自閉症の世界

~自閉症の世界を知って、障がい児の子育てに役立てよう~

自閉症の世界

ないものねだり

前記事の支援高等学園の高校生は3人兄弟。 次男は健常児だが、 末っ子はADHDの症状にあてはまるタイプ。 長男の報告にご両親が同行したのは末っ子の相談もしたかったようだ。 末っ子にとってもこばとはなじみのなつかしい場所。 彼は保育園の年少児の時…

アイデンティティの葛藤

今年、特別支援学校高等学園に入学した男子から, こばとに顔を出したいと2度も電話を貰っていた。 だけどいつもその日突然行きたい、という急な連絡。 会いたくとも、用事や都合で会えずにいた。 その日の電話も突然の訪問希望だった。 応対に出た相棒のス…

100記事目 その2

救助を待っている時間は長かった。 山の中腹、しかも斜面の細い登り道。 目も開けず震えも止まらない彼に、 私も震えながら「大丈夫!大丈夫!もう治ってる!」と言い続けた。 やっと救急隊員が来て、彼を担架に乗せて細い山道を登り始めた。 私は担架の横を…

100記事目 その1

100記事目になった。 大学の障がい児教育の教科書には載っていないような、自閉症の世界を知ってもらいたいな、と1月12日めからからブログを書き始め100記事目なった。 ブログは平成元年に始めたこばとの日々を思い出し、書き連ねてきたのだが、 記…

母は弱し

幼児期の自閉症児の療育では 確固たる態度、揺るがぬ信念, 即断、即決、スピード判断、 不安、迷い、動揺を顔に出さない演技も必要だ。 家庭でも家族が共通理解をして、自閉症児に対しては一貫した態度で養育を しなければ、自閉症児は自分の都合のいい方を…

たんぽぽ

夏休みも終わり直前の金曜日、 真っ黒に日焼けし筋骨たくましい、ガテン系でなおかつ美形の 洗濯奉行が1か月ぶりにパソコン教室に顔をだした。 kobatokoba-kosodate.hatenablog.com お母さんの連絡帳には、夏休み中に出かけた先や、やった事がいろいろ書い…

しぶとく出さない!

自閉症の幼児期療育において、最大の難関は排泄の習慣。 文化的生活に不可欠なトイレ。 今の世界に生きるためにトイレ慣れは一番目にクリアさせたい目標だ。 kobatokoba-kosodate.hatenablog.com トイレの便器の中に排泄するという行為を自閉症児に定着させ…

こんな日が来るなんて

「あきらめない心」で紹介した、 <幼児教室・泣きの西の横綱>の彼からラインがきた。 彼がラインをしているのはこばとだけ。 kobatokoba-kosodate.hatenablog.com ラインには「 高知に行ったので、お土産を持って行きます。」とあった。 私もすぐに「楽し…

天真爛漫

前回書こうと思っていた、とびっきり明るいお母さんの話。 ちょっとその前にこばとの生い立ちを・・・ 平成元年、こばとの一年目、 海岸の埋め立て地に取り残されていた、ぼろい海の家を時間借りしてスタートした。 その海の家はいくつかの団体が曜日、時間…

遺伝? エピジェネティクス?

前回は双子の男児が2人とも発達障がいを持っていた話を書いた。 こばとの長い療育期間中、双子とのかかわりは十指に余るほどだった。 一卵性の男児・男児、二卵性の男児・男児、 二卵性の女児・女児、二卵性の男児・女児、 と組み合わせは様々だったが、一卵…

長い道のり

なんか育て辛い、 抱っこしても体が反り返り,しっくり抱っこできない。 睡眠と覚醒のリズムがなかなか整わない。 1歳の誕生日を迎える前までに、 普通と違うんじゃないか、 と疑惑を抱かせる子どももいる。 しかし大半、はっきりと不安になるのは2歳過ぎ。…

目指せ!サイクリング

前回記事にした幼児教室もそうだが、 こばとの療育は市や行政と一切関係を持たず、 誰にも相談せず(反対されないように)、私個人で立ち上げた療育機関なので、 アイデアが浮かぶとすぐに実行に移すことが出来るというメリットがあった。 公的な機関と絡んで…

幼児教室

昔、と言っても平成が始まったばかりの頃 <自閉症スペクトラム>とか<発達障がい>とかのネーミングもなく, 自閉症という言葉さえ一般的に正しく理解されていたとは言い難かった。 ある大手の新聞が、大人になってから人と関わらなくなって、家に閉じこも…

恋心

自閉症に対する一般的なイメージは大方 目を合わせない、 人を避けたがる、 人と関わらない。 人に興味をもたない、 集団の中にいられない、 孤立を好む、 のように、作り上げられているのではないかな。 しかし、皆が皆そうではない。 中には人が好きで、関…

自分を知っている。

自閉症の子供たちの行動を、 自閉症というバイアスのかかった眼で見てしまうと 彼らは自分のことは何にも分かっていないんじゃないか、 という先入観を持ってしまいがちだ。 しかし、自閉症の子ども達と長い間付き合うと、彼らには自閉症という<表>と 普通…

マンホール

自閉症児は健常児と同様に正常のスピードで体は成長していく。 偏食という割にはがりがりに痩せているわけではなく、 むしろ体格が良かったり、肥満だったりもする。 周囲を気にしないマイペースなので、社会的抑圧が少ないためかもしれない。 偏食も改善さ…

洗濯奉行

自閉症の子どもを持つ親御さんは 子どものために出来るだけのことをしてやりたい! 切にそう思って努力されている。 言語療法を受けさせたい! 行動療法をうけさせたい! 感覚統合訓練を受けさせたい! ABA(応用行動分析)を受けさせたい!・・・etc. …

腫れ物に触るように、

自閉症の症状でよく言われることですが、 何事も自分ペース、自己中心。 自分の気持ちには人一倍敏感で激しく主張。 一方、相手の気持ちは読まない。 「心の理論」が欠如しているのが自閉症だ。 家族は、幼児期の自閉症の泣き喚き、大声だしには悩まされる。…

記憶の塩漬け

先日、近くまで来たからと、 ひょっこりこばとの事務室に顔を出した親子がいた。 5年ぶり。うれしいサプライズ。 「わぁ~大きくなったねェ~。でも雰囲気変わってないね。 あの頃をそのまま大きくした感じだねぇ。 お母さんも全然変わってないじゃないです…

きっと見つかる。

先日、一駅先の千葉駅近くの病院に朝いちでいつもの薬を貰いに行った。 駅に戻って改札へ向かう途中、細身の青年とすれ違った。 1,2m離れた後に私は振り返って 「あれっ、U君じゃない!!!」 細身の青年はさっと振り返り、 「あっ、先生!お久しぶりで…

アンバランス?それ違います。

K君は支援学校高等部の一年生。 幼児期からこばとの療育に通い、今はこばとのパソコン教室に通っている。 彼は双子、姉弟の弟で重度の自閉症。 姉は優秀でアニメの絵も抜群にうまい。 彼のお母さんがパソコン教室の連絡帳に担任と個人面談をした話を書いて…

あきらめない心

平成元年から個人経営で療育を やって来た。 肩書もなく、有名所でもなく、行政とも関係を持たなかった。 ただ、自閉症に対する関心・好奇心だけ。 自閉症は人間の原点のように思えるという動機にすぎない。 そんな私が26年間も続けてこれたのは 、お母さ…

プライドが高すぎて

自閉症のお母さん方の中には、 我が家の自閉症児はプライドが高くて・・・とか言う人もいます。 自閉症を良く知らない人は、えッ、プライドが高いって? 自閉症児にもプライドがあるの?なんて失礼な声が聞こえそう。 自閉症も本来持ってまれた性格があるの…

優越感を感じたい。

彼女は二卵性双子の妹として生まれた。 2人の顔は全く似ていない。姉は定形発達、しかも優秀。美形。 妹、つまり彼女は言葉のない重度自閉症、どちらかといえば男顔。 両親は二人を平等に扱い、同じ環境で育てることを望んでいた。 お父さんは海外出張も多…

知ることはつながること。

自閉症の行動や仕草を見て、自閉症を知らない人は あれ、何やってんの?・・・訳わかんない!・・・気味悪い。 口にださないまでも、怪訝な目で見たり、遠巻きに見たり、はては宇宙人扱い。 でも、自閉症を知っている人が見たら、 それらの行動の意味や、彼…

昔と今の子育て事情

昔、と言っても昭和の半ば頃までは、 男の子は女の子より言葉が出るの遅いから心配いらない。 腕白・元気に走り回るのは子供らしい。(多動などとは言いませんでした。) 遊ぶと言ったら、外。テレビなどなかった。 おもちゃやおやつなどは手作り、かつシン…

蛹から羽化

お父さんと療育相談に来た幼稚園年長になったばかりの彼は、 診断がつけにくいグレーソーンのタイプだった。 言葉は出ていたし、自閉症状も目立ってあるというわけでもなかった。 細目で目をそらしがちではあったが、アイコンタクトも取れている。 体をもぞ…

変身願望

五体満足なのに、一歳前からなんか育てずらい、 しっくりこないという子がいる一方、 一歳ぐらいまで特に他の乳児と違うとは思わなかった。 笑み返しもあったし、アイコンタクトだって普通だった。 一言、二言の言葉もあったし、指差しもした。 しかし、折れ…

彼我の違い

療育中、アメリカから一通のメールが届いて驚いた。 もうすぐ2歳になる息子が<autism>と診断された。 2歳になった時、日本に帰るのでこばとに通って療育を受けたいという内容だった。 父親の仕事の都合でアメリカに滞在していて、どうして<こばと>の存…

今の世界に生きるためには

自閉症児を産み育てたお母さんの中からこんな言葉を聞いた。 望んで授かった子供なのに、出産が始まる前、と何故かとても悲しくて、涙が止まらなくなり、苦労する予感に襲われた。 ドイツで2人目を正常に出産したのだが、長男の時となんか違う感じがした。…