自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

腫れ物に触るように、

自閉症の症状でよく言われることですが、

 

 何事も自分ペース、自己中心。

 自分の気持ちには人一倍敏感で激しく主張。

 一方、相手の気持ちは読まない。

 「心の理論」が欠如しているのが自閉症だ。

 

家族は、幼児期の自閉症の泣き喚き、大声だしには悩まされる。

奇声、自傷、他害などの激しいアピールに晒され、さすがにストレスがたまる。

心が折れることもある。

奇声や泣き声が耳に残って、夜眠れなくなる。

大声を聞くと体が反応して、心臓がどきどきしたり過呼吸になってしまう

お母さんもまれではない。

 

子どものパニック状態を消滅、軽減出来るものなら

自分のことは犠牲にしても構わないぐらいに思うお母さんも少なくない。

特に一人っ子の環境だと、子どもに我慢させるより親たちが我慢、譲歩して

しまうことも多いだろう。

 

療育中、自閉症児を王子様にしないで!と切に思った場面があった。

 

春休み期間中のことだった。

 

新4年生の息子を車で療育に連れてきたお母さんが、

こばとの近くの駐車場に車を止め、そこから息子の後についてこばとに向って来た。

 

迎えに出た私はお母さんを見てびっくりした。

 

息子の後ろをついてくるお母さんは体をくの字に曲げ、

お腹を押さえて覚束ない足取り。顔色も悪かった。

 

「お母さん!!どうしたの!?大丈夫?」私はそばに近寄って声をかけた。

 

息子は振り向きもせず教室への階段を上って行ってしまった。

 

聞けば持病の腹痛で、ひどい時は点滴を受けるほどだとか。

その日も横になっていれば何とか治りそうだったけど、

息子をこばとに送らなければと思って・・・と話をするのもつらそうだった。

 

私は「休めばよかったのに。」と言った。

「息子の頭には、こばとに行く日がインプットされているので、それを急に変更するのは大変で・・・」

 

彼女の息子は知的には中度だが、自閉の症状は強めだった。

こばとには4歳から療育に通っていた。

大きな瞳で長い睫、美形だった。

医院の一人息子。

かなり遠方であったが、両親と祖母で交代でこばとには欠かさず連れて来た。

 

家ではいたずら、ためし行動がひどく家族はきりきり舞いのようだった。

 

学習能力はあったので小学校入学は介助員付きという条件で普通級に入った。

しかし、対人関係は育たず、介助員さんと二人の世界になっていたので、支援級に転校することにした。

それを機に住まいもこばとから近距離のところに転居したのだった。

 

家では息子が一番だった。

 

急に予定を変えて大騒ぎされるより、

自分が痛みをこらえて何とか連れて行った方がましとお母さんは思ったようだった。

 

私は何も言えなかった。

 

「車の中で休んでて。」私はお母さんを支えながら、駐車場まで送った。

「指導時間が終わったら、彼を駐車場まで送ってくるからそれまで

 横になって休んでて。」と言って傍を離れた。

 

指導時間中、彼に何気なく

「お母さん苦しそうだね。」と言うと屈託のない声で彼は答えた。

「お母さんは元気だよ。」と。

 

自閉症は他人の気持ちを察することがむずかしい。

だから仕方がない、ではあまりに悲しい。

 

やってもらって当たり前、の気持ちから

障害があっても人のことを思いやる、他人のために何かやる。

 

療育の到達点はそこにあると思った場面だった。

 

療育の目的は社会生活に必要なスキルを身に着けさせると共に、他人を思いやる気持ちも育てることにあるのでなければ。

 

そして、お母さん方にも言いたい。

 

腫れ物に触るように、子どものため自分さえ我慢すればと思わず、

子どもに自分の痛みや気持ちをしっかり話して欲しい。

そして子どもに出来ることを頼んで、役に立っていると伝えて欲しい。

どうせ言っても分からないだろう、などと思わずに。

 

本気で話伝えれば、言葉を発しない自閉症も理解するのです。

 

 

 

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