前回書いた胎内記憶は、現世では無意識的な行動であらわれて、周囲の者にはなんでそんな事をするんだろう、と理由がわからないことも多いですよね。
でも、この世に生まれてから体験した事・言葉・行為は被トラウマ者も加トラウマ者も理由がわかるだけに苦しく辛いものがありますね。
昔、療育に通って来ていたあの子がそうだった。
重度の自閉症の男の子。お稚児さんのようにかわいい顔で、両親はとてもかわいがっていた。発語はつぶやくような独り言が少々。
通園施設に通っていた時あることがきっかけで自傷行為が始まってしまった。
自傷は常同化して激しくなり、こぶしであごを叩いて血が出る時もあるほど。
「叩いたら痛いでしょ!」と止めても意地になって叩こうとする。この子は痛みを感じないのかしら?痛みが快感になっているのかしら、お母さんは悩み、自傷する子どもを見る度に苦しくなりました。
つらさのあまり子どもには(言ってはならない一言)を、たった一度だけ言ってまった。
ある時、子どもが遊びながらつぶやいているいつもの独り言の中に、(言ってはならない一言)が混じっているのを聞き、お母さんは愕然とした。
彼を療育に連れてきた時お母さんが言いました。「たった一度しか言わなかったのに、褒める言葉はたくさん言っているのに、なんであの言葉だけ・・・」とお母さんは涙ぐんでいました。
百万回の誉め言葉は覚えないのに、たった一言が彼の脳に突き刺さったままとれない。
ナイフのような言葉が取れるまで時間がかかりました。