自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

認知発達の鍵(支援教育教材その2)

障がい児の認知発達を促すカギとなる道具は

アナログか?デジタルか?

 

前記事ではICT活用、デジタル教育教材開発の女性社長さんとの面談は

あれよあれよのコロナ感染拡大、自粛要請でうやむやになり、

アポは無くなったものだと思っていた。

 

6月に入って、コロナ自粛解除になると

早速、ウェブデザイナー氏と紹介されていた女性社長さんからアポ電があった。

パソコン教室の生徒のいない日の午後、

私より一回りも若い女性社長さんは

後継ぎの事業開発室マネジャーの娘さんを伴って訪ねてきた。

名刺を出されたが、私は名刺を持っていない。スイマセン。

昭和人間で何の肩書きもなく、名刺も持たない私のようなところに何故?

 

時代の流れとして

学校もデジタル化が進んできつつあったのは私も感じていた。

女性社長さんのいうには

コロナ自粛で学校は休校余儀なくされている中

支援学校関係者からのオンライン教育の問い合わせが急増しているのだそうだ。

 

そこで、こばとの教材のことをウェブデザイナーさんから聞き

支援学校用のコンテンツを開発できるのではとは大変乗り気になったようだった。

私が監修と言う立場で・・・。

 

ん~ん・・・どうだろう??

支援学校に通う子ども達は障がいの程度もばらばら、

同じ自閉症といっても特性もさまざま。

学年で区切って同じ内容と言うのにも無理がある。

 

確かに子ども達は動く画面が大好きだ。

画面には集中もする。むしろ執着する。

しかし、綺麗な動く映像でひきつけても

その後の1人1人の学習の進展に繋がっていくだろうか?

映像がなしになった時、集中できるだろうか・・・・?

私は疑問を口にした。

 

たしかに、タブレットとタッチペンで

紙と鉛筆に近いことは出来ていくだろう。

でも、教材の一部分だけというのでは持続的な学習に繋がらなのでは?

 

こばとの教材28種類の一部を開示して見せた。

あまりの多種類に驚いていた。

 

しばらく眺めた後に

コンピューターの言語ではこばと教材の評価の仕方がむずかしい、

社長さんと娘さんは何やらいろいろ話をしていた。

 

何しろ支援学校に通うの子ども達の学習解答は

白か黒か,1か0ゕ、ONか0FFいうきっぱりした答えばかりでなく、

この程度でも〇でいいか、と言うようなあいまいなことも多い。

 

評価をどうするか、システム的に出来るか?

進め方をどうシステム化できるか?

 

2人はこばとの教材の一部分だけをデジタルコンテンツにしても・・・

こばと教材をあれこれめくりながら、

2人の表情には断念やむなし、が浮かんでいた。

 

 

 

数年前、

私も、タブレットが子ども達の教育現場に普及する流れになるだろう、

感じ始めた頃、こばと教材のアプリが作れないだろうか?

と考えたことがあった。

 

ウェブデザイナーさんやゲームを制作していた人何人かに可能性を聞いてみたが

 

制作には

プログラマーやデザイナーをする人がチームで仕事を進める必要があるということ

膨大な費用と時間が必要なこと

学習であってもゲーム性を持たせないと子どもの集中が続かないこと・・etc。

否定的な話が多かった。 

 

 

ん~ん、無理だな、こりゃ・・・と思った。

 

それよりも、基本はやっぱり紙と鉛筆にかぎる、と信念を新たにする。

目と手の協応

動くものがなくても一点に焦点を合わせ、じっと見つめる。

点から点に目を動かすのではなく、線を追視する。

指先への神経を集中し、筆圧を加減する。

道具を使うことで脳が発達する。

そうして人間は進化してきたのだ!

 

 

手、指の発達は脳の発達とは切っても切れない関係にある。

手は突き出た脳髄とさえいわれている。

手は目や耳の代わりもしてくる。

目で見なくとも、指の触覚はいろいろな情報を脳に伝えてくれる。

気持ちを感ずる事も出来る。

医療は触診で病巣を探ることだってできるのだ。

 

 

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段階を経て摘まむところまではいく。

 

母指対向性動作(親指と他の4本指が向かい合って物を掴む)から

指先一本一本に神経を通し、

力の入れ具合、動きをコントロールできるようになるためには

鉛筆は必須アイテムだ。

 

握り方のもどかしい練習を親子共々のりこえて

尖指対向の操作が出来てくる。

お箸も持てるようになる。

細かい作業、小さな字も書けるようになる。

 

 

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鉛筆の持ち方は発達段階と関係する

 指先でのタブレットの画面の操作やタッチペンでの操作では

ここまで指の機能が発達するであろうか?

 

デジタル教材はサイドメニューとしては良いかもしれないが

学習のスタートとして、基本はやっぱり鉛筆と紙だという思いは捨てられない。

指の機能の発達のためには、鉛筆だけでは足りないと

こばとでは初めて算数の引き算を遣らせる時は、

指を使ってやらせた。

引き算を覚える以上に指の機能訓練のため。

 

子ども達は一本の指を出したり折ったりするのにも苦労する。

指先がピンと伸び切っていない、力なく曲がっている。

一本の指を出したり折ったりする時も、

関係のない他の指までも出したり、折ったりする。

一本一本の指が独立していない、分化していない。

親指で他の指を抑えていられない。

 

定形発達の学級では引き算を指を使ってやったりすると

さも幼くみられ、蔑視線を向けられてりするだろうが

障がい児にとっては引き算は指の訓練にもってこいである。

 

学習のデジタル化!!!かっこいい響きに心揺れたこともあったが

 

人間は石版、パピルスの時代から指先を発達させて進化してきたのだ。

楽すれば発達のどの段階かが抜け落ちてしまうかもしれない。

やっぱり、人間の発達の基本は変わらないと、

私の考えは結局紙と鉛筆に戻ってしまった。

 

ICTの女性社長さんもシステム開発の跡継ぎ娘さんも

こばとの教材ではシステム開発の切り口を見つけれない、と断念して帰った。

教材の一つ、ソーシャルスキルレーニング用ワークシートには

ちょっと触手が動かされたようだったが。

 

 

2人が帰ったあと私は思いついた。

こばと教材をタブレット版にはできないが、

ダウンロード版の販売にしてみよう。

そうすれば好きな時に好きな箇所の勉強はいつでもできる。

 

プリントアウトして・・・・やはり紙と鉛筆で・・・・

 

 

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おねだりだけ学習