自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

繋がるツール(支援教育教材その3)

識字学習はコミュニケーション手段

 

私が紙とえんっぴつにこだわるわけ。 

 

自閉症児はとにかく、自分の思い、気持ちを人に伝えることが苦手だ。

 

たとえ発語があっても

CMの繰り返し、ワンパターンの独り言

こだわり言葉、しつこい繰り返し

相手には何が言いたいのか伝わらない。

 

発語、言葉を持たない自閉症児であれば

特異的行動・常同行動・多動・いたずら・こだわり・泣き喚き・自傷他害・・・・

相手に、何が言いたいのか

何をどうしたいのか、伝わらない。

 

対する相手は????だけでなく、

いらだちやストレス、怒りさえも引き起こしかねない。

それらの行動が気持ちを表すサインであることはわかるが、

そのサインは気付きにくかったり、

解読不能だったりする。

 

しかし、読み書きができると共通の基盤が持てる。

共通言語はコミュニケーションツール。

呼んでも反応しない彼らに、何とかして、読み書きを教えたい。

 

療育を始めた当初から、私は彼らに識字学習をメインにしょうと決めていた。

生活単元学習が障がい児教育の主流だった時代

身辺自立もままならない、着席もままならない

発語さえない自閉症の彼らに対して、

学習だなんて・・・と冷笑されたこともあったが、

 

 

 彼らに合う教材さえあれば、着席させることは可能だ。

あとは、根気、忍耐

 そして、紙と鉛筆。

 

平成元年から始めた療育中の手作り教材がたまりにたまった。

そして、こばとに通えない子どものために市販できるドリルにしたというわけ。

気が付けば9条図書として支援学校でも採用されている。

 

時代が変わってデジタル全盛になっても

やっぱり、紙と鉛筆にこだわりたい。

タブレットにはない効用がきっとあるはずだ。

 

 自閉症児達の手書き文字にも、関わり方のヒントがある。

 

たしかにパソコン、スマホでも文字を書くというか、打つことは出来る。

しかし、その文字は確かに読みやすが、均一でパターンのもじだ。

文字は文字以外の何物も伝えてくれない.無機質な形状だ。

 

しかし、手書きの文字は筆跡鑑定というものがあるくらい人柄が現れる。

単なる文字と言う以上に

書いた人の性格、癖、感情も表れる

 

自閉症児の書く文字だって、始めは【書き方】の文字のように教えて練習させても

次第にその子なりの書き癖が現れる。

丁寧にきっちりマスにはまるように書く子もいれば、

マスをはみ出しても気にしない殴り書きっぽい字の子どももいる。

母親の筆跡にそっくりな文字を書く重度自閉症女子もいる。

 

 

自閉症児のなかには比較的キチンと文字を書いていたが子が

ストレスや何やらで、不安定になり多動も出てきたりすると、

文字にも殴り書きっぽい、多動な感じがあらわれる。

 

自閉症児の文字の書き方にも性格、心理状態が表れるので

その子にあった対応、接し方を工夫していける。

学習をさせるメリットはそういうところにもあった。

 

 

しかし、それ以上に

識字学習は自閉症児の側にも向いたやり方という実感があった。

視覚優位の傾向を利用しやすい。

パターン化、繰り返し、初めと終わりが分かりやすい(指示しやすい)

 

つまり、彼らの特性に上手くハマりやすい。

 

そして、学習はその過程のなかで、予想以上の副産物も生み出してくれる。

聞く力、言葉の理解力、集中力、注意力、持続力、我慢する気持ち・・・・

つまり、コミュミケ―ションに繋がってくるのだ。

紙と鉛筆だからこそ・・・タブレットではこうはいかないのではないか?

 

 

 

その力さえついてくれば、 時代が後押ししてくれる。

 

 

最近、竹中均著の自閉症の時代」を読んだ。

 

「自閉症」の時代 (講談社現代新書)

「自閉症」の時代 (講談社現代新書)

 

 

その著作の中に次のような文章があった。

 

IT関連技術やインターネット社会の進展は、意図せざる結果として、「常同行動」を含む自閉症的な行動、パターンを定型発達者にも取らせるような環境を作りつつある、そう言っていいのかも知れない。

 

また、その時代は自閉症とは言われていなかったが、

過去のの有名な人物や、文学作品に登場する人物が

自閉症の特徴、傾向、類似性持っていることや

現代社会の物やシステムに自閉的傾向が表れていることを指摘していて

興味深く読んだ。

 

 

 たしかに、同じ動画を繰り返し繰り返し見たり、

好きな曲を何回でも繰り返せる状況になってきている。

自分の世界だけで。

これが昔の自閉症の行動であったら、すぐ、こだわりと決めつけられて

止めさせられたかもしれないが、今はあたりまえだ。

 

 

現代は自閉的特異性にマッチするものに満ち溢れているかもしれない。

 

 

電車大好きの自閉症児は多い。

時刻表も好きだ。

ジグソーパズルの得意な子もいる。

ディズニー・ファンタジーも大好き、

同じユー・チューブを繰り返し見るのも気に入っている

 

 

 

自閉症児達がコミニュケ―ションできるツールを獲得すれば

自分の能力を発揮して生きれる、まさに自閉症の時代になって来ているのだ。

 

 

過去において、自閉症療育はコペルニクス的転回の連続だった。

 

 講談社ブルーバックスでスティーブ・シルバーマン著

(正高信男・入口真夕子訳)の「自閉症の世界」を読んだが

 

 

 

 

自閉症診断、療育の変遷、紆余曲折が余すところなく書かれている。

具体例、研究事例がすごい。

 

自閉症は親の育て方に問題がある、と言われた時代もあった。

小児分裂病、微細脳損傷と言われた時代もある。

学習障害注意欠陥多動性障害アスペルガー症候群が社会的に認知され

発達障害自閉症スペクトラムという大きい括りになった。

 

 

脳の多様性がどんどん一般社会の明るみに出るようになった。

 

 

 

そして現代は彼らの能力を生かすべき時代と変わってきたのだ。

 

 

自閉的障がいを持つ子の能力をどのように伸ばせるかを考える

療育を求められる時代になったんだなぁ。

 

 

 

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