自閉症の療育の難しいところは、気持ちが読めない、彼らが出してくるサインを解読しにくいというという点にありますね。
何がいやなのか。何が気に入らないのか、分からないという時もありますが、いやだから泣く、気に入らないから騒ぐ、という単純なものばかりではないのです。
幼児期を過ぎて精神面が成長すると、気持ちの表現も変化します。
小学生高学年の夏合宿の時のことです。
言葉はあるものの、自閉症状の強い男子。
なじみのユースホステルの合宿から、初めて「少年自然の家の合宿」に参加した時、
目的の場所に着くまでバスの中で、中腰でずっと歌を歌い続けていました。
一見、楽しんでいるようにも見えますが、彼の顔には不安がありあり。
目はきょろきょろ。窓の外の景色を必死で確認しているような。
「今は歌わないで!」とは言えません。歌って自分の気持ちを落ち着かせようとしていたのでしょうから。
療育の学習指導の時にもあります。
スタッフは学習内容を少しずつでもステップアップさせたい。
しかし、課題を目の前にした子どもは見た目で難しい、理解不可、いやもうやりたくない、と思う。
そんな時、満面の笑顔で笑い出すのです。
「今は笑う場面じゃないでしょ、まじめにやって!」とスタッフは優しく言いますが,笑いは止まりません。
子どもはますますケラケラ、ゲラゲラ・・・哄笑。
ここで怒ってはおしまいです。
「あァ、そんなにも難しかったのねぇ~」と言って
すごーく簡単な課題(シール課題のような)と交換してやると、笑いはぴたりとおさまるのです。ケラケラ笑は苦痛の裏返し。
気持ちの表現の反転は普通の人間にもありますね。
悲しすぎて笑うしかない。うれしすぎて泣けてくる、怒りの頂点で怒る気にもなれない・・・etc.
子どもの気持ちに寄り添っていないと反転表現を読み間違えてしまいますね。