自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

はるかな記憶

  水遊びは好きなのに、顔に水がかかるのを極端に嫌う自閉症児もいます。

けっこう多いです。

 

自分の両手を御椀にして、水をため、顔につけるなどとてもとても。

顔を洗わせるは毎回バトル。なので、きつく絞ったタオルで手早く拭くだけでもOKという家も多い。

 療育中、教室の流し場で顔を洗う練習もしました。

 

 シャンプー後、シャワーで髪の泡を流すのはとんでもなく大仕事。

絶叫が風呂場に響きわたることは想像に難くないのです。

 

床屋もそうですが、シャンプー克服も療育の主要な目的。 

 療育中、幼児も保護者の付添なしで、一泊二日の夏合宿に連れて行きました。

理由の一つは、お風呂の自立。

思春期にさしかかる10歳までには、一人で風呂に入り体を洗い、髪の毛をシャンプーしシャワーで流して出てくる、ということを目標にしていたので。

 

 ここで疑問。人間という種族はいつからお風呂に入るようになったんだろう?

とても文明的な風習・・・。

 

ところで、

 顔に水がかかるのはあれほど嫌がるのに高い所は平気、という自閉症児もいます。

けっこう多いです。

 

 冷蔵庫の上に登りたがったり、タンスの上の隙間に入りたがったり。

こばとの療育を始める前に勤務した特殊学級(今の支援学級)にもいました。

 

 太目で、自閉の症状は重度の男児

動きが鈍重そうに見えるのですが、ジャングルジムをスルスルのぼり、てっぺんで両手をはなして仁王立ちしたりしていました。

 こういう時は「危ない!!」などと、大きな声は掛けない方がいいのです。

何気ない声で、「教室に戻ろう。」とか言うのがベストアンサー。

 

 公的通園施設で、慌てて大声で注意して事故になったケースがありました。

 こばとの療育に通い始めたばかりの、自閉症状重めの男児(これがまた超美形)

 

 通っていた通園施設で、彼は天窓のある高い所に登っていたそうだが、担当者が驚いて大きな声で呼んだので、彼は天窓から外に逃げ出して転落。2階だった。

 頭に大怪我をして大騒ぎになり、こばとの療育を休むと連絡がありました。

1か月後,彼は後遺症もなく、再びこばとの療育に通い出した。運の強い子!!

 

 海外から帰国した言葉のない重度自閉症男児は、お父さんの勤務地のシンガポールでの出来事。

マンションの7階だかのベランダの手すりを立って歩いたとかで、即刻帰国になったそうな。

 

 高い所は平気、むしろ好き、は自閉男子に限りません。

 

幼稚園に通っていた、言葉のない多動系重度の美少女はブランコが大好き。

 自由遊びの時間はいつもブランコに乗り、最大限まで、地面と平行になるほど自分でこぎあげていました。(私は幼稚園に見学に行ってそれを確かめています。)

 

それが、ある日、最大高にこぎあげた高さから手を滑らせて落ちてしまった。

もちろん、大騒ぎになったがけがはなかった。こちらも運の強い子!!

その後も何事もなかったように平気でブランコに乗っていた。

恐怖体験では全然なかった。

 

 彼女は今でも美少女だが、高い所は平気で、ジェットコースターも大好き。

 

 自閉症児の脳には、樹上のような高い所は平気、でも水は怖い、という古い古い記憶が沈殿しているのだろうか・・・とたまに思う。

 

 確かに野生の生活であれば、手づかみで食べようが、裸足であるこうがそんなことは障がいではなくなってしまう。敏感な耳、臭いをかぎ分ける鼻、動くものを見分ける目があればなんとかなる。

 

 なんか、生まれた時代をまちがえたかなぁ~、なんて思わぬでもない。

 

 

自閉症の世界