自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

ホームレス

波長? 引き寄せ?

 

平成元年にこばとをスタートしたのだが

それは、海岸の埋め立て地の近くにあったぼろい海の家

ルームシェアというか、時間貸しで2,3団体が使っていた。

朽ちた床板に穴が開いて地面が見えたり、ミカン箱の板で応急処置してあった。

良くそんなところにあるこばとに、遠くから子どもが集まったものだ。

今ならありえない。

 

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これよりもぼろかった。

 

子どもが増えたので、シェアではなく貸し切りの教室が必要になった。

一年後に中央総武線の高架下の近く、線路沿いの裏通り。

これまたぼろいビル、ワンフロア10坪程度の3階建の3階に引っ越した。

一車線の道路を隔てた高架下は広い駐輪場になっていた。

 

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がら空きの駐輪場だった。

 

駅は近いが、歩道橋を渡らねばならないので、利用者は少なくがら空きだった。

駐輪場のはずれにはコンクリートを打っていない薄暗い地面に

申し訳のように、薄汚いベンチと遊びにくい汚れたシーソーが設置してあった。

 

こばとはガラ空きの駐輪場を運動場代わりに大いに利用させてもらった。

体育の療育が出来て大変ありがたかった。

自転車、縄跳び、折り畳み式の鉄棒での練習。

ケンケンパーもバトミントンも子供たちにやらせたい運動を

雨を気にせず、思う存分やらせることが出来た。

 

ただ一つ困ったことがあった。

高架下なのでホームレスさんにも雨がしのげて都合が良かったのだ。 

 

こばとが引っ越して数年すると、

1人のホームレスさんが柱とフェンスの間に畳一枚分ほどのハウスを作って、

住みつくようになった。

30代ぐらいに見える男性だった。

 

綺麗好きとみえ、ハウスは小綺麗に作ってあり、持ち物も結構あった。

ハウスだけでなく、いつも毛抜きで顔の髭を抜いていて、むさくるしくなかった。

 

 うわさに聞くところによると、彼は線路沿いにあった行商人向けの旅籠屋で

働いていた。

しかし、時代の流れで旅籠屋がつぶれて、行き場を失ったということらしかった。

元旅籠屋の人が時々、食べ物を差し入れているらしいという話もあった。

表情はおとなしそうで、特に危害をくわえてくることもなかった。

 

子ども達には近づかせないようにさせ、無視していた。

 

 近隣の住民に聞くと、夜は大声を出したり、

ばんばん何かを叩く音がするのでちょっと怖いと言っていた。

彼はどうやら軽度の発達障がいらしかった。

 

 困ったことにその彼に他所にいるホームレスさんが寄ってくることだった。

駐輪場の出入り口で露骨に子ども達を見るホームレスさんもいた。

 

冬時に布団を持ち込んだホームレスさんもいて、先住人と離れたところで

ボヤ騒ぎを起こし、警察を呼んだこともあった。

 

 

其の頃には、こばとも療育に来る子供が増え、スタッフも8名になり、

3階建てのぼろビル全部と隣のビルの1階を借りていた。

 

家賃がすごかった。

 

私もホームレスさんの存在に困り果て、場所を移動してくれるように

強く抗議・交渉した。

 

ホームレスさんは承知してくれたが、かえってまずいことになった。

 

引っ越し先は駐輪場に隣接するあの薄暗い公園の薄汚れたベンチ。

そのベンチの上にハウスを作ったのだ。

 

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もっと薄汚れたベンチだった

 

ベンチは道路を隔てて、こばとのスタッフの出入りする玄関の真正面にあった。

 

結果、ホームレスさんはこばとの玄関を頻繁に眺める格好になった。

(どうしてこばとの周りにいるの!と腹ただしい気持ちではあった。)

 

これには私もほとほと困り、市役所の公園課に電話してベンチの撤去を依頼した。

不審者のたむろする場所になるので役所も撤去を考えていたようで、

要望は聞きいれられた。

 

ホームレスさんに同情的な近隣住民もいた。

近所に住む元市役所勤めをしていた相撲取りのように太っている人

(大学の時は相撲部だったと言っていた。)

が世話役になり、アパートとビルの警備員の仕事を見つけてやった。

 

ホームレスさんは何回かにわけてハウスの荷物をアパートに運んだ。

 

やっとホームレスさんとの長い確執が終わった。

 

それからずいぶんたって、ホームレスさんに道でばったり出会った時、

元気にしているかどうか尋ねた。

大病を患い入院したが治ったと言っていた。

痩せていたが顔は変わらなかった。

相変わらず毛抜きで髭を抜いているようでつるつるだった。

けっこうの年になっていたはずなのに、顔は年を取らないようにみえた。

 

身綺麗な恰好をしていたのできれい好きのままでいるのだろう。

 

それにしても、なんでこばとの近くにハウスをこしらえたのか?

場所を変えるように言ってもまたこばと??

 

こばとが療育する所で、通ってくる子供たちにシンパシーを感じたのかな?

 

体育の療育に使った(当時は使ってもいいと言われていた。)

駐輪場は今は違法駐輪自転車の保管場所になり、ぐるりと高い塀で取り囲み、塀の上に鉄線を張り巡らし、赤外線監視を付け、警備会社が管理する。

駐輪場を増やさず、違法駐輪自転車をどんどん運び込み2000円取って返してやるという仕組み。保育所の送り迎えに使っているだろう自転車でも容赦ない。

時代は変わった。

 

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昔はよかった。