自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

目指せ!サイクリング

  前回記事にした幼児教室もそうだが、

こばとの療育は市や行政と一切関係を持たず、

誰にも相談せず(反対されないように)、私個人で立ち上げた療育機関なので、

イデアが浮かぶとすぐに実行に移すことが出来るというメリットがあった。

 

公的な機関と絡んでいればそうはいかない。

稟議書だ、会議だ、審査だ、予算だ、があってアイデアの賞味期限が

切れるということもあるだろう。

 

もちろんこばとも、多くの子どもの療育には何人ものスタッフの協力や

経営上も税理士を必要としたが、

イデアを出したり、実行を決めるのは私。責任は一切私。

 

 幼児教室の療育のながれを考えるまでだって、試行錯誤しそして

あのパターン<制作→体育→給食→集会>が一番子どもを集中させ

療育効果を効果を引き出せる、と結論。個人の運営だからできた。

 

 給食を提供する、などは公的なしがらみがあったら許可されなかっただろう。

給食室がどうの、保健所がどうので・・・。

 

 また、障がい児だけの幼児を保護者なしに合宿に連れて行く、などという暴挙は、

誰が責任とるんだぁ!となって実現は限りなく遠のいたことだろう。

 

 自転車もそうだ。

名前を呼ばれても、自分が呼ばれていると意識しない、

多動で走り回る、または逆に座り込ん感覚遊びにふける自閉症児に

自転車なんかとてもとても。

そんな見方が普通だった。

 

一方、作業訓練、間隔統合訓練というものも盛んに行われていて、自閉症児にはこういう名のある療法が必要なんだ、と思われていた。

名のある感覚統合訓練の先生を求めて遠方まで行ったとか、

講師の先生に来てもらったとか、それも月1回がせいぜい、しかも高額。

 

 私は何もそんな大層な、権威のある人や、場所でなくたって

自転車でやれるじゃないか。

しかも、いつでもどこでも身近な所でやれる手軽にやれる。

自転車こそ感覚統合訓練ののベストアイテムだ。

私はそう思った。

 

 手と足の協応、体のバランス感覚、視覚的判断力。

体のすべてが一つの運動のために目的的に動かなければ自転車に乗れない。

自転車に乗れれば体のあちこちの機能がアップするということだ。

 

 思いついて即、自転車を購入。

最終的には14インチから20インチまで10台ぐらい保有する結果となった。

 

それに幸運なことに、こばとの教室の前は総武線電車の高架下になっていて、

駐輪場とは名ばかりで、ほぼがら空きだった。

その上高架下なので雨が降っても練習出来る。

幸運としか言いようがない環境。

療育の度に、全員ほぼ毎回必ず自転車練習させた。

 

 幼児期からの自転車練習は根気、忍耐、腰痛との戦いでもある。

こばとでは最初から補助なしの自転車で練習させた。

すべての自転車から補助輪は外し、両足のスタンドに付け替えた。

 

まずは、スタンドを立てた状態から足こぎの練習をする。

子どもに自転車乗るように言って、やっと跨がせても、

「えっ、なにこれ?」の表情ですぐ降りてしまう。

 

 やっと跨がせたはいいが、ペダルに足をのせられず、すぐだらっとおろす。

ハンドルも握っていられない、よくて手で触っている程度。

 

子どもの足とペダルを一緒に持って、スタッフが手漕ぎのように回す。

やっとペダルに足をのせていられるようになったら、

足に力を入れること教えなければならない。

子どもの膝のあたりをスタッフは手で押し下げる。

右、左と交互に力を入れて押す。

子どもはされるがまま。

スタッフが手を止めれば子どもの足もとまる。

 

しかし、繰り返していけば子どもも自分で足に力を入れるようになる。

やっと自力で半回転ペダルを押し込んだが、回転まではいかない。

なんともはがゆい。

 

14インチにのっせた子供に覆い被さるようにスタッフも必死。

あきらめずに続けていくとやがて自力で一回転。

そんな時は近くにいるスタッフ一同、優勝でもしたかのような歓声。

 

スタンドを外していざ走行。

しかしスタンドを立てている時と違って、地面との抵抗が出てペダルが重い。

子どもの足が止まる。

でもがっかりはしない。想定内。

最初を思い出させるようスタッフが子どもの膝を押し下げる。

やがて、初めのあの動きを思い出して、2,3回転・・1メートル。

もちろんスタッフが子どもの肩口を倒れないよう介助して支える。

 

こうして何段化も経て自力で走行できるようになる。

自転車は必ず乗れるようになる。

乗れるまで練習すれば。

 

2年生までに乗れるようになると、夏合宿は2泊3日に連れて行くことになっている。

家庭の方もそれを励みにがんばるようで。

 

2泊3日昭和の森の夏合宿。

2日目のプログラムは昭和の森サイクリングコースでのサイクリング。

レンタル自転車を借りるが、レンタルの自転車では身長が足りず乗れなさそうな子どものために、乗り慣れたこばとの自転車を4、5台赤帽さんに現地に運んでもらう。

 

 夏空のもと30人弱の障がい児と8,9人のスタッフがサイクリングロードを走っていくさまは壮観だ。

スタッフは子どものあいだあいだに入り、スピードや列の調整をする。

しんがりは私。

ふらついたり、漕ぎ出せずに止まっている子の背中を押す。

 

ああ、皆はもう折り返し地点で休憩の飴を貰っている頃なのに…

自転車に乗っているより、押してる方が多いなぁ~と思いつつも誇らしい。

 

どうだ、この集団!!

自転車は無理~無理~などと思わずにやればできるじゃないか!!

 

 

重度の自閉症児が児童相談で手帳の書き換えに行って、

自転車に乗れる、と言うとびっくりされるそうだ。

 

あの頃は障がい児のサイクリングは珍しかったが、今では支援学級の元気キャンプでも取り入れるところが多いようだ。

 

自転車に乗れると世界が広がる。

父親やお出かけ支援のヘルパーさんと、余暇活動でサイクリングを楽しめる。

 

水泳やマラソンも得意な支援学校高等部の青年はトライアスロンを目指しているとか。もちろん自転車はマウンテンバイク。

 

 

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サイクリング、やったぁ―

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