自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

優しいだけではだめなんです!!!

 前記事で

自閉症児の父親が無理解、非協力的だと

母親一人が頑張りすぎて疲弊したり、精神を病んでしまうことも多い。

日々の諍いの結果、離婚になることもあると書いた。

 

もちろん、協力的で優しいお父さん多くいる。

 

しかし、優しいだけではだめなんです。

 

母親が真剣に療育しようとしても、父親が逃げ場所、避難場所になってしまっては

療育に一貫性がなくなってしまう。

 

子どもはそういうのを見抜くのが早い。

 

だいぶ昔のことだが、療育熱心なあるお母さんが言っていた。

 

中学生の息子は父親の休日にはまるで3歳児になるので、

助かるどころか逆にいらいらすると。

 

彼女の息子はこばとを開設して間もなくから療育を受けに来た。

息子はその時、小学5年生だった。

 

 発声はあったが、言葉というほど明瞭ではなく、涎もまだ出ていた。

自閉性は少なめだったが体全体の動きがぎこちなく、知的障害は重めだった。

 

 療育を初めてすぐ彼の口の中を見て、舌小帯短縮症であることが分かった。

彼は小学校の言葉の教室で言語訓練を受けていると言っていた。

 

 「どうして舌小帯の手術をしてこなかったんですか?

 これではいくら言語訓練しても効果は出ません。

 〇〇歯科大学の口腔外科で手術してもらってください。

 術後はそこで言語訓練もしてくれるはずですよ。」

 

とお母さんに勧めた。

 

お母さんはすぐに息子に舌小帯の手術を受けさせた。

 

「言語訓練はやってもらってますか?」

と聞いたところ、病院側にこばとでやってもらうよう言われたそうだ。

知的障害があると病院では言語訓練を渋る。

指示が理解できなかったり、ふざけたりするので。

 

そういえば、ピエールロバン症候群で口腔手術をやってもらった男子も、

知的障害が重く、術後、病院での言語訓練はしていなかった。

こばとでキュード法も使い、発語が出るようになり、文字も読み書き出来るようになってから、言語訓練をやってもらえるようになった、ということもあったな。

 

話を元に戻すと、

男子のお母さんは毅然とした人で、中学生になると息子には年齢相応の対応をした。

男子もお母さんに対しては中学生らしく振舞った。手伝いもよくした。

 

しかし、優しい父親は彼に対して幼児期のままの対応を続けていた。

なので、息子は要求が通らないとでかい図体で寝転ぶこともあった。

 

父親の休日は母親の頭痛の種だった。

 

ある休日の日、私はお父さんとばったり最寄駅で出会った。

ちょっと立ち話をした。

お父さんは自分と同じぐらいの体格の息子が、駄々をこねて暴れるので

投げ飛ばした、と自慢そうに話した。

 

私は「お父さん、ちょっと遅すぎたんじゃないですか?」と言った。

 

一家は息子が支援高校卒業後、より良い就労環境を求め、お母さんの実家のある関西に転居した。

 

 

自閉症の子育ては、子どもの相手をする優しいお父さんだけでは務まらない。

 

4人息子を持つ家庭があった。

長男は自閉症、次男は自閉性は少ないが注意欠陥、3男は言葉はあるがADHD、4男は定形発達。

 

長男と次男だけこばとに通った。3男も通わせたかったのだが・・・

 

お母さんは公務員で保健婦として働いていた。

父親は子どもの相手をしてよく遊んでくれてはいた。

 

お母さんは「優しいだけじゃねぇ~。」とよく言っていた。

 

結局、離婚した

 

離婚後、お母さんは乳がんも乗り越えた。

手術日を子どもを預けられる日に慎重に設定した。

 

今、長男と次男は支援高校高等学園を卒業して、二人とも特例子会社に就職した。

 

今年、ひょっこりお母さんが訪ねてきた。(こばと訪問はいつでも突然・・)

「長男は家に食費を入れてくれるのよ。」とうれしそう。

後見人制度についていろいろ勉強し、将来のことを考えていると言った。

 

お父さんも悪い人ではなかったが、子どものような人だったのだろう。

 

自閉症の子育ては父親の理解、協力なしでは療育破綻の危機に直面する。

しかし、優しいだけでも療育成果の足を引っ張ってしまう。

厳しさも優しさも、同じ方向を向いていることが必定だ。

 

自閉症育ては、あ~、本当に難しい

育てる大人も、十分に大人になっている必要がある。

 

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相手次第で態度を変える