自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

きれい・きたないの感覚は脳のどこにあるか?

自閉症育て、療育の中で

 

【きれい】【きたない】を教えるのはとても難しい。

 

しかし、彼らはまったく【美】が感知できない、というのでもなさそうだ。

重度自閉症の幼児であっても、若くて、髪が長い美人、

笑顔がかわいい女性には警戒心がない。

こっち見て見て顔で、自ら女性に近寄ったり、

さらに相手してもらうとうれしそうする。

 

 

療育中、こばとには若くて美人のスタッフが多くいたが

美人スタッフが担当になると、子どもは嬉しそうな顔をする。

指導の途中で私が入れ代わって対面したりすると、

「えツ、なんでぇ~」みたいな顔をして、若いスタッフを目で追ったりする。

 

イケメンも分かるようだ。

学校勤務時代に自閉症も気持ちは同じ、と思った場面があった。

思春期になった、言葉のあまり出ない自閉症女子が

若いイケメン教師に秋波を送っているのを見たことがある。

 

【美】を感知するのは脳は前頭葉の下部、眉間の上あたりに位置する

<内側眼窩前頭皮質>という箇所にあるそうだが

そこは正常に作動しているということだろうか?

人間のかわいい、きれい、かっこいいが感知されるということは・・・

 

【物】となると別物のようだ。

【きれい】【きたない】の差異をなかなか感知できない。

どうやったらわからせることが出来るだろう、悩みの種だった。

 

噛んで捨てられた道路に落ちているガムを拾って口に入れる。

消しゴムのかすを消した傍からつまんで口に入れる。

何やらのきれっぱし、ティッシュや輪ゴムを口にいれてニチャニチャ噛む。

 

中には便器に落ちた自分の便をつんつん触ろうとしたり

紙パンツに出た便に手を突っ込んで触ることもある。

当然、介助の大人は「あーーーーーつ!!!と大声を出す羽目になる。

 

手を汚しても、口の周りを汚しても平気。

手づかみで、手が汚れても平気で食器に手を入れる子もいるが

中には、手が汚れるのを嫌い、指先でつまむようにする子もいる。

 

服が濡れても汚れても平気なこもいる。

一方、ちょっとでも服が濡れると嫌がり、着替える子もいる。

 

学校勤務時代に担任した軽度の自閉症男児

 

(引き継いだ時は、ウンチングスタイルでずっとしゃがみ

斜め上をボウ―ッと見ている子だったので、重度と言う申し送りだった。

学習をやらせていくうちに、カレンダー少年とわかった。)

 

食べ方もきれいで、手を汚さなかった。

色白で服もいつもきれい、汚れていなかった。

服が濡れたり汚れたりするとすぐ着替えた。

教室のロッカーにが着替えがいっぱい置いてあった。

トイレに行き、パンツに一滴でもおしっこが付くとすぐ着替えた。

そのうち穿き替えるパンツがなくなると

一滴ついて、脱いだはずのパンツに穿き替えていた。

 

パンツ取り替えのこだわりは徐々に減っていったが。

学生社会トレーニングまで付き合ったが記憶力と計算力は抜群だった。

彼は髪もスポーツ刈りで、全体的に清潔感があった。

 

 かたや、汚れても平気な子もいる。

むしろ、自分でわざと自分の手や足にマジックでいたずら書きをしたり

鉛筆の芯を強く紙や机に押し付けて、

粉を出してそれを掌にこすり付けたりする。

 

汚れても平気な子は服装もだらしないことが多く、

シャツがズボンからはみ出ていても平気である。

食べる時も手を汚したり、こぼしたりしても平気

口の周りが汚れても気にならない。

 

夏合宿の時も、きれい汚れを教えるのは苦労した。

合宿のリュックにつめる荷物は、

一日目の着替え、二日目の着替えを別々に分けて

洗濯ネット、またはジッパー付きの透明な袋に入れてもらった。

 

お風呂の時間が来たらお風呂用具、バスタオル、着替え袋を持って

グループ毎に浴場に向かう、という活動であったが

担当スタッフは行く前に子供の持ち物を確認する。

そうでないと一日目の汚れた服が入っている袋を持って行って

汚れた服に平気で着替えてしまうことがあるからだ。

 

汚れを教えるのはむずかし!!!

 

衣服に付着した汗や臭いはわからない。

 

なので、あとはパターンで教えていくだけだった。

一日目に着たものは着替える!

 

定形発達の子ども達であれば、

親が「ばっちぃーよ!」などと言って、

汚いものには触れさせない様に教えていく。

子ども達も汚いものがだんだんわかるようになり、

触らないようになっていく。

 

しかし、自閉症児には何がきたないのかわかりにくい。

 

あるお母さんは、自閉症の息子が、

隙間に入れておいた組み立て式のゴキブリホイホイを広げて

中を触ろうとしていた瞬間を見つけて

絶叫してしまったそうだ。

 

そういえば、虫を極端に怖がる子がいる一方で、

平気で触りむぎゅと掴んでしまう子もいる

 

 

総じて、汚れを嫌う自閉児は書字や色ぬりも丁寧だが

汚れが平気な自閉児は書字や色ぬりも乱雑で

はみ出しても平気という傾向があるようにみえる。

 

 

自閉症の症状の程度は同じぐらいであっても

きれい好き汚れ平気の違いはどこからでてくるのだろう?

持って生まれた性格といえばそれまでだが・・・不思議だ。

 

この感覚的なものを教えていくのは本当にむずかしい。

「これはきたないものだよ。」とパターンで教えるしか今の所思いつかない。

 

一方で

彼らには彼らなりの美意識があるのかな、と思わないでもないが。

 

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コロナ疲れ