自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

床屋

 過敏すぎる聴覚のことを書いた時、人間は慣れる生き物でもあるからと、あきらめない精神を当てにして自閉症にエールを送りました。

 しかし、神経細胞には臨界期というのもあるし、慣れさせるには時期、タイミングというのもありますねぇ。

 自閉症にとって人間社会、文明社会で暮らすために、慣れなければならないものがありすぎます。

 病院、歯医者、床屋、歯磨き、爪切り、帽子や洋服、絆創膏や包帯、etc・・・森の中で野性的に暮らせば何の問題にも、障がいにもならないものばかりですが。

 

中でも、ぼさぼさの髪、伸ばし放題の手入れしていない髪は目立ちますから、散髪は何としてもクリアしたい重要課題です。

 

 こばと療育センターにたくさんの自閉っ子が療育に通っていた頃も、「どうしたの?その髪型!」という子が結構いました。

トラ刈りになっていたり、切り残しとおぼしき一房があったり、男の子としてはちょっと思える髪型だったり。

 

 聞けば、子どもが寝ている間に、気付かれないよう何回かに分けてやっている。風呂場で押さえつけてやっているが、動くのでザンギリなる。終わらせるのに必死だから仕上がりなど気にしていられない、と言うお母さん方の話。

 

 青年期にそれではまずいでしょう。ということで、私が床屋に連れて行くことにしました。(当時はまだ60代前後だったので)

 

 療育教室の近く、5分ぐらいの最寄駅中にある1100円カットの床屋さん。

療育指導日当日、1100円を子どもに持たせてもらい、指導時間を使ってつれて行きました。子どもにも髪の毛チョキチョキ、と説明しながら手をきっちりつないで。

  

 もちろんお店の人には自閉症の傾向を説明しました。

私は子どもが椅子に座っている間、子どもの手を握って50まで数えたら終わり!を2~3回繰り返したり、鏡の中の子どもに微笑んだり、怒ってみせたり・・・。

 

 最後まで座っていられる子ばかりでなく、椅子から、ずり落ちて床をはいずったり。でも男性スタッフの床屋さんは寝転んでもカットしてくれました。感謝。

伸びて来た頃にまた連れて行き、繰り返すうち皆慣れていきました。

 

 こうやって何人の子を床屋慣れさせたことだろう。

小学校高学年の頃には皆びしっと髪型を決めれるようになって・・・。

 

 支援学校の高等部になっても、同じ1100円カットの床屋さんに通い続けている男子もいます。彼は順番を待っている間に新しいお客さんが入ってくると、立ち上がって「いらっしゃいませー」と挨拶するそうな。

 

 お店の人が笑って言っていました。「かわいいねぇ。」

 

 歯磨き、爪切り,床屋・・・何事も自我が芽生え強くなる前に、あきらめず忍耐強く繰り返して慣らすが一番、近道はないと思って。

 

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