自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

言葉につなげるあの手この手

こばとの発語メニュー

 

赤ちゃんは喃語の時期を経て

大人の口元をよく見るようになり、大人出す音を真似するようになる。

そこは、大人も赤ちゃんが真似しやすいような音、

まんま、とかばぁーばぁーなど単語ではない音を

高めの声と笑顔で話しかける。

赤ちゃんが真似してくれると大人も大喜びだ。

 

しかし、幼児期の自閉症児は人の顔に意識を向けないし、

ミラーニューロンが欠落しているのか

真似をしようとする意思の片鱗も見せてくれない。

 

ところが、自閉症児以外で聴覚に異常がなくても

なかなか発語が出てこない子もいる。

診断も自閉傾向とかあいまいなものになる。

 

そのような子は自分でも発声できない、言えないと自覚するので、

親が真似して言わせようとすると、嫌がってあさっての方を見たりする。

 

そのような子どもは体の発育は正常であっても、協調運動が苦手な事が多い。

同じ年齢の子どもに比べ手足の動かし方、指の使い方がぎこちない。

動作の模倣も嫌がって、わざと違うことをしようとする。

 

過去の療育期間中、自閉症ではないが、

言葉が出ない幼児が何人も通って来ていた。

 

こばとでは発語につなげようとあの手この手のメニューをかんがえた。

通常は数名の小集団でが、発語練習の時は、私と1対1.

主たる方針はどの子の場合も

識字学習から始めるというやり方では一貫していた。

 

 

発語のない自閉症児や自閉症でない子が何人も

識字学習を進めるうちに、しゃべるようになっていった。

ちゃんと記録を取ってればよかったなぁ、と今になって思う。

其の頃は、なにせ忙しくて、記録どころではなかった。

 

こんなやり方でも発語につなげることが出来ますよ!と

悩んでいるお母さんにもっと知ってもらいたかった。・・・が

 

否応なく年は取っていくもので・・・・

年中無休、朝から晩まで体を動かしている療育は平成とともに閉店。

名残惜しいので療育相談という窓口は残していた。

 

 

その療育相談にメールをもらった。

 

新型コロナウイルスも見えなかった去年の10月、

ブログ経由でこばとにたどり着いたお母さんからの相談申込みだった

 

 

 

子どもは2才5か月の女児。

2才の時点で発語、指差しはない。

2才を過ぎた時、はっきり定型発達していないと理解したお母さんは

保健センターへ親子相談相談に行った。

そこで発達支援センターを紹介されたという。

発達支援センターに行って初回相談をした時、

母子通園の療育ルームに通ってはどうかと勧められたそうだ。

ただし、今年はすでに満員なので来年の4月まで入れないと言われた。

 

お母さんは入園できるまでの時間がもったいないので、

民間でもいいので、発達支援事業所に通わせたいと考えた。

しかし、民間の事業所でもどこも【空きがない】と状態だったそう。

 

2歳4か月の時点で、こども病院神経科に行き、

遠城寺式発達検査による、母親からの簡単な聞き取りの発達検査をした。

 

言語、運動、対人すべてで1歳以上の遅れがあった。

 

スプーンやフォークと使って食べることはせず、すべて手づかみ。

お母さんにとっては特に運動面が心配だった。

階段は低い段差でも降りる時に一度座ってから降りる

公園で鉄棒にぶら下がることもしない、(同年齢の子たちはしている。)

ボールを蹴ることもしない。

病院からは、<様子を見ましょう>と言われ半年後の再診になった。

 

<様子を見ましょう>この言葉ほど親を不安定な気持ちにさせるものはない。 

 

やれることはないか、と

焦燥感に駆られたお母さんは民間の保育施設をやっと探しだして、

週、2回通わせることが出来るようになった。

 

保育所に通わせても、お母さんは娘の様子が不安だった。

親の手を引いて要求を達成しようという気がない。

道を歩いていて自分の生きたくない方向だと、

その場で無言で寝転んでしまう。泣きはしない。

同年代の友達と遊んでいて、おもちゃを取られても怒ったり泣くことはない。

声はださない。

 

そこでこばとの療育相談に上記のような長いメールを送ってよこした。

 

面談日を決めた。

お母さんは女児を連れてこばとにやって来た。

 

 

ぽっちゃりした女の子、

ザ・女の子!という感じ。

女の子はいいなぁ~。

 

入口で事務室犬シェリーが中にいると分かると、怯えた表情で後ずさりした。

シェリーをリードで繋いだので、お母さんに抱っこされて入室はできた。

着席も出来た。

 

 

たしかに、発語はなかったが自閉症ではなかった。

多動でもなかったが、注意・集中に弱いところがありそうだった。

 

色シールや形シールのマッチングもでき、

視覚認知はよかった。

絵カードで名詞を声掛けしたが、身の周りの名詞はだいたい入っているようだった。

緊張している感じはあったが、

まじめに取り組み、席立ちはなかった。

 

自閉性はないし、視覚認知もあるので、

私は文字を教えることで発語は出てくると思いますよ、と

女児についての見立てと、今後の見通しを話した。

 

おかあさんは、もう、療育はしていないと聞いてるが、

療育してもらえないか、と言った。

私は、「療育相談ということで通って来れば一回50分だけど出来ますよ。」

と言った。(昔は一回90分だった。)

 

 

  

その後、何の音さたもなかったので、

お母さんの不安は解消したのだろうと思っていた。

 

 

続く

 

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誰も来ない、雨降り