自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

素直さは能力?

<素直さ>は成長の肥やし

 

性格って何だろう?

 

よく、性格が良いとか、性格が悪いとか、人はざっくり評価する。

真面目、だらしない

素直、ひねくれてる、

性格だから仕方ないよね,とか持って生まれた性格だから、ともよく言う。

 

長い療育中、感じ続けたことだが

少なくとも<素直さ>という性格は、

性格というより、能力という範疇に入るものではないだろうか、ということ。

言葉が持つすべての意味(ニュアンス、言葉を発した相手の気持ちをも含めて)

理解できる能力が素直な行動を取らせるのだ。

 

何も、すべてに従うことが素直といっているのでない。

 

 

 

人間には何でもイヤイヤ!の時期がある。

2歳から3歳前半になると自我が芽生え、

自己主張が出てくる頃・子育ての第一関所。

 

イヤイヤ期は定形発達のほとんどの子どもに見られる成長過程の一つだが

通常は3歳の後半頃には聞き分けも良くなって

幼児期を脱しつつあるなぁ~。と成長を感じられるもの。

 

次の関所は口答え!!。

 

言葉が急速に発達していっぱしの口を利くようになってくる。

それはそれで、言語理解、理屈が分かってきたことでもあるが・・

 

次の関所は、分かっていてもの反抗期!!

 

 

 

 

療育に通って来くる子ども達にもイヤイヤ期はある。

 

が、定型発達のそれとはとはすこし別物のようだ。

自閉症スペクトラムのなかでもADHD傾向の子どもは特にそれが強めに出る。

イヤイヤの度が過ぎる。

聞き分けが良くなる時期がなかなか来ないのだ。

 

 

多くの子どもを療育していた頃、

良く聞かされた、お母さんのセリフに、

「やれば出来るんですけど・・・頑固で。」というのがあった。

 

1人で勝手にやっている時はできていても、

指示された時には素直にやらない。

 

 やることは分かっていても、別の事をわざとやったりする。

あまのじゃくという言葉があるが、まさにそれ!

人の気持ちを逆なでする。

 

 

 

重度自閉症児のイヤイヤもちょっと激しいものがあるが、

人の気持ちを逆なでするものではない。

 

幼児期、言葉がでない重度自閉症児の場合、

対応する側も彼らのやらない、やりたがらないは、

言われていることが分からない、

やることが分からなくて不安になっているからだ、と心得ている。

 

重度自閉症児のイヤイヤの気持ちの理由を承知しているので

根気よく、忍耐強く、丁寧に指導する。

重度の自閉症児は分かるようになれば、素直に指示に従える。

従い過ぎて、指示待ちになったり、何でも模倣になったりして、

ちょっと、困ることも出てくる。

 

 しかし、重度の自閉症児も成長して自我がでてくる。

難しい、出来ない、苦手とわかってくると

可笑しくもないのに、げらげら笑ってごまかしたりするようになる。

 

 また失敗を恐れて、やろうとしない。

失敗する自分が許せない。

関わる大人の目にはほんとに、プライドが高いんだから・・・と映る。

遅れて来たイヤイヤ期に近いものになる。

 

 

 言葉は出ていても、

ADHD傾向の子どものイヤイヤは

重度の自閉症児より対応が難しい。

 

叱ったり、怒ったり、強制したりせずに、

このタイプの子ども達をやる気にさせていくには

忍耐と相当のテクニックが必要だ。

 

指示されていることや、何をやればいいのかわかっていても

やろうとしない。わざと違うことをやろうする。

 

過去の療育中こんなADHD男児がいた。

新しい課題に進めようとプリントを見せると

途端に、席立ちして本棚に向かい、

本を一冊取って、いかにも集中しているように熱心にページをめくってみせる。

その本は男児が読めそうもない漢字辞典だったりするのだ。

 

人に指示されるのがいや、介助されるのがいや

だけならまだいいが、

対応する大人の気持ちを逆なでするような行動をとったりする。

なので、通常の環境では叱られることも多くなってしまいがちだ。

 

否定されてばかりだと、自尊感情が育ちにくくなる。

なのに、わざと叱られそうなことを探して、やる!の悪循環。

 

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

過去記事で3月に

ADHD傾向の男児の育児に疲弊していたお母さんと男児に初回の面談。

継続的に療育希望なので、

働いているお母さんの希望の時間に調整し、療育をスタート。

 

始めは母子一緒。母親に言われて着席するものの、すぐ離席。

何度も母親の顔を見る。

母親がきつい顔をするとすぐ抱っこしてもらいたがる。

 

パソコン教室生徒にもらった、成田山おみやげの天狗の人形を見て

「怖いね、怖い、怖い」と何度も言う。

私は普段の顔で誘導し、何とかシールマッチングや、

カードマッチング、鉛筆やクレヨンを介助でもたせた。

はさみは指孔に指を入れることも出来なかった。

 

3回目の療育の時、

迎えに行くといつも、息子の困った行動ばかり言われていた保育園から

初めて、褒められた、とお母さんは嬉しそうだった。

 

しかし、ADHD男児

私との課題中は、お母さんがあまり叱らないと分かったのか、

離席、ママ抱っこ!!!が増えた。

 

これでは療育効果がでない!

と考えたところで、まさかの新型コロナの感染拡大、自粛要請。

療育も4月は中止とした。

 

 

5月再開。

再開スタートから母子分離!!!!に切り替え!    

お母さんも喜んだ。

指導中の様子はラインで送ることにした。

 

男児は始め泣き顔を見せたが、母親への執着はそう長くなかった。

 

 

私は電車好きの男児に、私も興味があるかの如く付き合って話を合わせた。

カンカンカン・・・踏切が特にお気に入りだった。

 

制作課題にも線路を描いてやり、電車や踏切を取り入れた。

始めは離席し、机の周りを走り回ったりしていたが、

私は叱ったりせず、気長に着席を待った。

そして、時々悲しそうな表情で演技をして見せた。

 

男児は不安そうに私を覗き込んで着席するようになった。

見捨てられ不安逆利用成功。

 

母子分離から3か月。

男児課題中は離席しなくなった。

介助もいやがらなくなった。

 

二人羽織風介助だがはさみで形を切ることも出来るようになった。

鉛筆を持って、一本道迷路や絵と絵のつなぎもやる。

パパとママのお絵かきも出来た。

シャボン玉もふけるようになった。

相方スタッフと私が回す縄跳びも跳べるようになった。

自転車のペダルの足回しもやるようになった。

 

ほぼ介助であるが、介助させるようになったことが成長だ。

 

しかし、お母さんが迎えにくると

良いとところ、出来るところ見せようとせず、

わざとおふざけするのが残念だ。

 

お母さんはラインの動画を見て驚いている。

 

 

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こだわり、毛布に潜るので薄く扇風機を回してる。