自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

ファーストハグ


 つい先ごろ、発達障がいはトラウマを解消すれば精神年齢があがる、という一文を目にしました。

 

30年近い療育実践の中で、

 自閉症児はオキシトシン不足で不安感が強いから、ちょっとしかことがトラウマになっているんだろうなぁ、と考えさせられたことがしばしばありました。

 

 そして、自閉症のトラウマの場合、胎児期、出生前後、乳児期に起因することもあるんじゃないか・・・・と。

 

 今はもう立派な理数系社会人ですが、彼は幼稚園の年長になった時、療育を受けたいとやって来ました。一年後は小学生になるのでお母さんは焦っていました。

 

 自閉症状があるものの軽度で、イケメン候補のような美男子。

多動はなく、言葉も簡単な会話、目の前に見える物の質問なら可能。

目の前にない物、過去については答えられない。

しかし文字や数字は読める。

 

お母さんとしてはなんとか普通学級に入れたい。

しかし問題はえんぴつなど筆記用具は頑として持たない、持たせようとすると寝転んで騒ぐ、という話でした。

 

 面談の翌週から早速療育を開始しました。

自閉傾向はあるものの多動はなく、視覚認知も高く、着席も続きました。

 

 男子は母親には激しく抵抗したそうだが、療育スタッフにはなぜか素直。

指示に従って、渡されたえんぴつを持ちました。人を見るんですね。

 

 彼はえんぴつで書きはしました。が鉛筆の先端を指で隠すようにして、少し顔を背けながら書き練習をしました。

 

3回目も同様の態度だったので療育が終わった後、お母さんに

「何か、先端恐怖になるような経験がありましたか?」と聞きました。

 

 特に思い当たる節はないけど、出産直後に医療措置が必要で、抱く間もなく処置室に連れて行かれて、注射されたことがあった、と思うと言いました。

 

 ファーストハグをすることもなく、母親と分離させられたことは、彼の意識の中に不安、恐怖を感じさせたろうし、さらに尖った物がその意識を増幅させてトラウマになったのかも。

 

 彼はおとなしい方の男子ではあったけど、何か嫌なことや拒否したいことがあると、床に仰向けに寝転んで両手両足をばたつかせる。そして涙を出さずに、大きく口を開けて泣くという行動パターンでした。

 

 これって乳児の泣き方そっくりですよね。

 

          自閉症の世界