自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

あの手この手 の続き

 お母さんは療育計画を密かに進めていた。

 

1回目の面談後、何の音沙汰もなかった。

一度だけ、その後の様子を聞こうと、電話をかけたことがあったが

繋がらなかった。

 

どこかの療育に通えるようになって、お母さんの不安が解消したか、

女の子に発語が出るようになって、ほっとしているのかも、と思った。

気にはなっても、連絡がない以上私にはどうしようもないことで

忘れることにした。

 

 

新型コロナウィルスの感染が広まりつつあった時、

お母さんから電話があった。

 

4月から通園施設に週3回、民間保育園に週2回通えることになった。

 それで、療育相談という時間枠で療育を受けたい、という内容だった。

出来れば電車にも慣らしたい、という希望も言った。

 

私は驚きつつも、うれしい気持ちもあった。

女の子の発語の経過を見たいという気持ちもあったので。

しかし、曜日・時間を決めて、さあ療育開始!という段になって

 

もしかして、たぶん・・・・と恐れていた

新型コロナウィルスの感染拡大、自粛要請。

 

 

 さすがに、私も予約キャンセルお願いの電話をした。

通うことになっていた通園施設も休園になったそうだ。

パソコン教室を休止、相方スタッフを自宅勤務にしたり、

こばと自粛体勢になった。

 

4月はスティ・ホームとはいっても一人で仕事をしていた。

お家勉強のせいか、教材の注文、特にアマゾンプライムの注文が増えた。

 

意を決して、5月の連休明けから通常のこばと業務にした。

 

 

お母さんと女の子が予約の日に来るまでに

私はどんな発語メニューにしようかと、

あれこれ考えるのはひさしぶりに楽しかった。

 昔、幼児教室でやっていた療育メニュー!!!!

 

 

予約1日目、やっぱりシェリーを見て尻込みした。

シェリーは興味津々で臭いを嗅ぎたがったが、リードをつけて引き離すと

お母さんに抱っこされて入室。

面談の時と同じようにお利口に着席した。

ママ、とパパは言えるようになった、とお母さんが報告してくれた。

名前を呼ぶと、口はあけたが、声は出さずに頷いた。

 

 

絵とことばのマッチングカード。

絵カードの上にひらがなの単語カードを声掛けで置かせる。

今はひらがなは読めなくともよい。名詞が入っているかの確認。

身の回りのものの名前はだいたい入っているようだ。

 

音声模倣をさせてみる。は出せる。

両唇を使った破裂音は出しやすいようだが、くちびるをとがらせることが出来ない。

なので、の段の音は出にくい。

口の周りの筋肉の動きが弱い。

おかあさんは運動面が弱いと言っていたが、それは口の周りの筋肉、

舌の動きについても同じこと、

舌小帯に問題はなさそうなので、あとは口角周りの筋肉、

舌の筋肉を動かしていく事だ。

 

 

2点つなぎ、鉛筆持ちは辛うじてできるが筆圧は弱い。

意欲を持たせるためいろいろな色のマジックペンや

クレヨンを出して好きな色を選ばせた。

 

手元目線は良い。始点から終点までの追視もできる。

しかし筆圧は弱いので線が途中で途切れてしまう。

 

はさみはバネばさみを使わせた

指を指あなに入れることは出来たが、握りが弱く切り進み・切り落としまでいかない。

介助でチョキンチョキンさせたが、嫌がることはないのが良い兆候。

はさみは早めに自力で出来るようになるだろう。

 

体育はボウル投げ。

ボウリングに見立てた空のペットボトルに離れた所から投げる。

その場で手からボールを放し、ペットボトルにあたるとうれしそうにする。

ボール投げの動作はよし。

自閉症児の場合手からボウルを放せず、

持って歩いてしまうことが多いので、自閉傾向はほぼなし。

 

最後に指だしを模倣させた。いち!と言って人差し指を出して見せる。

人差し指の指差しは、指先が曲がっているものの何とか模倣する。

が、二本指でピースはできない。

 

 

一回目はこれで終わり。

 

言葉になるのが楽しみだ。

発声が出た音で文字カードを作り、2音、3音の単語を作って

2回目の準備。

 

2回目の時、声が少し大きくなっていた。

ママ、パパ、ちっちなど同じ音の2音は続けて言える。

と、お母さんが報告してくれた。

 

笛やシャボン玉で呼気のチェックをした。

お母さんはシャボン玉は出来ない、と言っていたが何回かやらせると

いきおいよく吹いてたくさんのシャボン玉を作れるようになった。

 

発声できる音のカードを組み合わせて2音、3音の単語を模倣させてみた。

1音ずつなら模倣できるが、続けては言えない。

1音しか記憶に残らないか、または舌、口周りの筋肉の動きが

追い付かないか、だろう。

口形を変えない同じ2音なら続けて言えるので後者が原因だろう。

 

パズルなど好きだというので、形の認識はよさそうだ。

文字は覚えていきそうだ。

 

次からは絵付き単音カードを使って文字と音声が対応しているかどうか試した。

始めは、「あしの」「いちごのい」・・・・などのように

絵をヒントにして文字カードを選ばせた。50音中、4分の3ほど選べた。

 

その次の回は絵のヒントなしで音声だけで50音中、3分の1ほど選べた。

選べた文字ははっきり発声で来た。

 

女の子のえらい所は、何のために療育に来ているのかよく心得ていて

発声のトレーニングを嫌がらない事だ。

 

苦手なさ行音、は行音、いの段、おの段も一生懸命出そうとする。

始めはかすれた音、息だけだったのがだんだんに音になってきている。

 

10回目の今

バイバイが上手に言えるようになった。

制作で色ぬりの時、ごしごし塗って!と声をかけるとゴシゴシと言いながら塗る。

シェリーのことはワンワンと言い、頭をなでなで出来るまでになった。

シェリーがおしっこをする所を見て、「ワンワン、ちっち。」とうれしそうに言う。

「パンとごはん、どっちが好き?」と聞くと「ごぁん」と答えてくれる。

 

発語訓練は始まってまだ2ヶ月、

でも確かな手応えがある。今後が楽しみ。

 

体育は鉄棒のぶら下がりは終了して、縄跳びにピョンピョン跳び

スタンドたてた自転車の介助での足こぎの練習に入った。

 

子どもは未来があるから楽しいね。

 

子どもはいいなぁ~。

 

高齢者の私は子どもから未来のおこぼれをもらってエネルギーにしている。

 

 

 

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相方スタッフのスリッパ、あめふり続きの腹いせ