自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

狼に育てられた少女

混迷と教育試行・放棄の時代?

 

狼にそだてられた人間の子供の話としては、

1920年にインドで発見されたアマラとカマラの話は有名だ。

知っている人も多いだろう。

 

美内すずえのマンガ「ガラスの仮面」にも出てきたことがあるし・・・

 

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随分古い本だけど

 

 

信憑性を疑問視する向きもあるようだが、

適切な時期に、適切な教育で人間社会に生きる術を教えないと

結果はどうなるか驚愕のドキュメント、記録だ。

 

もののけ姫でもない限り、

動物に囲まれ、狼に育てられて

人間としての知性を持つのは不可能だ。

 

ましてや、

人間は生理的早産と言われ出生後、1年近くたってやっと歩けるようになる。

他の動物は生まれてすぐに歩ける種もあるのに。

 

 生まれたての時の人間の脳は、人間になるべくプログラミングが未完成のままだ。

そこに人間社会で生きていくための教育の必要性がある。

 

どうしてこんな話を持ち出したかというと、

前記事につながりがあるというわけ。

 

 療育所を開設する前、

2つ目大学、N女子大学に編入学して4年次は東京の目白まで通学した。

教育実習もあったし・・・

教育実習は1年生の双子の息子の小学校の校長先生に

特殊学級(今の支援級)のある小学校の校長先生を紹介してもらって、

障がい児教育を実習した。

 

そして、通学しなければ受けられない授業・単位もあった。

 

そのひとつは児童精神医学。

それを講義する教授は梅ヶ丘病院の院長でもあった。

 

 都立梅ヶ丘病院はかって世田谷区松原にあって、

児童精神科の診療を行う、自閉症の専門病院でもあった。

しかし、2010年の3月に清瀬小児病院、八王子小児病院と統合されて 

東京都立小児総合医療センターとなってしまった。

 

大学通学当時はまだ梅ヶ丘病院だったので

教授は特別だ、と言って

講義の一環として学生を病院内見学に連れて行ってくれた。

 

小児病棟には自閉症という以外、身体的にはどこも悪くはなさそうな子ども達が

入院していた。

どうして入院なのか、疑問でもあった。

 

そう言えばこばとでも梅ヶ丘病院に入院した小学3年の中度の自閉症男子がいた。

 

急に入院と聞いて驚いたが、その時期、男子の家庭には事情があった。

男子の弟が小学校を受験するので、兄がいては勉強の妨げ、集中の妨げになると

両親が判断した結果だろうと推測された。

受験が終わるまで入院。

 

自閉症児のいる家庭では弟妹に難度の高い小学校を受験させることがよくあった。

 

たまたま自閉症で知的障害の子供がいるが、他の子供は知的に優秀、または

遺伝的に知的障害の家系ではないことを証明ためのように。

 

親が自分自身のために、あるいは世間、親族に向けてアピールするためかな。

 

既に定型の兄、姉がいる家では、中学校の時寄宿舎のある学校を受験させて、

自閉症児と兄弟の思春期がぶつかり合わない選択をすることもあるようだった。

 

話は逸れてしまったが

 

子どもの入院病棟を見た後に、教授は学生を成人自閉症の病棟に連れて行った。

 

あっちの方は見せられないが、と言った方向には何棟かの

戸建のような古い建物があったと記憶している。

暗い、閉鎖的な建物という印象が残っている。

 

案内された病棟は広く明るくて開放的な感じだった。

ただホールのようなところには木製の格子がはめられていて、

動物園の檻のような感じがした。

 

その格子の中には成人の男性20人以上いたように思う。

檻の中は混んでいた記憶がある。

ぐるぐるとただ同じ方向に歩き回っていた。

檻の格子から腕を伸ばしてくる男性患者もいた。

言葉はどこからも聞かれなかった。唸り声のようなものは聞こえた。

なかには体を丸めてしゃがみ込んでいる男性も何人かいた。

すると看護婦(当時はそう言った)が檻の中に入って行った。

「立ち上がらせて運動させるんですよ。」と言った。

 

成人、30代から50代のように見えたが正確の所は見た目ではわからかった。

ほぼ、全員自閉症、知的障害と思われた。

女性はそこにはいなかった。

 

私もそうだったが、見学の学生達は言葉を失って、

教授にたいして質問はほとんどとなかった。

小児病棟の子ども達と,檻のような格子の中をただただ無言で

同じ方向にぐるぐる動いている成人自閉症男性達。

同一線上にあるとは思えない。

しかし、終戦前に自閉症を発症していれば、

原因も???治療法???療育教育も???

の扱いを受けた可能性があるだろう。

教育がなされないままに成人になれば、

格子の中を動き回る姿は有り得るしれないと思った。

 

狼に育てられた子どもの話を読んでいたので、脳内で繋がってしまった。

 

昭和初期教育界では自閉症はあまり知られていなく、

精神薄弱(知的障害)が障がい児教育のメインだったように思う。

 

精神薄弱児向けには、身辺自立、生活単元等などの障がい児教育があったが

自閉症に対しては病名も二転三転、その原因も二転三転、療育も教育も混迷していた。

大学のテキストには小児分裂病という記述さえあった。

 

病気の原因については脳科学が発達して、急速に脳の発達障がいというところに収斂。

 

しかし、療育、治療法に関してはこれが正解!はない。

脳の機能障害とわかっても外科治療のようにはいかないのだ。

手術や特効薬はない!

 

梅ヶ丘病院を見学して思ったことは、

人間は人間になるように育てなければならない、

教育こそがその土台をつくるのだ、と。

 

こばとの療育を始めた時、

人間として普通の生活がおくれるように教育しよう。

だから自転車にも乗せたし、公共の乗り物も利用した。

夏合宿は子どもの年齢ごとに分けて100回はやったろう。

 

 

療育中も時々梅ヶ丘病院の見学光景が脳裏をよぎった。

 

時代の流れは自閉症にとって良い方向に変わって来ている。

自閉症を世間から見えないようにするのではなく、その能力を生かす方向に!

平成元年の頃とは雲泥の差だ。喜ばしい。

 

 

 

 

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冬眠中