視線の力
幼児期からこばとに通い
両親の愛情、親族の理解に恵まれて成長した
重度自閉症男子は
よくぞここまで育った、育てたと言いうお手本のような青年になった。
水泳、空手、マラソン、マウンテンバイクをこなし
言葉のなかった幼児期が想像できないほど、
(オウム返し・独り言が時々出るものの)はきはき喋る。
頑張り屋、作業は丁寧ではやい。
どうすれ息子君のように育つのか?と後輩ママたちに聞かれるそうだ。
お母さんは自閉症育ての相談にのっている。
彼は今年、3月高等支援学校を卒業し、
本人の第一希望の事業所に就労も決まっていた。
農業関係であるが、在学中の実習でも好評価をもらい
是非!と望まれていたようだ。
ところがコロナ禍で自粛。
kobatokoba-kosodate.hatenablog.com
kobatokoba-kosodate.hatenablog.com
自閉症は先の見通しがつかない事が何より不安。
ルーティンがイレギュラーになることが何より不安。
お母さんもそれを一番心配し、
息子が不安定にならず、自粛期間を乗り切らせるために
計画・対策を立てたそうだ。
電車大好きの息子、電車に乗れればご機嫌の息子。
なので、息子に付き合って、感染防止をしながら
毎日すいてる電車を探して乗ったそうだ。
息子も乗りたい電車や時間を検索し、
自分で計画し、希望を言ってくるまでになったとか。
5月、やっとコロナ自粛が開け、
事業所から出勤許可がでた。
就労開始は順調で、息子も張り切って休まず出勤した。
気持ちの良い挨拶をするので、職場の雰囲気を明るくし、
力仕事も厭わず、よく働くので重宝されている、と
お母さんの嬉しそうな声が聞えてそうな報告が
いつもパソコン教室の連絡帳に書いてあった。
ところがGO TOトラベル 解禁の最中、
お母さんの気持ちがドーンと落ち込むようなトラブルが起きた。
お母さんは皆勤のご褒美をかねて息子を旅行に誘い、
なじみの旅館に宿泊した。
いつもは父親や弟、姉も一緒の事が多いのだが
今回は皆の都合が合わず、息子と母2人だけで出かけたそうだ。
彼は旅行が大好きで慣れており、何の心配もなくなっていたし。
何回か行ったことのあるなじみの旅館。
お風呂の時間になり、
いつもは父親や弟と一緒なのだが
今回は慣れているはずなので、自閉症息子を一人で男湯に行かせた。
お母さんは先に女湯を出て、休憩室で寛いでいた。
何やら男湯の方から声がしたが、心配せず待っていた。
そのうち、息子も出てきてお母さんの横に座って寛いだ。
その後、男の幼児とその父親、祖父らしい家族が男湯から出てきた。
出てくるとすぐ、
祖父らしい男性がものすごい剣幕でお母さんに向かって来た。
「あんたはこいつの知り合いか!!!」と怒鳴った。
お母さんはびっくりし、息子の母親であることを告げ
怒っている理由をたずねた。
するとその祖父と思しき老人は怒りを沸騰させたまま、
「そいつ(自閉症息子)が洗い場に座ってる時
孫をじろじろ見るもんだから、孫が怖がって泣きだしちゃったんだよっ!!!」
怒りはなかなか収まらなかった。
お母さんはひたすら謝罪し、息子が自閉症であることを話した。
男児家族の怒りは次第におさまり、祖父も最後は理解を示してくれた。
父親は祖父と子どもを部屋に帰した後も
休憩室に残ってお母さんの話を聞いてくれた。
楽しいはずの旅行だったが、
母親はすっかり落ち込み、部屋に戻って息子に説教しないではいられなかった。
息子が不審者に見られたことがショックだった。
母の説教に自閉症息子は泣いて涙を流したそうだ。
お母さんはパソコン教室の連絡帳に数ページにわたって
その時の様子をこと細かに描写し
最後は嘆きの言葉が書き連ねてあった。
自立の練習をしてきたのに・・
息子が一人で行動すると、
不審者に見られてしまうのでしょうか・・・
不審者
ん~ん・・・・
確かに息子君は男子にしては目がパッチリと大きく
中東系の男性のように目力があるし
ジ~っと見つめるのはまずいかもしれない・・・・。
目が笑っていなければ、ガンを飛ばしたと見られかねない。
特に女性を見つめ続けたら誤解されてしまうことは確かだ。
自閉症児達にはちゃんと相手の顔を見なさいとか、
目を見て話しなさい、とか口が酸っぱくなるほど教えたあげく
年齢があがってくると、
じろじろ見てはいけません、じーっと見てはいけません。
しかし、さりげなく、何気なく見る、を教えるのは難しい。
あいまい、だいたい、ほどほど、てきとう
を教えるのは難しいなぁ~。
自閉症児達には分かりやすいよう
白か黒、〇か×、ONかOFF、YESかNO
で教えてしまいがちだ。
しかし、しかし・・
せっかく自立心を育てたのであれば、1人行動はしてもらいたい。
通い慣れた、歩き慣れた場所、地域では自立的に生活してもらいたい。
が、慣れない所、新しい場所はやはり心配だ。
何かトラブルに巻き込まれた時、言語表現の十分でない彼らは
誤解されたり、不利益を受けたりしかねない。
込み合っている電車に乗った時は、吊革につかまったり、
ドア近くで手すりにつかまって、
手を下に下げないようにと教えていると言った、お母さんもいた。
痴漢と間違われないように。
心配がないわけではない。
誤解、差別がないわけではない。
それでも前に進んでもらいたい。
世の中は変化、進歩して来ている。
自閉症であっても一般社会で能力を生かせて来ているし
タックスペイヤーも増えてきている。
あとは幼児期からの療育を頑張らねば・・・・・・