自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

視線

目は心の窓

目は口ほどにものを言う

 

自閉症の判断の目安とされるものの一つに

目が合わない

という症状が上げられることが多い。

 

確かに幼児期は目が合わない自閉症児が多い。

 

しかし、長いこと療育してきたが、

私は目が合わないのではなく、目を合わせたくないのだ、というのが

自閉症児達の本心ではないかと、感じている。

 

親に対する愛着も人間に対する安心・信頼も育っていない、

脳内がカオス状態の自閉症児達にとって

外界(人も物も)は自分を脅かす存在と感じているように思う。

 

自閉症児達は

近づいて来て予測がつかない行動をする大人は怖い。

顔を覗き込む、または、自分に覆いかぶさるような大人は怖い。

何をされるか分からない、安心できる対象と認識できない大人は怖い。

怖いものは見たくない、目を合わせたくない。

目を合わせないだけでなく、逃走しようと必死になることだろう。

 

 

自然界の生物だって自分より強い者とは目を合わせず逃げるではないか。

 

 

 自閉症でなくとも視線恐怖症という厄介な心の病もあるなぁ。

 

 

 

目が合わないのではなく、目を合わせたくないのだと思った訳は

自閉症児の前に姿を出さず、ドアの隙間からそっと覗いてみると

振り返った子どもの目とドアの隙間越しに、

しっかり目が合うことがしばしばあったから。

 

 

自閉症児の幼児期の療育現場では

挨拶する時や話している人に対して、

「ちゃんとお目め見て!!」などと療育者や親から声をかけられる。

 

実に真剣な顔で指示される。

大人の自分を見つめる必死のまなざし、

強い目力は自閉症児にとっては怖い、と感じられるかも・・・。

大人だってそんなふうに言われたらちょっとなぁ~

 

しかし、

そんなに、「見て!見て!」と力を込めて言わなくとも、

手でメガネ作って、両目に当てると子どもは視線を向けてくる。

 

 つまり、視線を合わせることを強調しなくとも

両手の指を筒にして目に当てて子どもを見たり、

トイレットペーパーの芯を両目に当てて子どもを見たりすると、

子どもはしっかり筒にした指の奥にある目、

トイレットペーパーの芯の奥にある大人の目と合うのだ。

 

何だろう?という好奇心が勝るのか

奥にある目と合っても目を逸らさないで覗き込む。

奥にある目は単なる物体であって、

視線は感じられない、

見られているという感覚には繋がらないためかもしれない。

 

 

自閉症児がテレビやタブレットスマホに執着するのは

画面の素早い動きに対する興味の他に

視線は感じない、

生身の人間に見られている、という感じがないためかもしれない。

 

自分が一方的にに見ているだけなので

不安や恐れを感じることがないからだろうと思う。

 

昔、療育に通っていた自閉症児のお母さんが 

自分がテレビの中に入って、

自閉症の我が子に話しかけたいと話していたくらいだ。

 

 

 

そう言えば、小学校の言葉の教室に勤めていた時、

通って来ていた場面緘黙の男子の家に、何かの用事で電話をかけたことがあった。

男子が出た。

電話だと別人のようにすらすら喋っていて、驚いた。

対面しない、視線を浴びない事が

不安を減じ、雄弁にさせるのだろう。

 

口ほどにものを言う視線というものにはやはり、

怖いものがあるんだろうなぁ。

 

 

さて、

目が合いにくい自閉症児も

親や、療育者の愛情・根気・忍耐の子育てのお蔭で

親に愛着と信頼関係が生まれ

大人は恐れるべき存在ではなくなり、

自分にメリットのある存在として認識するようになって

目も合うようになってくる。

 

 

特に自分の要求、メリットのある時、場面では目もばっちりあう。

しかし、本質が自己中心なので自分のやりたくないこと、

不都合な時は意識飛ばしをして、

目を合せないどころか、

聞こえていないかのような振りさえ見せるのが自閉症児だ。

 

それでもよく丁寧に療育され、支援高校を卒業する頃には

社会性も身に着け、周りに合わせた行動がとれるようになり

限られた範囲の中では1人歩きの行動も出来るようになる。

 

こばとには幼児期から中・高生になるまで長期間通って来た子も多くいたので、

一人歩き、乗り物・社会施設の自力で利用ができるようトレーニングしてきた。

 

 

年頃の自閉男子、女子にいつも言って聞かせていたことは、

人との距離!恋人接近しないこと。

 混んでもいない乗り物で、不自然に人の傍に立ったりしないで

人と距離を取ること。

 

そして、

電車の中で、誰か気になる人がいても、

じーっと見つめ続けてはいけない!!。

チラッっと見る分には周りの人に変に思われないが

ジロジロ、ジーッと長く見つめていることはNG!

 

あんなに、目を合わせなさい!

目を見て話しなさい!と教え込んで来たのに

年齢が高くなると、その逆を教えなければならない・・・

  

これが守れないと、あらぬ嫌疑、不審者扱いされかねない。 

 

 

 自閉症児はほどほどを教えるのが本当に難しい!!!

 

 

自閉症療育は年齢と共にそれまで教えていたこととは

真逆の事を 教えなければならないジレンマが多い。

 

 

 

 

目を合わせる!以外にも過去記事に書いたっけ。

 

パターンで教える→パターンに拘る→パターン壊し 

指示を聞く→指示待ちになる→自分で判断!

模倣する→人真似ばかりする→自主的に!

 

ことほど左様に、自閉症育ては迷うことの連続だ。

 

kobatokoba-kosodate.hatenablog.com

 

GO TOトラベル 中 に

見つめすぎる、ジロジロ見すぎることで

トラブルになってしまった重度自閉症社会人青年がいる。

 

長くなったので、トラブルの仔細は近日中に続き記事に・・・

 

 

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今年も咲きました。皇帝ダリア