自閉症児の療育過程で、ジレンマに陥って頭を抱えたくなるようなことも、再三起きると前に書きましね。
「自分勝手にやらないで、指示を聞いてからやりなさい。」とさんざん言っておきながら、子どもが出来るようになると「指示待ちでなく、自分で判断しなさい。」」真逆の要求。
自閉症児にとっては???になりそうな切りかえパターン。指導者もどう理解させるか悩むところです。
指示待ちだけでなく【模倣】でもこのジレンマに陥ります。
視線を合わせない、呼んでも振り向かない、模倣もしない。そんな自閉の初期症状から根気の甲斐あって模倣するところまでこぎつけた。療育者にとっては一山を越えたことに手応えを感じて嬉しくなる成長です。
ところがです、今度はなんでも【模倣】というジレンマに陥ります。
私もありました。
自閉の症状は重いながらも、人との関わりがよくなり、人のことをよく見て模倣もするようになった小学低学年の男子。
発語は出てきたもののまだまだ。こばとの療育ではひらがなカードを使って、一音ずつの発声練習をする段階でした。
その日も私の方がつい夢中になって、ひらがなカードをめくる度、くちで指を湿らせながらやっていました。
ふと気が付くと、彼も発声の度に指を口元にやっているではありませんか。
「指はまねしないで!!そこは模倣しなくていい!」きつい口調になってしまいした。
私が指を口で湿らせなければいいだけなのですが、指先が乾いてスムーズにカードがめくれなかったのです。
模倣されすぎがストレスになった例もありまねぇ。
妹の事を意識するようになった自閉症の姉が、妹のやることなすことを模倣する。
食事時のはしの上げ下ろしまで妹のやり方を見て模倣することに、お母さんのほうがいら立ちを募らせ、まいってしまったと相談してきた例もありました。