報酬系の有効利用
人間は誰しも大なり小なりの不安を抱えて生きている
それはあたりまえのことだ。
しかし、見捨てられ不安は人格の根幹に食い込んで
長引いてしまい、やっかいだ。
程度を越してしまうと、依存やパーソナリティ人格障害のような
精神疾患を引き起こしかねない。
見捨てられ不安の逆利用は自閉症児などには
自己中心、特別扱いを脱皮させ、
集団の中の一員という意識、自覚を育てる効果をうむ。
一方、ADHD系の子どもには効かない事の方が多いだろう。
過去記事
kobatokoba-kosodate.hatenablog.com
2才8か月といえば児は自我が芽生える第一次反抗期、
何でもイヤイヤの時期ではある。
ADHDの傾向を持つ発達障がいの子どもの中には
なんでもかんでもイヤイヤの度が過ぎる。
素直に指示に従うことはまずない。
わざと指示されたことと反対の事をやる。
拒否態度が激しい。
過去記事のお母さんも疲弊しきって、笑顔をつくれないでいた。
面談後、すぐ母子一緒に療育相談開始した。
一回目は初めての場所、活動だったせいか
集中は短かったが、指示にも従い課題もやった。
まずまずのスタートかなと思っていたが、
やはり2回目以降の療育では本領発揮しはじめた。
課題を提示してもすぐにはやらず、席立ちしたり、
鉛筆やはさみの介助をいやがった。
シールをわざと違う所に貼ったりした。
私はじっと待つ態度を取り続けた。
それを良いことに、お母さんに抱き着いたり、ふざけたりする。
お母さんも抑えた声で注意するが、男児はにやにやして言うことを聞かない。
他人がいる場所では、お母さんは本気で、大声で、険しい顔で
怒ることはない、と子どもはようく知っているのだ。
4回を終えたところで4月になり、新型コロナの影響で自粛生活。
4月いっぱい療育はお休み。保育園もお休み。
5月からの療育再開前に、お母さんに母子分離で療育することを提案。
お母さんがいると甘えがでる、と感じていたお母さんは即OK。
ADHD系の発達障がい児には
見捨てられ不安逆利用より報酬系活用が効果的だ
ポジティブ感情などを司る神経回路を刺激する。
やる気を出させる。
再開一日目の母子分離、初めは泣いてママ、ママといったが
あきらめは早く、直ぐに慣れて着席した。
カードや鉛筆・クレヨンの課題を見ると離席してウロウロ。
気長に声掛けして自分から座るのを待った。
本棚から電車の本を引っ張り出し、熱心にページをめくり、見ている。
時々、私の方を見て「カンカンカン」と言った。
私も、「そうだね、踏切カンカンカンと鳴るね。
危ないから踏切には入っちゃだめということだね。」と
彼のカンカンカンに付き合った。
電車そのものよりカンカンカンが目線が行くようだ。
こばと教材の課題を取り出して、課題の余白に線路とカンカンカンを
書いてやった。食いつきは良かった。
介助さえ嫌がったはさみも、介助で切り落とした切れ端で
カンカンカン踏切の信号を即席で作ってやった。
はさみの介助は嫌がらなくなり、自分でも切り進むようになった。
あの手この手、いろいろバリエーションをつけて、
カンカンカンを利用し、着席時間は長くなり、
集中時間も伸びて、課題の取り組みもよくなった。
お母さんには毎回ラインで写真や動画を送っている。
課題に取り組んでいることに喜んでいる、という返信もあった。
こばとでの療育の他に毎回、家庭学習用に宿題ノートを持たせているのだが、
母子分離4か月目に
初めて自分からこばとの宿題をやる、と息子が言ってきた!!と
お母さんは感激していた。
お母さんの悩みはおむつが取れない事だ。
偶然トイレで出した時もあるが、
お母さんがほめ過ぎたせいもあるのだろう。
それから意地でも出さなくなり、
紙パンを穿いた途端にだす、というのでイライラしていた。
こばとでトイレとれニングするので、
「トレーニング用パンツを持って来て下さい。」と言った。
次の週、トレーニングパンツを持ってきたので
紙パンツから穿き替えさせようとしたが激しく拒否。
穿かせるのは無理だな、という雰囲気。
それにお母さんの持ってきたトレーニングパンツは少し大きめで
どう見てもダサい。
相棒スタッフとこれじゃ、男児も穿く気に慣れないよね。
次週まわすことにした。
トレーニングパンツを穿かせる作戦
可愛いアンパンマンパンツ、色は好きな青。
パンツは決まった。
次はどうやって穿かせるか。報酬系をくすぐることにした。
絶対に欲しいので、指示に従いたくなるものを考えた。
カンカンカンに決まり!!それをどうやって作るか。
あれこれ頭をひねり、お菓子の箱を使って
2両の電車を作って連結、残りの切れ端でカンカンカンをつくり
立てるようにした。
これなら食いつかないわけにはいかないだろう。
パンツは穿いた。
前回は、絶対穿かないぞ!!の拒否ぶりだったのに。
カンカンカンに惹かれていそいそと。
しばらくカンカンカンで遊びの相手をし、
さりげなく、間にこばと教材の鉛筆やはさみの課題を滑り込ませた。
拒否なくすんなりこなした。
本人にもクレヨンで線路を描かせたり、
踏切のバーに折り紙を切らせてぶら下げさせた。
電車に折り紙やシールを貼らせた。
療育の間中ずっと素直だった。
外に出て、縄跳びや自転車の足こぎの練習もした。
ふざけや拒否はなく縄跳びピョンピョン10回、
自転車介助つき足こぎ練習を高架下でやった。
お母さんが迎えに来ても
いつもはやる、わざと違うことをやったり、
走り回ることもななかった。
帰りにカンカンカンを袋に入れて持たせた時は、
お母さんに促されて素直に「ありがとう」さえ言った。
いつもならお母さんの指示で
言うように言われたことは言わないのに・・・・。
ADHD系はきつく注意したり、怒鳴ったりすることは
逆効果になってしまい、自尊感情の芽を摘んでしまいかねない。
一つのやり方がすべての発達障がい児にあてはまるとはかぎらない。
1人1人の特性に合わせたやり方で
また年齢に合わせたやり方で
それぞれの能力が伸びていく療育なされれば
彼らはすばらしい人的資源となるだろう。