。
後日、お母さんに彼が言った言葉を伝えました。
お母さんは「マンガのセリフですよ!」とこともなげに言いました。
借り物のセリフでも、その時の彼の気持ちに合うセリフだったと思う。
彼自身の気持ちをあらわす言葉。
<言葉の引き出し>から一発で探し出して当てはめて言ったんだ、すごいなぁ。